2013/11/16

クロスカントリーパイロットへの推奨サングラス skylet (サニーファン)


グライダー用サングラスに求められる機能は下記になります。
  • コントラストがはっきりすること。
  • 特に積雲の輪郭、ブルーコンディションの時のパフ(できかけの雲)、べったりとした層雲コンディション下の積雲が見やすいこと。空気の澄んでいるオーストラリアとの異なり、日本ではもやっとした空が多く、特にもやっとした空気の中で滞留により発生している積雲の始まりを早期に発見出来ることがクロスカントリーパイロットに求められる能力です。
  • 上記を満たすためにはオレンジ、ブラウン系レンズが有効。トム・クルーズのようなグレーレンズはグライダーには不向きです。
  • かつては偏光レンズ(ポラロイド)はコントラストがはっきりする点で有効だったが、PDA のような液晶画面を多用する昨今のグライダーには不向きになりました。
推奨製品
  • Zeiss 社 skylet 「サーマルの見えるサングラス」
  • 互換製品 サニーファン
    • 神保町 れんず屋さん で購入可能です。 「グライダーで使います」と言って買ってください。W大学航空部学生はこれを装備していないと私のソアリングインストラクションは実施しないことにしています。(練習効率が全く違うので、指導効率向上のためです)
私は1999年にドイツで購入して、14年使っています。長く使えるものですので、クロスカントリーパイロットを目指す人は是非投資すべきアイテムです。
使用実績はこちら。ヨーロッパ選手権出場パイロット一覧ですが、多くのパイロットがスカイレットを使っていることが分かります。


2013/11/11

「ポーランドの強さの秘密に迫る」

グライダー強国「ポーランド」。
その強さはここ数年、さらに磨きがかかっている。

2010年の世界選手権は 18mクラス 1 位、3 位、スタンダードクラス 1 位。
そして2012年は 15mクラス 1 位、18mクラス 1、2 位、スタンダードクラス1 位。


ポーランド ナショナルチーム・コーチ
ヤツェック・ダンコフスキー氏
なぜ彼らはこんなに強いのか?
なぜ強いパイロットが次々と出現してくるのか?

その秘密に迫るべく今夏のヨーロッパ選手権期間中、まるがポーランドのナショナルコーチ ヤチェック・ダンコフスキーさん インタビューを試みたことは記憶に新しいですね。

もともとニッポンの若手育成のためのヒントを求めて自発的に申し込んだインタビューでしたが、それを詳しく文章化したものが「JSA インフォメーション」の 2013年11月号 に掲載されました。

それも巻頭特集です!

詳しくは上のメニューの「講演・著作」をごらんください。実は最近「グライダー推薦図書」も画像付きで更新されています。



インタビューする丸山
ポーランド・ナショナルチームの強さの秘密。
その全てを包み隠さず話していただくことは不可能だと思っていましたが。ヤチェックさんはとても真摯に、そして丁寧にまるの質問に答えてくださいました。

・ポーランドの滑空人口は?
・ナショナルチームはどのような機材を揃えているのか?
・国からどのようなサポートを受けているのか?

・ポーランド国内の競技会は?
・ポイントランキングシステムは?
・若手の発掘方法や育成方法は?

などなど。
盛り沢山のインタビューです。



記事はマクロな視点に立ちながら時にミクロな視点も織り交ぜつつ、日本の現状と比較しながらまるらしく正確な文章で書かれています。僕も編集者という仕事柄、微力ながら校正作業に参加しましたが、わかりやすくそして熱意ある文章でした。

記事中、躍進するポーランドの若者達を語っているパートがありますが、改めて「環境が人を育てるのだ」という当たり前の在り方をポーランド滑空会の土壌に感じることができます。日本では望んでもすぐに得られない環境ですが、だからこそぜひ未来を担う若いパイロット達に読んでいただきたいと思います。


なお、JSAインフォメーションは 公益社団法人 日本滑空協会 の発行です。フライトに役立つ情報をはじめ、全国のグライダークラブの話題、海外記事の翻訳や特集など、グライダーにまつわる読み物が掲載された雑誌です。ただし書店に並んでいるものではなく、会員への機関誌として届けられるものですので、入手ご希望の方はこちらをご参照のうえ、滑空協会への入会をよろしくお願いします!

