レシュノへドライブ
ひょっとしてこのヨーロッパ選手権に続き、ワールドの大会もポーランドで行われるの? と思ったあなた。するどい!! というか、まるがこの春に参戦した「プレ・ワールド大会」もレシュノでしたね。覚えていましたか?
レシュノはここオストロウの町から直線で約90kmほど西にある町です。クルマなら約1時間半の行程。まる、赤石、河村の3人が運転を交代しながら行ってきました。私にとってはヴロツラフの空港から宿泊拠点のオストロウまで走った初日依頼の長距離移動。それも昼間のミッションとあって、ポーランドの道を堪能することができました。
まず感じたのが町の中心を迂回するバイパスがないこと。それ故に小さな町でも通り過ぎる度に中心街へ誘導され、道が細くなって速度を落とさざるを得なくなります。とは言えすぐに郊外に出るのでストレスはさほどありません。路面は良かったり悪かったり。でもレシュノの町へ近づくと写真のように快適な道になりました。高速道路も未完のところが多く発展途上なので、あと数年したら大分様変わりすると思います。
滑空場の広さに仰天
レシュノ(ポーランド)世界選手権大会開催地
Leszno_Poland
オストロウ(ポーランド)欧州選手権大会開催地
Ostrow_Poland
Same scale as Leszno.
妻沼滑空場(日本)全日本学生グライダー選手権開催地
Menuma_Japan
Same scale as Leszno & Ostrow.
地理的な位置関係はこちらをご参照↓
ちなみに、この グーグルマップ はオープンです。誰でも閲覧、編集可能です。
想い入れのある滑空場の追加など、自由に編集していただいて結構です。
This Google map can be edited freely.
私は、先人達が文字通り切り拓いて造り上げた日本の滑空場に文句を言うつもりは全くありません。ただ、欧州選手権に参加してひとつだけ実感できたことがあります。それは、着陸帯の太さからくる運営サイドの余裕です。それは大会参加機数の多さにも直結しているはずです。
3機同時に着陸中。でも滑走路にはまだまだ余裕がある。 |
この欧州選手権では、ファイナルグライドで突っ込んでくるグライダーが一度に5、6機視認でき、それがそのまま滑走路に着陸して5分くらいその場所を塞いでいるなんて状況は日常茶飯事です。でも、だからといって大会ピストが着陸を中止させたり、注意を頻繁に呼びかける、なんてことはありません。ただただパイロットが開いたスペースを見つけ勝手に降りるのに任せていました。それが、できるだけの広さなのです。
ここで、グライダービギナーの方のためにもう少し詳しく説明しておきましょう。
グライダーは、動力を持った飛行機のように地上を自力で移動することはできません。着地してブレーキをかけるなどして慣性を失うと左右どちらかの翼端をチョコンと地面に着けてそのまま動けなくなってしいます。そうすると滑走路の中ではただの障害物になってしまいますし、パイロットひとりで動かせるものでもありません。
そこで登場するのがグランドクルーです。彼らが降りた機体の脇にクルマを寄せ、グライダーの翼端とお尻に車輪を着け、そしてクルマに繫いで滑走路脇に避難させるのです。ですから滑走路上に5機あれば5台のクルマも進入します。そんな最中にも次々降りてくるグライダーが避けてあまりある空間が確保されていたのに驚いたワケです。
日本の滑空場は主に河川敷などを利用しており、スペースの問題から横幅に制約を受けることが多いのですが、いつの日かこのくらいのスペースを持った滑空場が現れ、さらに大きな大会が招致できるようになるといですね!
