2017/06/29

2017プレグライダー世界選手権大会 パイロットレポート 練習期間編

























練習期間は好天に恵まれ、一日も休み無く飛べました。慣例に基づき大会が始まると天気は悪くなり、day1 キャンセルになりましたところで練習期間のパイロットレポートです。

6/17(土)羽田発 深夜0:10 (金曜の深夜発)のカタール航空。ドーハで乗り継いでブダペストまで18時間のフライトで、初の中東エアラインです。いままでは深夜発だと時差調整が気になって避けてきたのですが、ANA/LH とも繁忙期前なのにエコノミー30万円とあまりにも高かったのでカタール航空にチャレンジしてみました。
失敗点は預け荷物が一人30kg、二人で60kgまで(個数制限無し、合計重量オーバーチャージが70US$/1kg なこと。スターアライアンスの感覚だと個数超過は 150EURでしたのでその感覚でいたのですが、今回はオーバーチャージが想定よりもだいぶ高い料金だったため荷物をギリギリまで削減しました。(減らしすぎた結果、持ってくるべきだったものも置いてきてしまいました)。来年は無線機とアンテナも持ち込みたいので事前に船便で送るなど何らかの対応が必要です。

見送りに来てくれた新チームメンバーと

























機内ではシリコン耳栓、アイマスク、フットレスト、スリッパと完全装備の上、機内食抜きで11時間中9時間を寝続けたおかげか、時差調整は今までに無く早く済みました。(従来は3日程度時差調整が必要でした)機体がB787だったことも疲れなかった要因と思います。

ドーハでの乗り換えは1時間も無く、乗り換えロビーでカートに乗せてもらいギリギリセーフ。心配した荷物もちゃんとブダペストに到着しました。乗り換え時点でもセキュリティチェックがありましたが、スムースなチェックのおかげで時間に遅れず助かりました。乗り換えがタラップだったので、朝の6:00に38度の外に出なければなのはつらいところです。

ドーハからブダペストのルートは直前のニュースの通り、カタールと中東周辺国の国交断絶でサウジアラビア上空が飛べず、イラクの上空から黒海経由でトルコへ。イラクは砂漠の中にも結構高い山がありました。
ドーハの町






























ブダペスト11:00着。ずいぶん沢山中国からのお客様が乗っていました。CAさんも中国の方。昨年ブダペストに来たときも街中に沢山中国からの観光客がいましたが、納得がいきました。ブダペスト空港には毎年来て居ることもあり、携帯ショップで現地のSIMを購入し、ホテルまでのシャトルバスを予約して、市内のホテルへ。booking.com で9点以上で探した物件でしたが大当たりでした。中心部からは少し離れますが、再開発地域のサービスアパートメントのようで、敷地内にパーキングも有り、スーパー、レストランも近隣に充実していて常宿にすることにしました。
夜は機体オーナーのリチャードさんのお家にお呼ばれいただきディナー。期間中借りる車にワイン12本をつけていただきました。

6/18(日)陸送日
8:00ホテル出発でブダペスト市内の滑空場へグライダーを受け取りへ。この滑空場は市内から20分で到着する好位置にあります。上空3500ft以上はブダペスト国際空港のClass-C の空域で、クロスカントリーにスタートする際は10kmほどを3500ft以下で飛んで、そこからClass-Cの空域下限が6000ftにあがるので、6000ftまでクライムしてクロスカントリーフライトをしているそうです。ヨーロッパにはこのように、国際空港の周辺でも昔からグライダーやジェネアビで飛んでいる飛行場が有り、空域をきっちり守って棲み分けをうまくしています。日本もみならいたいものです。


















































Gaborから機体の状況を説明してもらい、引き渡しを受けました。丁度バグワイパーのテグスが壊れていたので、直し方を教えてもらいながら直してもらえました。

10:00出発で550km先のチェコまで。道中は好条件が続きます。





























ずっと高速道路を走るだけなので、楽勝だと思っていましたが、プラハが近づくにつれ、工事渋滞が各所で発生。Google map のナビは高速道路を進むと渋滞で一時間以上遅くなるから下道に降りて進めと指示しますが、トレーラーを引いての下道を避けて高速道路を選択したのが大失敗。17:00到着予定が遅れて19:00着。そろそろGarminのスタンドアロンナビは引退時期のようで、オンラインのGoogle Mapでのナビをメインにした方が良さそうです。(ちなみに、チェコはLTEほぼ全域カバーです。ドイツだと高速沿いでも未だに 3G が入りません)

