23か国90機113名の大所帯
ドイツチームのテント村 |
①アルゼンチン………クラブクラス1機
②オーストラリア……………………………スタンダードクラス1機
③オーストリア………クラブクラス1機、スタンダードクラス2機、20mクラス1機
④ベルギー……………クラブクラス1機、スタンダードクラス2機、20mクラス2機
⑤チェコ共和国………クラブクラス3機、スタンダードクラス2機、20mクラス2機
⑥デンマーク…………クラブクラス2機、スタンダードクラス2機、20mクラス1機
⑦フィンランド………クラブクラス2機、スタンダードクラス2機、20mクラス3機
⑧フランス……………クラブクラス2機、スタンダードクラス2機、20mクラス1機
⑨イギリス……………クラブクラス2機、スタンダードクラス2機
⑩ドイツ………………クラブクラス2機、スタンダードクラス2機、20mクラス2機
⑪ハンガリー…………クラブクラス2機、スタンダードクラス1機
⑫イタリア……………………………………スタンダードクラス2機、20mクラス1機
⑬日本…………………………………………スタンダードクラス1機
⑭リトアニア…………クラブクラス2機、スタンダードクラス1機、20mクラス1機
⑮オランダ……………クラブクラス2機、スタンダードクラス2機、20mクラス2機
⑯ポーランド…………クラブクラス2機、スタンダードクラス3機、20mクラス2機
⑰ルーマニア…………クラブクラス2機、スタンダードクラス2機
⑱ロシア………………クラブクラス2機、スタンダードクラス1機、20mクラス2機
⑲スロベニア…………クラブクラス1機
⑳スイス………………………………………スタンダードクラス1機、20mクラス1機
㉑スロバキア…………クラブクラス2機、スタンダードクラス2機、20mクラス2機
㉒スゥエーデン………クラブクラス2機
㉓USA………………クラブクラス1機
合計90機…………………………34機………………………33機……………23機
このうちアルゼンチンとオーストラリア、日本、アメリカの4か国は地域外にて表彰対象外。“ヨーロッパ” としては19か国のチームが参加していました。そして彼ら欧州チームの何割かは宿泊手段としてキャンプを選んでいたようで、オストロウの滑空場には「テント村」とでも呼ぶべき賑やかな景観ができあがっていました。その様子をちょっとだけご紹介しましょう。
上の写真はドイツチーム。宿泊のためのテントの真ん中に、大会中の作戦司令室となるメインの運動会テントが張られています。中には滑空場周辺の地図が張り出され、選手の航空無線を傍受するための巨大なアンテナなども用意されます。降雨時のために、水の流れを誘導する水路が掘られているのは、何ともドイツ人らしい几帳面さですね。
まるによれば、リアルタイムの位置情報送信、つまり「あそこのほうが条件がいいからそっちへ向かえ!」等のデータ通信は一応禁止されているものの、地上からの気象条件についてのでアドバイスや、アウトランディング(場外着陸)の際に正確な位置情報を伝えて迅速に救出するために、本来であればこういった設備が地上バックアップ班に必要なのだそうです。
実際のところ、今回の日本チームにはハンディタイプの無線が1台あるだけで数キロ以上離れると通信不可。まるがファイナルグライドしながらゴール手前10kmに達すると「エコー・チャーリー・チャーリー・テンケー!(ECC機 ゴール10Km手前!)」と本部に通信するのですが、それすらもほとんど受信することができませんでした。
じゃあ、どうやって地上クルーは着陸するまるを待ち受けたのか、と申しますと、スタンダードクラスが帰りはじめた直後からひたすら滑走路のゴール方向を目視し続けていたのです。それ自体は別に難しいことではないのですが、万一まるがアウトランディングしてしまい、なおかつそれが携帯の通事ないところであったら救出に時間がかかっていたであろうことは否めません。
ですから来年の世界選手権、つまり本気モード大会では、これらのチーム体勢を揃える必要があるのです。それには、本拠地になる地上クルー用の常設テントがひと張りあってもいいのかも知れません。
こちらはイギリスチーム。ドイツ チームほどの希望ではありませんが、やはり宿泊テントの中心に、基地となるテントを備えています。
そしてこちらはハンガリーのテント。宿泊所となるキャンピングカーに、前室となるテントを併設したような構造で、より快適な空間をつくっていますね。アンテナも大きいです。国は違えど同じ大陸内をクルマで移動すればいい国々は、こういったキャンピングカーの利用も多く見られます。
