2022/03/06

2021年ナミビア合宿

 

先生と

2017年に続いて2021年11月もナミビアのKiripotib飛行場で開催された Flying with the Champions トレーニングコースに参加して、コーチからのトレーニングを受けることができました。このトレーニングコースは、過去の世界選手権、ヨーロッパ選手権の1位、2位になった方と、1週間のフライトトレーニングを受けられるキャンプです。世界トップクラスのパイロットと複座で一緒に飛行してデモンストレーションをして頂いたり、アドバイスを受けられる機会は、非常に貴重な機会です。2021年7月にワクチン接種が決まった直後に連絡を取り、第1週のコースに1名だけ空きがあるとのことので、参加申込をしました。

ナミビアには4カ所のグライディングセンターがあり、ヨーロッパのシーズンオフの間にヨーロッパから60機ほどのセルフランチモーターグライダーが、40フィートコンテナ1台に3-4機、トータルで60機程度が海上輸送されて、11月~1月前半の2ヶ月半シーズンに飛行が行われています。シーズン中は約400人ほどのパイロットが訪問し、短い方は1週間、長い方ですと2ヶ月ずっと滞在してフライトしているそうです。

キャンプ前日の夜にようやく機体を積んだコンテナが到着
キャンプ前日の夜にようやく機体を積んだコンテナが到着。トラックにクレーンがついていて、クレーンでコンテナを下ろします。トラブルでクレーンが動かなくてしばらく緊迫した時間が続きました(先生が潜り込んで復旧!)

キャンプ初日は朝6時から全員で7機の機体組(Rigging with the champions)
キャンプ初日は全員で7機の機体組を朝6時から9時まで実施(Rigging with the champions)


2020年-2021年シーズンはCovid-19のため、4カ所のグライディングセンターの内2カ所はシーズンを通じてクローズ、2カ所は短期間、小規模でオープンしてゲストを受け入れていました。Flying with the Champions のコースも開催が中止、運営しているRent A Glider も機体を売却してCovidを乗り切っていました。2021年-2022年シーズンは4つのセンターとも従来と同じ規模でフライトを開始しました。Kiripotib 飛行場はコンテナ3台で13機を、Veronica飛行場は12機を、最大規模の Bitterwasser飛行場はコンテナ8台(30機?)をコンテナで送るそうです。11月下旬からはオミクロン株の影響で渡航を控えた人もいるようで、OLCを見ている限りでは12月以降は例年に比べると少ない(50%くらい?)フライトになっています。


飛行場について

私が行った場所はKiripotib飛行場、2017年に訪れたのと同じ飛行場です。慣れたところなので、準備もスムーズに進めることができます。宿泊はサファリリゾートで、どのセンターも飛行場にコテージが隣接していて、毎日「食う、寝る、飛ぶ(Eat,Sleep,Fly)」を繰り返すことができます。Kiripotib は特に飛行場がコンパクトにまとまっているとのことで、飛行場と宿泊施設が近くフライト前の準備が便利です。

コテージの前が滑走路

プールの向こうが滑走路






Kiripotib飛行場

・標高 1368m

・滑走路 08/26  1410x80m と、 18/36  1.500 x 50 m の2本のクロスランウェイがあります。メインは08/26 を利用していて、18/36 はほとんど使いません。(不時着場が無い)


離陸

離陸は26がほとんどでした。1,400mの滑走路ですが、標高が高く、気温も35度と高いので、density altitude は2,400m相当になります。複座セルフランチモーターグライダーの離陸だと1400mの滑走路エンドまで来て対地50m位までしか上昇できません。滑走路には1/3ずつに、「ここまでに離陸しなければtakeoff abort」 する目印の白いドラム缶が設置されています(残り500mの滑走路で停止可能な目印)。滑走路周辺の不時着場としては滑走路と平行な道路(20mスパングライダーが十分不時着できる幅でなおかつ草刈りされている)が滑走路26離陸後に2kmほど続いていて、滑走路エンドを過ぎた後はこの道路にアラインして離陸操作を続け、万が一のエンジン停止時はこの道路への直進での不時着が推奨されています。渡航直前に発生した国内でのセルフランチモーターグライダーのエンジン停止からのスピン事故のこともあり、自分でもなんども緊急手順を事前に確認してから離陸操作を行いました。

離陸時の注意点についての掲示

西向きに離陸して滑走路エンドで対地50mくらい、右手に見えるのが不時着可能な直線道路

着陸

着陸もほとんど08/26の滑走路を利用します。駐機スペースが東エンドにあるため、風が弱ければ08で着陸します。夕方は海風が入ることが多く、夕方になると西風が強くなる場合が多くなります。この場合は26で着陸しますが、日が傾いた時間に西に向かって降りると何も見えないため、日没前30分は26では着陸しないルールにしています。夕方はアーベントサーマルがあるため、日没まで滑走路周辺で待機して、日没後に着陸します(日没後15分までは飛行可能です)。着陸後は係留場所まで移動して、ビールを飲んで、カバーをかけて、充電器をつないで係留します。日没後の着陸の際は片付け作業のためにヘッドライトが便利です。