Pribram 飛行場に到着すると早速コンテストディレクターのトーマスさんと息子さんが出迎えてくれて、トレーラーの置き場所を指示してくれました。大会参加者の初到着だったようです。





























日のある内にレンタルハウスにも到着でき、ハウスオーナーから近隣のレストランを教えていただき、近くのすてきなレストランで夕食できました。

6/19(月)地上準備日
まずは生活環境のセットアップ。Pribramの町でチェコのSIMカードを購入。2.5GB データ通信料をつけて約2500円。





























TESCOとOBIで生活資材を購入。

























Pribram の町はなんでこんな谷の狭いエリアに町が開けたんだろうというようなところで、各所が道路工事中で距離の割に乗り入れがとても運転しづらい場所でした。

午後から機体を組立。だれもヘルプを頼めそうな人が居ないので、なんとか二人でくみたてました。初日から頑張ると疲れが残るので、この日は17:00で早めに終了。20:00には寝てしまいました。


6/20(火)練習初日
ここの飛行場は飛行機がメインの飛行場です。もともとは軍の飛行場だったのを民間に払い下げされたらしく、プライベートの飛行場だそうです。滑走路長はAIPでは30m x 1380mですが、Google map で実測すると2000m、西側の500mは払い下げの時に切り離してカートコースにしてしまったようです。ビーチクラフトバロン、キングエアーといった双発機も飛んでいます。他シーラス、ピラタスも多数置いてあります。スクールもやっています大きなメンテナンスショップもありますし、スカイダイビングをひっきりなしにやっています。(スカイダイビングは韓国人の若者が10人単位で5-6組は来ていて、韓国ではチェコが流行っているらしいです。(ソウルからプラハは直行便が飛んでいるらしい)
























飛行場の周波数は118.755Mhz。ヨーロッパは 8,33kHz spacing に移行が進んでいて、無線機の周波数割りがより細かくなりました。チェコは2017年から完全移行になったようです。困るのはこれまで持っていたハンディのVHF地上無線機が使えなくなったことです。仕方なく、8.33Khz に対応したハンディを一台追加しました。
ハンガリーも昨年移行したそうで、40年物の古いグライダーですら無線機の交換が必要になったそうです。イギリスは補助金が出ていました。

一般向けの施設としてはレストラン、ホテルに加えて、ボーリング場、インドアゴルフ、屋内プール、ジム、と集客のための施設を増やしているようです。






























グライダーオペレーションはどうかというと、小さいクラブが一つあるだけで、ウインチでブラニックを飛ばしていました。前回競技会が行われたのは30年前とのことで、競技会スタッフは全員外部から来ています(チェコの滑空界の人たち、ほとんどが顔見知り)。ラインボーイもグライダー未経験の若者を急遽集めたようで、グリッドマーシャルはまだこれからといった感じです。なぜこのようなグライダーが盛んでない飛行場に世界選手権を誘致したか聞いてみたところ、チェコには世界選手権を開催できるような広い滑空場がなかったからだそうです。

グライダーオペレーションには飛行場の幅が狭い(30mのコンクリート、80mのグラスエリア、10mのタクシーウエイ)ですが、おそらく3-4機が同時着陸できるかといったところでしょうか。(2014年に開催されたレシュノは幅300m)。滑走路の長さを生かして、皆さんがロングランディングしてくれればよいのですが、トレーラーの近辺に止めたいひとは必ず居るので、これはやってみないと分かりません。

グライダーはまだ誰も到着せず。一人で飛ぶことになりました。トーマスさんがブリーフィングしてくれましたが、用意している地図(旋回点全部入り)と、セルフブリーフィング資料を印刷してきたことでちゃんと準備していると理解してもらえたようです。当日のアクティブな空域を教えてもらってトレーニング開始です。