2013/11/01

2013ヨーロッパ選手権フライト日記 day2 (7/7)

Task 3+45 AAT
Results 20位 738 Point 97.2 kph
Meteo

ウエザーチャート

昨日より若干雲量が減るが、サーマルの強さは安定した感じ






さらに高気圧の範囲へはいる


1600m に逆転層

明日は北側を前線が通過
昨日よりドライになり、空の青みが増しました。


day2 Grid 最終列から一列前へ。







予報では 1700m に逆転層なので、昨日より対流も深くなりそうです。風も 010 / 15 km/h のため弱まりました。
4h AAT Avg 100 kph として 400 km 。AAT の場合通常風に平行になるようにコースを設定します。今回は1st, 2nd leg は風に平行に飛べますが、3rd, 4th leg は風に直行するレグになります。
前日サーマル中の上がりがあまりにも悪かったので、早めスタートで途中遅れて、後続のガグルに合流する作戦にしました。
しかしこれは間違いです。RT の日はこの作戦で良いのですが、AAT の日はガグルから遅れたら早めにターンして再度ガグルに合流する作戦で良いので、早いスタートは不要でした。
day10 にもスタートタイミングについて同じ考え方のミスをしている。(day10 はプレッシャーとガグルの恐怖で逃げてしまって早めのスタートをしてしまい大失敗になりました)

start

離陸 12:37  スタート 13:09  4h タスクなのでスタート最終リミットは 13:30 ガグルを有効に使うことを考えすぎて2番目でスタートしてしまい、早すぎでした。適切では無いタイミングです。

スタート前に積雲下で待機、トップまで上がりきってガグルがブレークしたところでガグルを見失い、スタートライン上で待機するが、待ちきれず、先にスタートゲートがオープンしたクラブクラスが何機も出て行ったのを見て、スタート。

ガグルを見失った原因は積雲コンディションで上昇しすぎ、速度を出して大回りに雲底で待機していたが上がりすぎ、雲からでざるを得なくなったためです。直前まで5-6機のガグルが見えていたのだが、見失い、クラブクラスのスタートが見えたことで、焦ってスタート。(実際は近くに居てメインのガグルは10分後くらいにスタート)。見失わないためにはダイブ開いて高度を下げて、速度を出さずにリフトに留まり、他機をよく見る事が必要(day10 も同じ失敗)。
1st leg
一番飛びやすい雲量でなおかつ雲がしっかりしているので、コースに対してあまり迷うことが無い飛びやすいパターンです。
クラブクラスのタスクの1st leg はほぼ同方向で、クラブクラスがスタートゲートオープンが先なのはチェック済でいた。
単機でスタートしたので、クラブクラスの先行して回っている機体をマーカーにしてグライドすることに、ただグライドパスが違いすぎるので1サーマルで追いついてしまい、すぐに使えなくなるので、次々と先の機体を探す事が必要です。

クラブクラスとは同じリフトでは翼面荷重が違いすぎる(クラブクラスは最大翼面荷重 38 kg / m^2, 水バラストは許容されていない)ので、旋回半径、上昇率が違いすぎて一緒に回るのが難しい。(特にサーマル中で同高度になると低翼面荷重から低速で小さく回れるので内側から追い抜かれるため、危険)
1st leg 中盤で6分後スタートのドイツ(Y4,FL)、オランダ(Y1)に追いつかれ、そこからはドイツ、オランダとフライト

1st leg の Kawa 様のフライトとの比較(赤 maru、青kawa様)

1st leg の 33km を L/D 117 で飛び抜けている。バログラフを見ても全体は下がっているが、ギザギザに上がったり下がったりを繰り返してのドルフィンでグライドを伸ばしている。(ここが私との最大の違い)



1st Area をターンした判断ポイントがよく分からない。雲の状況だけ見たらもっとエリアの奥まで行っても良さそうだったのだが、ほとんどの機体がこのあたりで1st area をターンしています。
2nd leg
前半

1st leg の時間と比べると若干雲の厚みが減り、ブロークンに。タイミングがあわず、下げてしまい、速度が落ちてしまう。
2nd leg 後半

選択しているエリアに大きな差は無いのだけど、 Kawa 様はL/D 68 で 55km をドルフィンで飛び抜けている。私はグライドで大きな差がついていて下げてしまって、弱いので上げ直し
その後の2nd leg 後半をKawa 様のL/D 100 と同じように L/D 98 で飛べたとき。(Kawa 様はさらに 10km 長く飛んでいる)これが毎回同じように出来ると良いのですが、そうはいきません。