日没後を待ってRW26でのランディング

着陸後の片付け


コンディション

今回の滞在中は北東エリアが積雲で活性化することが多く、良い日はおもに北東のエリアをフライトしました。1,000kmをタスクセットして飛べるようなコンディションにはちょっと足りないコンディションでした。クリスマス前の頃がピークの時期で、日照時間が11月に比べると1時間長くなります。良い日だと、11:00くらいに離陸、北東150kmくらいまではブルーの中を対地1500mくらいで2時間ほど進み、150km先のエリアから積雲エリアになり、対地4000mにブレークスルー、そこからはドルフィンで平均速度180km/hペース。400km位先まで行き、15:00過ぎにターン、16:00を過ぎると積雲の間隔が開いてきて、ドルフィンからクライム・クルーズモードに戻り、16:45くらいには120km先の最後の積雲でファイナルグライドに入れてローカルエリアに戻る、といった感じになりました。16:30を過ぎると慎重にキープハイで飛んでいました。東に250kmくらいから先はボツワナになり、降りる場所がさらに限られるので、ボツワナのエリアのコンディションが良く、ボツワナを飛行する際はさらにキープハイで飛行します。

雲底5000 - 5500mくらい、14:00ごろ 湿度少ないので雲が立ち上がらない


弱い日(トップがMSL3000m、AGL1200m - 1500m程度)は半径100kmくらいで飛行場、不時着場(30-40km毎にある)をつないで飛んでいました。

トップの低いブルーの日


スタート

離陸時間はTopmeteo の予報を見て、トリガー温度を超えた時間で離陸します。コンディションが良ければ11:00前には離陸します。コンディションが良くなるまで時間のかかる日はレストランでランチを食べて、13:00頃に離陸していました。


対地1,000m以上あがるようになれば基本的にはローカルからクロスカントリーへスタートしていました。湿度が非常に低いので、(3-5%)、この時間はほとんどがブルーコンディションになります。(離陸時から雲が出ているようなときであればおそらく日中はサンダーストームになってしまう)。


ブルーの飛び方

良い日でも11:00-13:00くらいはブルーで飛ぶことが多かったです。11:30時点ではトップは対地1,000m程度ですが、ブルーで日射が遮られたりはしないかぎりは、ある程度一様な間隔でリフトが発生します。ライヒマンの本ではサーマル間隔は対流高度の2.5倍、トム・ブラッドバリーでは3倍と書かれているので、対地1,000mであれば、2.5~3km間隔でリフトが存在します。一様な地形なのでリフトソースは下記のような

道路、パン(ドライレイク)、建物


  • 道路
  • 道路沿いの建物
  • 干上がった湖(dry panと呼ばれる)

といった周辺地形と異なるところでトリガーされていることが多かったです。このため、トップの低い最初の時間帯(11:00-12:30)は道路沿いにグライドすることで、道路に交差する形で風が吹くことで道路からトリガーされる、道路沿いの建物があるところでトリガーされる、交差点のようなところだとどの風向でもトリガーされる、といった形で、完全なブルーであってもかなり自信と根拠を持って前に進むことができます。とはいえ、たまにタイミングを外してしまうときがあり、そのような場合はサーマルが生えてくる兆候のあるボコボコしたところで低い高度で10-15分粘ってサーマルが生えてくるのを待つような場合もありました。不時着場は滑走路周辺100kmくらいの範囲だと10-20kmごとにあり、道路沿いは降りれるところがあります。


クルーズ

  • トップがあがるまで(AGL 1,000 - 1,200m)では150km/h前後のクルーズ
  • AGL 1500mで 170km/h前後
  • AGL 2000m以上のトップが取れるようになると180km/h(200km/h)以上を使っていました(180km/hで -2 フラップ、200km/hで Sフラップ)

リフティングするエリアにはいると150km/h→120km/hに減速して空気を感じやすくします。180km/hでクルーズしているときは150km/hまで減速します。

私の場合、減速が遅れがちで、リフティングしたエリアに入っているのに、速いスピードのまま飛んでいて、リフトの場所が分からない(通り過ぎてしまう)ケース、ターン開始時にまだ150km/hあるので旋回が大きく、沈下率が大きく、上昇しない、が多くありました。反応速度の遅れです。徹底的に指摘して頂き、ようやく最終日になって、リフティングしてきたのに合わせた減速、十分に減速した状態からのターン・エントリーが出来るようになってきました。(それでも夕方になって疲れてくると、反応が緩慢になっていることが分かります。録画したビデオを帰国後3回ほど見直してみたことで、自分の変化がよく分かります)