西の空はブルーですが、東は積雲が発生しており、13:00離陸。雲は2000m位で120km東南東のエリアまでの2往復をしました。同じエリアでストリートの発達、衰退を理解することと、プラハのClass-C空域の空域がFL65までのエリアとFL75までのエリアFL95までのエリアと分かれているちょうど際のところによいラインが発生しており、競技会でも良いラインと空域の制限を意識したフライトが必要になると考えられたためです。
(2008年のリュッセ大会の際もベルリンの空域の縁のところに良いサーマルソースになる森が連続していました。2014年のレシュノ大会の際も、同じようにポズナンの空域の縁、ブロツワフの空域の縁のところに良いラインが発生していました。こういったサーマルソースに良いエリアと、飛行場の空域も上手に交渉して空域を確保しているそうです)

・リフト、クルーズのフィーリングを大切にすること
・クルーズ速度で 150km/h以上を維持すること
・雲をセレクティブに全領域試すこと
このあたりを練習のポイントにしました。同じエリアで繰り返し練習することでまずは反復練習をして反応の自動化を試みました。クルーズについては速度は割らないように出来ていますが、ラインの選択が直線的なのでもっとフィーリングを大切にスネーキングを心がけるようにしました。





























いくつかの機材設置上の不具合を修正しました
・ビデオのケーブル配置(バグワイパーハンドルとの干渉)
・Oudie とエンジンミラーの干渉
・空域ファイルの修正(コンテストエリア全体がワーニング対象になっている)

地形的なことについて、なだらかな丘が続いているようですが、高低差と、風の吹き込む部分からの吹き上げは同様にあることが確認できました。


6/21(水)非公式練習日 day1
前日東エリアを調査したので、この日は西エリアを飛ぶつもりで準備。当日は朝から積雲が発生していましたが、こういった不安定な日だとサンダーストームになりやすく、予報でも午後サンダーストームの予報になっていましたが、結果的にはそこまで不安定にはなりませんでした。






























前日より早めに12:30 離陸。西のエリアも積雲が続きますが、雲量が多すぎ、オーバーキャスト状態であまり良くないので、前日同様東に行くことに変更しました。

前日よりは少しトップ低めで 1900m、とはいえ、地面が450-600mのエリアが続くので、実質1300m-1500m程度の雲底です。まだ1000mある、と思っても地面が600mなので、実質400mしかないので、そこは頭を切り換えなければなりません。
とはいえ、前日よりもさらに空気を感じるフィーリングと自動化が良くなってきていることは感じられました。上昇帯エリアに入ったときからのサーチ、低いところからの上がってくるのか、待つべきなのか、上がらないから次へ行くべきのかの選択、などです。

今合宿から練習期間中は生活リズムを下記に変更しています。
06:00 起床
   準備
   前日フライト振り返り
   当日フライトデータチェック、気象予報、目標設定
09:30 出発、準備
12:30 フライト
17:30 着陸、片付け
19:00 帰宅、シャワー、夕食、最低限の準備
21:00 睡眠
夜は考える時間を減らし、頭をあまり使わずに睡眠に入り、睡眠時間を増やし、朝のフレッシュな頭でレビューとプランニングを行います。
レビューはレビューシートを用いてシンプルに行い、考えすぎず、良かったイメージを残すようにしています。


6/22(木)非公式練習日 day2
高気圧後面、前線接近で南西風強まる。
風が強まってチョッピーな上がりづらい状況
12:00 からScrutineering (inspection & weighing) を実施。
日本でもこのタイプの一体型の平べったい秤があると、組み立てた状態で秤に乗せるのが楽になるので、探しています。






























ブルーなので離陸遅めで
13:30 離陸





























一度外に出てみたがブルーのサーチがイマイチなので、ローカルエリアのサーチ練習に切替。西風のリフトポイントをいくつか想定して試してみて、西風でローカルで上がるポイントを確認。
北のエリアにはレンズ雲が出ており、北の空のwaveも試したいと思うが、Class-C のエリアが近いのでwaveはあきらめ。

15:30頃から雲が発生し始めたので、西のエリアの探索
北側、西側の制限空域でのリフトサーチとコースへの使い方を研究(結果北側は制限が多く、使いづらいと感じた、が翌々日のフライトであまり既成概念を持ってしまうのも良くないことに気がつきました)
video