なお、ポーランドやドイツクラスの強豪チームは大会事務局がブリーフィングで発表する天気情報以外にリアルタイムの衛星写真などを入手。これらの最新情報を駆使しながら、発航直前まで天気概況を分析してパイロットに伝えているといいます。具体的には「天気の悪化は予想より遅れているので、今日は上昇気流(サーマル)のピークが○時頃に予想される。なのでスタートは遅めにして条件がいい時に一気に周回してこよう」といった類いの指示です。
実際に大会期間中、ポーランドは他チームより遅く出発して速くタスククリアしたり、我々が全く予想できなかった日にサーマルウェーブを利用して他チームより数百メートル高く上昇したり、とかなりテクニカルな飛び方をしています。
地元チームゆえに地の利は十分にあるはずですが、これに地上班の抜け目ない観測態勢が加われば、かなり正確な予測に基づいた勝負ができるのではないでしょうか。実はこの点もニッポンチームのウイークポイントであり、課題でもあります。
ちなみに単身で飛ぶまると、上空で複数機でチームが組める国とではサーマルの見つけ方に差があります。まるが飛行中に感じられるサーマルはある意味15mの翼幅に限られます。簡単に言えば、右翼が持ち上げられれば右に、左翼が持ち上げられれば左に上昇気流がある、と考えればいいのです。
これが、複数機で横に広がり、ローラー作戦でサーマルを探したらどうでしょう? 最も強いサーマルにヒットした機体の下に皆が入れば皆ハッピー。そう。サーマルを発見する確率が機体の数だけ倍加されるのです。
またチームで横に広がらず、縦列に飛ぶ場合もあるそうです。この場合は先行機がサーマル発見に全力を尽くし、後続機はその先を見越した全体の作戦に気を配ります。櫻井さんのインタビューで言うところの「俯瞰」しながら飛ぶことができるようになります。単座機同士であっても複座機のように頭脳を使えるのです。
一見、消極的な作戦に見えますが、まるが常々口にする言葉に「上空は3割あたま」というものがあります。パイロットが上空で操縦しながら使える頭脳や判断力は地上の3割しかない、という意味です。
「だからこそルーチンワークや非常時の操作の習熟が大切、体で覚えるんだよ」という意味で使われることが多い言葉ですが、競技フライトの状況判断でも頭は3割しか使えない、と暗に示した言葉とも言えます。複座機や単座機による縦列フライトは、これらパイロットが陥りがちな思考力不足を補うことができるのです。
さて、話が相当脱線しましたね。このあたりで宿泊施設の話に戻ります(笑)。最後は我らが日本チームの秘密基地のご紹介です。
これは、チームまるが2週間借りた借家です。家を借りることで「シャワーに入り、静かな空間でリラックスしながらフライトの反省をし、ゆったりベッドに寝られる」という肉体的にも精神的にも充足度の高い効果が得られます。それだけではありません。ホテルでは自ずと限界がある炊事洗濯が可能になり、予算の助けになるだけでなく、栄養のある食事を用意できるので健康管理にも役立ちます。
ちなみに私はポーランドへ来る10日前、オーストラリアで14日間キャンプしながら仕事をしました。夜空と友達になれる清々しさがある半面、シャワーにありつけない日も多く、地面に寝続けることで疲れが溜まることもありました。日が落ちてからの時間もあまり有効に使えません。
でも、グライダーで4時間、5時間と勝負をかけながら飛ぶパイロットは精神的にも肉体的にも疲れていてはいけないのです。ヨーロッパの選手がテント生活でどうやって疲れないようにしているのか、まだまだわからないことが多いのですが、もしかしたらキャンプしているのは地上クルーだけで選手はホテルで寝ている国もあるのかも知れませんね。
その点日本チームは地上クルーが少ない半面、共同生活で団結を図っている、ともいえるでしょう。実際、秘密基地はとっても楽しい空間でした。
以上、テント村の話でした。いろいろ脱線しましたがこの後も当ブログでは、リアルタイム通信で威力を発揮した「Facebook」では語れなかったことをお伝えしていこうと思います。よろしくお願い申し上げます。(河村)
まるによれば、リアルタイムの位置情報送信、つまり「あそこのほうが条件がいいからそっちへ向かえ!」等のデータ通信は一応禁止されているものの、地上からの気象条件についてのでアドバイスや、アウトランディング(場外着陸)の際に正確な位置情報を伝えて迅速に救出するために、本来であればこういった設備が地上バックアップ班に必要なのだそうです。
実際のところ、今回の日本チームにはハンディタイプの無線が1台あるだけで数キロ以上離れると通信不可。まるがファイナルグライドしながらゴール手前10kmに達すると「エコー・チャーリー・チャーリー・テンケー!(ECC機 ゴール10Km手前!)」と本部に通信するのですが、それすらもほとんど受信することができませんでした。