コンピューターのクライム・クルーズ切り替え、スピードコマンドよりブロックスピード

セントカ先生とのトレーニングのころから、グライド時はスピードコマンドを使っていました。2017年のナミビアレポートを見直すと、スピードコマンドを使うことを勧められていました。今回は多くのコーチがボックススピードで飛行していました。コンピューターの設定も、グライド時もクライムモードのままにして、クルーズはボックススピード(ブロックスピード)で飛ぶことを勧められ、ボックススピードの利用に戻すことにしました。コンピューターの表示もクルーズ時もクライムモードに固定して飛ぶようにしました(LX90x0は設定でV8(電気バリオ)の表示をクライムモードに固定することも可能です。最近の機体はフラップセンサーでフラップ位置でクライムクルーズを切り替えるか、LX Remote Stick の前方にある切り替えスイッチでの切り替えが出来ます)

SC on/off switch is used to change between SC (cruise) and climb mode using on/off switch on the remote stick or magnetic switches on flaps. Use the invert check box to invert the working of the switch.

たしかに、クルーズからクライムに切り替えるとオーディオバリオの音が切り替わるのでなんかテンポが崩れるんですよね。。 


ブロックスピード

  • Mc1から開始、雲があるとき1.5、ブーミングしてきたら2.5、スピードコマンドはおいかけない
  • ファイナルグライドはMc 1.5 で 200m マージン
  • 高度によって速度を変える、空気を感じやすくするため。
  • 高い高度 弱いのは無視して良い 速度速い
  • 低い高度 弱いのも拾いたい 速度遅く


サークリング時のフラップの使い方

あるコーチは強いセンターではLフラップで105km/hで飛行していました。別のコーチはLフラップでの旋回は好まないと言っていました。JS3のつもりでサークリング115kph位で飛んでいたのですが、サークリング速度が速すぎるので、105k/hまで落とすように指示されました。また、Ventus3ではLフラップに下げるとピッチが大きく変わってしまい、センターから外れてしまうことがおおく、Lフラップを上手く使えなかったのですが、今年のArcusMではLフラップ 105km/hが上手く使えるようになりました。2017年にArcusで飛んだときももLフラップが上手く使えなかった気がします。



エントリーの際のフラップの使い方はコーチによって様々でした。リフティングしたエリアに入ると105km/hまでかなり減速して、サーチしている段階でLフラップまで下げて、Lフラップのままロールインするコーチ、ロールインは+5でロールイン、バンク確立後にLフラップまで下げて、センターをずらす際のロールアウト・ロールインもLフラップのままで操作するコーチ、0フラップでロールイン、バンク確立、そこから+5→+10→L (ここまでで一周)と少しづつ下げていくコーチ。Lフラップを使うことをあまり好まないコーチ。

いずれにせよ、フラップの操作は非常にスムーズ、なめらかで、1段づつ丁寧に下げていきます(「ガクン」といったような使い方はしていません)



連続しているストリート下で本当に良いときのドルフィン

ドルフィンするつもりで強いところでズームアップしているのですが、少しづつ先行機に遅れていきました。強いところでズームアップしすぎで減速しすぎ(その後の沈下で沈んでしまって高度さがついていく)との指摘でした(160-200km/hくらいのドルフィンにすること、160km/h以下に減速しない。私の場合、良いところで130k/hくらいまで減速)


タスクを折り返す判断


以下14:50でmoistureが上がってきたからターンした方が良いとのアドバイス




LX9000メニュー設定

現在のページはアダムさんのプロファイルをベースに使っています。情報量が多くて良いと思っていたのですが、先生からは逆に情報量が多すぎると指摘されました(タイムアラーム、遠すぎるFlarmオブジェクトの警告、表示している情報量など)。情報が多すぎて迷ってしまう状態になっていることに気がつかされました。先生のプロファイルはとてもシンプルになっています。1日目は自分のプロファイルで飛行、2日目は先生のプロファイルをコピーして飛行してみましたが、確かにシンプルなプロファイルの方が良さそうです。飛べない期間中にLX9000はマニュアルやセミナー資料を見ていろいろと研究したつもりでしたが、使いすぎてしまうのも良くないことに気がつかされました。

電気バリオのV8にはMSLとAGLを表示しておくと便利なことに気がつきました(低いときにAGLを即座に見たい。LX9000上だと標示物が多すぎてすぐに探せてない)

11/5トラックログ

11/6トラックログ

11/7トラックログ



2018年チェコ選手権振り返り

うまくいかなかったフライト、イマイチな体調が続いてしまい、イマイチな結果で、振り返りたくなかった2018年のチェコ選手権を4年ぶりに振り返ってみました