6/23(金)非公式練習日 day3
この日からオーストラリアの2機含めて3機がフライト





























西風強め、滑走路にクロスウインド。トップは1800m(対地1200-1300m)で高くないが、クラウドストリートが良好。ストリートをドルフィンでテストをプラン。
当初西へ行きましたが30km先は上層が覆われてしまったので、プラン変更でまた東へ。東行きはテールウインドですばらしいストリートでしたが、雲が崩れ始めてきたタイミングで西に戻りました。崩れるストリートの選択の練習になりました。雲の選択がとても良くなってきたと思います。ストリート下のスネーキング、悪い雲、悪い発達に入ってしまったときのディシジョンチェンジ判断などです。

また、この日は上空で右翼のバグワイパーが壊れました。降りてから分かりましたが、原因は右翼のバグワイパーのケーブルが短く、まだ終端に達していないと思い、バグワイパーを伸ばしていたところ、終端まで来てしまい、勢いでリベットが飛び、壊れました。
リベットが飛んでしまったバグワイパー
右翼のバグワイパーケーブル 延長翼の中央くらいまでの長さ
壊れた右翼側のケーブルを最大に伸ばしたい状態。
中央翼端までのケーブル長が無いので、
ワイパーを伸ばす際にブレーキをかけずに
伸ばしすぎたことがリベットが飛んだ原因





























着陸後、スペアのバグワイパーに交換しました。丁度 Gabor に教えてもらった方法が役立ちました。バグワイパートラブルは初めての経験でしたので練習期間中にちょうど良い練習になりました。


6/24(土)非公式練習日 day4 練習最終日
250度10-13m/s、積雲がブルーアウトし、完全ブルーコンディション
この日は15機ほどがフライト。
非公式練習日ですがロガーのENL(エンジンノイズ)チェックもしてくれるとのことなのでエンジンチェックも行いました。





























・wave day
この日はwave day になりました。西に15kmほどのところにスタートポイントが設定されましたが、近づくとリフトが少なく、遭遇してもすぐに無くなってしまう、まるでローターサーマルのような荒れ具合。地上のダム湖の湖面を観察すると明らかにニュージーランドで見た、湖面をローターが打ち付けているときの波の立ち方をしています(ソアリングエンジンvol1, vol2 参照)。
やれやれどうしたらよいものやら、この日はソリューションが見つかりませんでした。

OLCにアップしていた他のパイロット1, 2のトレースを見ると、15kmほど北にずらすと、西の山の陰から離れることができ、もう一つの丘からはwaveが発生していたようで、waveで上限のFL95まで上昇していました。前々日のフライトで北側のエリアは空域制限的に使いづらいと考えてしまい、避ける意識が出来てしまったことが裏目になりました。これまた一つ勉強になりました。どんなときも可能性は追求してみる必要があります。

waveコンディションでの飛び方が一つ勉強になりました。

・buwiper 修理不具合
フライトの中で前日修理したバグワイパーを動かしたところまったく動きません!これは対処しないとと思い、この日は2時間ほどで一度着陸しました。
着陸して動作確認してみたところ、バグワイパーのスプリングの動きが悪く、うまく開いていないことが分かりましたので、スプリングに潤滑油をスプレーして、開度を確認したところうまく動いているようでしたので、再度フライトをリクエストして上空でテスト、うまくいきました。バグワイパーの直し方が一つ勉強になりました。(今まであまりバグワイパーの不具合に遭遇したことがありませんでした)
左の正常なバグワイパー
右の交換したバグワイパー 
根元のスプリングが弱く開度が狭い


























練習期間の纏め
・好条件に恵まれて、自分の練習を久しぶりに集中して出来ました。空気を感じることとハンドリングの感覚が戻ってきたのがとても嬉しいです。

練習期間にやり残したこと
・他機との上がりの比較
 回復してきた感覚が他機と比較できるレベルか、一度事前に試したかったのですが、今回はチャンスに恵まれませんでした。

・スタートポイントの調査
 今大会はスタートポイントが滑走路から10km以遠に設定されているのが複数あります。スタート前に上がりづらい、トップが低いコンディションの際にどのポイントでクライムして以下に早くスタートポイントに近づくか。練習期間中のタスク設定が漏れていました。





パイロット 丸山

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