じゃあ、どうやって地上クルーは着陸するまるを待ち受けたのか、と申しますと、スタンダードクラスが帰りはじめた直後からひたすら滑走路のゴール方向を目視し続けていたのです。それ自体は別に難しいことではないのですが、万一まるがアウトランディングしてしまい、なおかつそれが携帯の通事ないところであったら救出に時間がかかっていたであろうことは否めません。
ですから来年の世界選手権、つまり本気モード大会では、これらのチーム体勢を揃える必要があるのです。それには、本拠地になる地上クルー用の常設テントがひと張りあってもいいのかも知れません。
こちらはイギリスチーム。ドイツ チームほどの希望ではありませんが、やはり宿泊テントの中心に、基地となるテントを備えています。
そしてこちらはハンガリーのテント。宿泊所となるキャンピングカーに、前室となるテントを併設したような構造で、より快適な空間をつくっていますね。アンテナも大きいです。国は違えど同じ大陸内をクルマで移動すればいい国々は、こういったキャンピングカーの利用も多く見られます。
チームの総合力で勝負
実際に大会期間中、ポーランドは他チームより遅く出発して速くタスククリアしたり、我々が全く予想できなかった日にサーマルウェーブを利用して他チームより数百メートル高く上昇したり、とかなりテクニカルな飛び方をしています。
地元チームゆえに地の利は十分にあるはずですが、これに地上班の抜け目ない観測態勢が加われば、かなり正確な予測に基づいた勝負ができるのではないでしょうか。実はこの点もニッポンチームのウイークポイントであり、課題でもあります。
単独飛行とチーム飛行の違い
ちなみに単身で飛ぶまると、上空で複数機でチームが組める国とではサーマルの見つけ方に差があります。まるが飛行中に感じられるサーマルはある意味15mの翼幅に限られます。簡単に言えば、右翼が持ち上げられれば右に、左翼が持ち上げられれば左に上昇気流がある、と考えればいいのです。
これが、複数機で横に広がり、ローラー作戦でサーマルを探したらどうでしょう? 最も強いサーマルにヒットした機体の下に皆が入れば皆ハッピー。そう。サーマルを発見する確率が機体の数だけ倍加されるのです。
またチームで横に広がらず、縦列に飛ぶ場合もあるそうです。この場合は先行機がサーマル発見に全力を尽くし、後続機はその先を見越した全体の作戦に気を配ります。櫻井さんのインタビューで言うところの「俯瞰」しながら飛ぶことができるようになります。単座機同士であっても複座機のように頭脳を使えるのです。
一見、消極的な作戦に見えますが、まるが常々口にする言葉に「上空は3割あたま」というものがあります。パイロットが上空で操縦しながら使える頭脳や判断力は地上の3割しかない、という意味です。
「だからこそルーチンワークや非常時の操作の習熟が大切、体で覚えるんだよ」という意味で使われることが多い言葉ですが、競技フライトの状況判断でも頭は3割しか使えない、と暗に示した言葉とも言えます。複座機や単座機による縦列フライトは、これらパイロットが陥りがちな思考力不足を補うことができるのです。
日本チームの秘密基地
さて、話が相当脱線しましたね。このあたりで宿泊施設の話に戻ります(笑)。最後は我らが日本チームの秘密基地のご紹介です。
これは、チームまるが2週間借りた借家です。家を借りることで「シャワーに入り、静かな空間でリラックスしながらフライトの反省をし、ゆったりベッドに寝られる」という肉体的にも精神的にも充足度の高い効果が得られます。それだけではありません。ホテルでは自ずと限界がある炊事洗濯が可能になり、予算の助けになるだけでなく、栄養のある食事を用意できるので健康管理にも役立ちます。
ちなみに私はポーランドへ来る10日前、オーストラリアで14日間キャンプしながら仕事をしました。夜空と友達になれる清々しさがある半面、シャワーにありつけない日も多く、地面に寝続けることで疲れが溜まることもありました。日が落ちてからの時間もあまり有効に使えません。
でも、グライダーで4時間、5時間と勝負をかけながら飛ぶパイロットは精神的にも肉体的にも疲れていてはいけないのです。ヨーロッパの選手がテント生活でどうやって疲れないようにしているのか、まだまだわからないことが多いのですが、もしかしたらキャンプしているのは地上クルーだけで選手はホテルで寝ている国もあるのかも知れませんね。
その点日本チームは地上クルーが少ない半面、共同生活で団結を図っている、ともいえるでしょう。実際、秘密基地はとっても楽しい空間でした。
以上、テント村の話でした。いろいろ脱線しましたがこの後も当ブログでは、リアルタイム通信で威力を発揮した「Facebook」では語れなかったことをお伝えしていこうと思います。よろしくお願い申し上げます。(河村)
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