滑空場にホテルが併設されている
滑空場の建物はこれまた大きく立派です。やはり日本の河川敷の滑空場が増水時に被害を被らないよう建物を土手の外に配置しているのに対し、平野の滑空場では格納庫や建物が滑走路に隣接して配置されます。レシュノでは管制塔のような設備もありました。とはいえ、大会時のピストは日本の同様着陸帯のすぐ脇に設置されるようです。
こちらが玄関です。GLIDING HOTEL LEZNO(グライディング ホテル レシュノ)と書いてあります。そう。建物の奥は宿泊施設になっているのです。まるもこの春のワールドプレ大会の初日はここに泊まったそうです。
入り口を入るとすぐ右に受け付けカウンターがあり、スタッフが常時座っていたのにまず驚きます。そしてすぐ左側、滑走路を見渡す側にはご覧のようなカフェがあります。写真は入り口だけで中の様子は撮影してきませんでしたが、なかなかお洒落で広いカフェでした。
来年お世話になる秘密基地
続いて訪れたのは来年夏に日本チームの本拠地になる借家です。写真右側の黄色い建物がそうです。まるはこの辺りの準備がとても早く計画的。この欧州選手権で競技がキャンセルされる日に確認できるよう、予め計画していたのですね。
オストロウの借家は完全に住宅地の中で近くに店も何もありませんが、レシュノの借家近くにはレストランがあります。「TYSKIE」はビールの銘柄。この看板が掲げられている建物は何らかの食事をサーブする所と思って間違いありません。屋根上に自転車を配置して花壇にしていました。可愛らしいですね。
選手とグランドクルー
スーパーで買い物をする赤石とまる |
さらにレシュノでは食材や生活用品の買い出しに便利なスーパーの位置も確認。まるはきっと世界選手権に来て欲しい赤石に見せていたのだと思います。
やっぱり女性は、そして奥さんの存在は別格です。僕ら男同士でも炊事洗濯はこなしますし、クルマの運転も力仕事も赤石よりは役に立ちます。
でも料理やまるの体調管理はそう簡単に真似できません。それに、生活を彩る “華” までは演出できません。いや、むしろ僕やザッキーが “それを演出できるようになったら赤石が困ると思いますが(笑)。いずれにせよ女性の力はとても大きいです。
そして私は今回始めてグランドクルーを体験させてもらって、前半戦ひとりでクルーこなしながらブログをアップし続けたザッキー(福崎)の精神力に脱帽しました。
まるはパイロットとして必要な睡眠を7、8時間と決めているのか毎日10時には寝ます。寝不足でクルマを運転する危険性は皆さん十分ご承知とは思いますが、平衡感覚や三半規管をフル活用させる三次元の世界では、寝不足は更に命取りになるのです。もちろん競技結果に大きく響きます。
これに対しグランドクルーはもう少し短めの睡眠時間で日々過ごせます。でも、それでも決して楽な毎日ではありません。ここでひとつ、ザッキーがひとりでやっていた頃のスケジュールを書き出してみましょう。
05時半:起床、パイロットより先にシャワー
06時頃:パイロット起床&シャワー、朝食の準備。
06時半頃:朝食、NHKあまちゃんを見る。
07時頃:朝食終了、昼食のオニギリをつくりながら出動準備。
08時頃:クルマへ積み込み、出発。
08時20分頃:オストロウ滑空場へ到着。機体出撃準備。
09時過ぎ:クルマで機体を牽いてグリッドへ移動。重量測定を受ける。
10時頃:ブリーフィング開始、気象条件&タスクを確認。
10時半頃:ブリーフィング終了。パイロットは作戦を練る。
11時頃:グリッド位置へ、パイロット昼食(オニギリ)
12時頃:曳航開始
13時頃:全機曳航終了、地上クルー昼食(オニギリ)
13時半頃:翌日のバラストに使う水をポリタンクに給水。
14時以降:スーパーへ買い出し、ブログ執筆。
16時頃:リトリブ準備&待機
18時頃:機体撤収。パイロットは当日のGPSログを主催者へ提出。
19時半頃:家に到着。積みおろし。夕食準備。
20時頃:シャワー、夕食。
22時頃:パイロット就寝。
こんな感じです。ちなみに「リトリブ」とは降りてきたグライダーを回収する行為を指します。その際、まるの機体がいつ降りてくるかが大切になりますが、ハンディの無線機では各選手がピットへ送信する「滑走路前10km」のコールが受信できないことが多く、実際には降りてくる機体のコンテストナンバーをチェックし続けることになります。
これらのルーチンをザッキーはひとりで、そして10日間もやっていたのですね。いやー、本当にお疲れ様です。え? パイロットはさらに長く2週間近く競技しているんだからもっと疲れるんじゃないかって? もちろんその通りです。2週間の長丁場を精神的・肉体的に常に充実した状態で居続けるのは至難の業です。
果たしてまるがどうやってこの問題を克服しているのか、そして今回の欧州大会はどうだったのか、それはまたの機会に本人に聞いてみましょう。
それでは、今日はこの辺で失礼させていただきます。またご機嫌よう。
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