2014/06/04

丸山が世界選手権で乗る “ ASG29E ” はこんな機体

ご声援、ご支援ありがとうございます!

ASG29E と 丸山。5月のポーランドナショナル大会にて。(撮影:STYLUS 1)



みなさんこんにちは。広報班です。

5月30日より始めたクラウドファンディングでは予想を超えるペースでご支援の申し込みをいただいております。

本当にありがとうございます!

何よりもパイロットの丸山自身が一番驚いており、
初日の夜は興奮して寝られなかったそうです。

実際のところ、ひとりの人間がおおやけにプロデュースされ、多くの人から支援を受ける、という機会はなかなかないことかも知れません。でも、その原動力となるチームを作り出したのは丸山とチームリーダーの赤石自身。我々チームは彼らの夢に自分の夢を乗せ、日々活動しているだけです。

そして我々チームが丸山の乗るグライダーだとしたら、
皆さんからいただいている風は紛れもなく「上昇気流」です。

その気流に上手く乗り、続く7月の世界大会で満足の行く成果を手に入れたいものです。
「それはパイロットと私たちチームの総合力にかかっているのだ!」
と、あらためて気を引き締めています。

どうか今後とも TEAM MARU の活動にご声援よろしくお願いします。


丸山が世界選手権で乗るグライダー


さて今日は実際に世界大会でお借りする予定の機体のご紹介をしたいと思います。
今のところベルギーの個人オーナーにお借りしてドイツ経由で1100km の陸送を経てポーランドへ運ぶ予定です。

アレキサンダー・シュライハー式 ASG29 (出展:http://www.alexander-schleicher.de/)

グライダーの名前は アレキサンダー・シュライハー ASG29 といいます。

グライダー発祥の国ドイツはアレキサンダーシュライハー社製の高性能機で、リリースから9年が経とうとしていますが現在でも非常に人気の高い機体です。それだけ信頼が熟成されている機体ともいえます。

丸山が参戦する18mクラスのエントリーリストを見ても48人中28人、実に58%のパイロットがこの機体です。つまり勝ちを狙いに行ける機体でもあるわけです。ただしF1などと違ってグライダーはコンストラクター(機体)の優劣を争うしくみはありません。性能の違うグライダーに対し、機体の優劣を相殺する係数が定められており、あくまでパイロット技量の比較がメインになるように運営されています。

シュライハーASG29 (出展:http://www.alexander-schleicher.de/)


全長は約6.6m、全幅は15mまたは18m。翼端のパーツを交換することで翼の長さを変えられます。昨夏のヨーロッパ選手権で丸山が使った シュンプヒルト社 の ディスカス2cT も同じように翼端交換式でしたがあの時は15mクラスでの参戦。今回の世界戦では18mクラスというさらに高性能なクラスに挑戦するので、参戦パイロットの技量も自ずと高いものになることが予想されます。

ASG29の感想を丸山に求めると「基本性能が高く、クセがなく扱い易い。ひとつの性能がトンがっているというより総合性能に優れるタイプ」とのこと。

とはいえこれは競技機に慣れたパイロットのコメントです。クルマに例えればF1とまでは言いませんがシングルシーターのスーパーフォーミュラクラスの機体ですので、スティック操作や姿勢変化のキレ味は練習機と全く違います。正直、初ソロに出たばかりの練習生が安全に離着陸させられるような機体ではありません。

ただ、これでは乗ったことのない私たちには一向に想像がつかないので、その性能の指標となる数字をひとつ挙げておきましょう。

それは「最良滑空比」です。

滑空比とは「沈下距離に対する前進距離の比」のことです。
分かり易く言えば「1m降下する間に何m前に進むことができるか」という数字です。

これは航空機用語でいうところの「揚抗比」の値と等しく
揚抗比は英語で L/D(エルバイディー)Lift to Drag ratio といいます。
そしてグライダーのカタログには BEST L/D が記されていますから
この数字をそのまま「1m降下する間に前進できる距離」に読み替えることができます。