3rd leg 風に直行するレグ。雲量がさらに減ってくる

風と直行するレグ。今日は AAT なので、ストリートラインの良いところで90度ターン


3rd leg 後半
私的には2nd leg に比べると雲が isolate な状況になっているように見える。上がるのは上がるが。トレースを見るとその通りで、上がって、L/D 37 で前に出ているのだが、同じレグを Kawa 様は L/D 77 で 2nd leg と同じように飛び抜けている。私には風に直行することで、Cu ストリートが上手く使えず、カタログ通りの性能値でしか飛べていないのだが、Kawa 様は風に直行するレグでもラインの連続性を意識して飛んでおり、倍近い差が出来ている。これは真似できない。。ドルフィンしている状況で Avg 168 kph でているので、私よりクルーズの平均速度が 10kph は早い。リフトの強さとクルーズバンドに対しての使う速度の基準点がそもそも早い。1999年にLS8でスタンダードクラスの世界選手権に出場したときにドルフィンで飛んでいた飛び方と明らかに違うと思う。

3rd leg 後半で Kawa 様に追いつかれたので、Kawa 様のコース取りを学ぶべく、タスク的にはオーバータイムになるがフォローしてみる。
ポーランドチーム3機編隊の後ろを3rd leg, 後半、4th leg と160km ほどフォローしてみて、コース取り、チームでのリフトの探し方を研究
16:00 - 17:20 の時間帯になるので前述のようなドルフィンが続くコースでは無く、isolate な積雲がコースの途中で 15 - 20km おきに点在、1.5m/s で 900m - 1500m を利用
私がフォローするのに丁度良い強さのコンディション(これより強いとクライムで置いていかれ、グライドはドルフィンで差がつくのでフォローするのが困難)
インターサーマルの速度感、コース選択、3機でのリフトの探し方を観察。リフトに入り、3機で綺麗にブレークして、良いところに寄せている。この状況下でもじりじりと Kawa 様が差をつけていき、最後は Kawa 様が先にフィニッシュした。

4th leg


ポーランド3機編隊とベルギー(ALB、21 )から若干遅れながらトレース



フォローする機体から遅れたときの前後間隔の取り方

サーマル中で遅れた場合、相手機がサーマルアウトした後もさらに旋回して高度を上げてからでることになる。サーマルアウトが遅れすぎると相手を見失い、上手く利用できなくなるので、サーマルアウトを遅らせるにしても、見える範囲までとする。2旋回( 40 sec = 2km)まで、積雲で視程の悪いコンディションだとこれ以上離れると見失うことが多い。
前後の間隔はコンディション(強さ、積雲の有無、太陽の向き)により異なる。写真のような東向きレグ(太陽が後ろ)、視程良し、scatter な積雲なら 100 sec (5旋回) = 5km 遅れても前方の動きは見えるのでとらえられる。(グライド中は見えないが、scatter な雲なのでコースの想像がしやすいこと、プルアップしたら見える)
積雲が多いコンディション、湿っている空気のレグでは2周遅れると見えない。ので1周差までにしておく。積雲が多いとドルフィンで差がつくので、間が開くと上手くドルフィンを真似する事が難しく、ドルフィンで上手くついて行くためにも間は開けない方が良い。
西向きの head sunshine のレグだとさらに見えない。1周が限界

ファイナルグライドのタイミング

1400m 42km L/D =31 で final に入れている。前方積雲コンディションでグライドが伸ばせる前提。ブルーだったり、層雲に覆われてしまうようなコンディションであればもっと確実に L/D 28 くらいまであげている。前方のコンディションで変えている
前方に積雲があるようであれば遠くでファイナルに入れることに固執しない。私の場合、同じ41km で 0.5m/s で最後の 60m を上げた上に、さらに前に出てから 100m あげている。160m を 0.5 m/s で320 秒 = 5分のフィニッシュの差になっている。前方の空気がアクティブなのであれば、前に出て、1m/s でゲイン出来るところを探すべき。L/D = 29 まで上げているのも無駄になっている。


全体

kawa様と比較

Kawa 様は下げてない。バンドを維持している。
ドルフィン(ギザギザ)でグライドの伸びているところが多い(私のグライドは上がってグライド、と単調になっている)
平均L/D が 20 も違う。。