アルゼンチン・ショック
チャオ! グラーシアス、ベサメ・ムーチョ、アディオース! 今回はアルゼンチンクルーとの出会いをお伝えしましょう。
写真はアルゼンチンチームのチームマネージャーの フェデリコさん。ポーランド・ナイトでお祭り騒ぎのこの日、ビール片手に我らが日本チームのテーブルに押しかけてきた彼に、まるは色んな質問をぶつけました。“飲み”という名のインタビューです。
驚かされたのは彼らの待遇。世界選手権はもちろん欧州選手権クラスになるとオリンピック参加と同じ扱いになるそうです。大会参加のための休みは公休扱い、開催地への往復航空運賃は協会から支援がでるとのこと。来年の世界選手権にも各クラス2名の派遣が決定しているのです。まるは文字通り目をまるくしていました。
日本ではクルーはおろかパイロットですら自分の有給を使い、費用も自腹です。今、丸山家では赤石の協力のもと「3年計画」を実行中。もう道半ばまで来ていますが、来年の世界選手権までにかかる費用はかなりのもの。特にクルーを含む選手の渡航費用とグライダーのレンタル費が高額で、通常一般家庭で家族の理解を得られる額ではありません。
近年、南米アルゼンチンやチリがグライダー競技の誘致に精力的なのはまるに聞いていました。実際にセイルプレーングランプリを含むワールドの大会が開かれ始めています。でも、このように個人が世界に打って出る活動にまで手厚いバックアップ体制があるとは…。彼らのスカイスポーツに対する本気度が伝わってきました。
モータースポーツと比べてみて
日本はグライダーよりずっとメジャーなモータースポーツですら、ドライバーが交換タイヤの費用捻出にヒーヒー言っている状況です。スカイスポーツはさらに厳しい状況といわざるを得ません。これを変えていくにはスカイスポーツをもっと身近で露出度の高いものにしていく必要があります。
ちなみに、モータースポーツの世界はバブル期にF1だなんだと持てはやされましたが、バブルが崩壊すると多くの企業は見向きもしなくなりました。それを攻めるつもりはありませんが、理由はよく分かります。
それは、モータースポーツが「文化」として根付いていなかったから。クルマ、自転車、船、飛行機あど、工業製品を媒介にするスポーツは、それが人々の意識や生活とどう結びついているか、が大切なキーワードだと思います。
馬車のレースがあった国にはスピード競技が、アウトバックの国にはオフロードレースが、ガソリンを湯水のように使える国には大排気量車のレースが根付くように、競技にはその国の文化的背景から来る必然がある程度必要だと思うのです。
では日本でお茶の間に浸透したスピード競技って何でしょう? 在りし時のF1? 考えてみてもそんなにスラスラ出てこないですよね。クルマにこだわらなければ「駅伝」というキーワードも浮かんで来ますが…。でもなぜ駅伝がお茶の間に届いたか、その理由は理解しておく必要があると思います。
ニッポンに根付くスポーツは?
じゃあ日本のお茶の間に根付くモータースポーツはないのか? あるじゃないですか。誰もが感心を持つ世界トップの技術が。日本は今省エネの文化を世界に先駆けてクリエイトしています。これをお爺ちゃん婆ちゃんから主婦、草食系男子の心にまで響くような競技にクリエイトできたら! 新車の販売台数をも大きく左右するような人気スポーツになるかも知れません。 今はパワフルだからカッコイイんじゃないんです。速いだけでリスペクトされるワケでもないんです。いかにエネルギーを無駄に使わず速く効率的に走れるか、いかに環境に優しいか、のほうが感心を集めているのです。
その意味で、グライダーも現代にマッチしていると思います。風を操り、上昇気流を糧にしながら音もなく静かに空を滑るグライダーは、現代的、社会的教官を得られる素地は十分に備えています。
その意味で、グライダーも現代にマッチしていると思います。風を操り、上昇気流を糧にしながら音もなく静かに空を滑るグライダーは、現代的、社会的教官を得られる素地は十分に備えています。
でも、いまひとつ楽しさを伝えられない。離発着のルーチンワークを覚えたその先を魅力的に見せられない。そして日本ならではの飛び方や日本ならではの楽しみ方を発信できていない…。
だからこそ世界の最先端の飛び方を、日本に取り入れられる可能性を、そして応用できる可能性を、肌で感じながら培っていく必要があるはずです。
だからこそ世界の最先端の飛び方を、日本に取り入れられる可能性を、そして応用できる可能性を、肌で感じながら培っていく必要があるはずです。
世界で活躍する選手が生まれれば注目を浴びます。日本に興味を持ってもらうこともできます。考えて見てください。「日本の空が面白い!」と世界のグライダーパイロットが意識し始めたとしたら。
アジア選手権が開かれ、世界選手権が開かれたとしたら。夢物語のようですが、世界と情報交換はリアルタイムで行われ続けてこそ意味があると思います。
アジア選手権が開かれ、世界選手権が開かれたとしたら。夢物語のようですが、世界と情報交換はリアルタイムで行われ続けてこそ意味があると思います。
実際にまるは今回多く、の選手から質問を受けています。「オンラインコンテスト(スカイスポーツのGPSログを公開するサイト)に最近日本の情報が出始めているけど、日本のソアリングはどうなんだ?」と。
さあ、あなたなら各国のトップランカーにどう答えますか? いつまでも判を押したように「日本のソアリングはローカルに限定され、クロスカントリーは難しい」と言い続けますか?
さあ、あなたなら各国のトップランカーにどう答えますか? いつまでも判を押したように「日本のソアリングはローカルに限定され、クロスカントリーは難しい」と言い続けますか?
まるがやっていることは小さなことかも知れません。でも選手権に選手がいるのといないのとでは与える印象は全く違います。そして得られる情報量も全く違います。今回始めて参加して私はそれを実感しました。
ヨーロッパでは、どんどん若手の世代交代が進んでいます。今回のヨーロッパ選手権ではスタンダードクラスで20代が24%にもなっていました。ニッポンはただでさえガラパゴスなのに、世界への扉をこちらから閉じてはいけません。
まずはできることから、です(河村)
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