いろいろ調べますと空を飛ぶ乗り物の一般的な滑空比はこんな感じだそうです

パラグライダー:7~10前後
ハングライダー:13~15前後
シャンボジェットなどの旅客機:17~18前後
セスナやゼロ戦:7前後
F4ファントムなどのジェット戦闘機:8.6くらい

ついでに言うとトンビなどの鳥は翼を広げた状態で10~15くらいあるのだそうです。

そして私が学生時代に乗っていた練習機 ASK2133.5、昔ながらの鋼管フレーム+羽布張りのASK13ですら28ありましたから、他の乗り物に比べいかにグライダーの滑空比が優れているかわかります。

手前がASK13、奥がASK21。25年前の学生時代の訓練より。機体班の丸山は一番手前黒シャツの機体押し。






そして丸山が乗るASG29 の最良滑空比は…なんと「50~52」です。
1m降下するのに50m進めるわけですから、
高度が1,000mあれば50km先へ進むことができるワケです。

まさに空を滑る飛行機。滑空機とは素晴らしい訳語を与えたものです。

ASG29 (出展:http://www.alexander-schleicher.de/)

いかがでしょう? 丸山が世界戦で使うグライダーの性能の一端がお分かりいただけたでしょうか。でも競技ではスタートからゴールまでの平均時速、つまるところタイム争いになります。そうすると時速100km前後のゆったりした最良滑空比で飛んでばかりいては勝てません。

その辺りがパイロットのウデの見せ所となるワケですが、
その話はまたいずれいたしましょう。


エンジン付きのグライダーを借りるワケ


丸山の機体は正確には ASG29E といいます。

最後の E はエンジンを搭載したモデルであることを表しています。18馬力程度のエンジンですのでグライダーを離陸させられるほどのパワーはありません。でも上空で巡航させることができます。徐々にですが高度を稼ぐことも可能です。

ポーランドナショナルで借りたASG29E(撮影 STYLUS 1)
本来はクロスカントリーフライト時に上昇気流が無くなってしまった場合に不時着を避けるために使うもので、競技でこれを使ってしまうとその時点でアウトランディング扱い、つまりゴールに辿り着けずどこかの畑や野原に降りてしまった状態…になってしまいます。

ではなぜ丸山はエンジン付きの機体を選ぶのか?

答えはひとつ。不慣れな地でアウトランディングするリスクを避けるためです。

アウトランディングすれば借りている機体を損傷させてしまうかもしれません。それに、救出に向かう地上班はそれこそ不慣れな地でハウストレーラーを牽引しながら右往左往することになります。日が落ちてしまうかもしれませんし、グライダーを畑でバラして道路に引き上げねばならないかもしれません。それにはそれなりに人手が必要になります。でもいつもいつも、そんな多人数のチームを組むワケにもいかないのです。

ポーランドナショナルで借りたASG29Eとハウストレーラー(撮影 STYLUS 1)


競技ですからみんなギリギリのところで攻めています。予測も付かない天候の悪化が起きたりする場合もあれば、明らかに気象条件を超えた長さのタスクをセットされ、全機アウトランディング、なんてことも実際に起きてしまいます。そんな時、エンジンのないチームは「すわスクランブルだ!」とばかりにハウストレーラーを牽引して救出に出発します。

ほとんどが畑などに着陸するワケですが、着陸時の具合によってはランディングギアの組みバラし等の整備が必要になる場合があります。程度によってはその後の競技を欠場せねばならなくなる可能性も否定できません。

これではいくらパイロットが「前向き」で「起きたことにクヨクヨしない」人種とはいえ、そのプレッシャーが競技に影響しないわけがありません。日本なら電話1本で仲間を集めることもできるでしょうが、そこはアウェイなのです。

アウトランディングしないにしても、低空になれば心臓バクバクです。そんなときも、エンジンを背負っていれば、最後までサーマル探索に集中できます。

丸山が常々言っているとおり、グライダーはとてもメンタルなスポーツなのでこういった後顧の憂いを地上で断ち切ってしまうことが上空での「全力トライ」への近道になるはずです。

ASG29E (出展:http://www.alexander-schleicher.de/)


逆に動力の存在によって気持ち的に「甘えが生じてしまう」とか機体が重くなって条件の厳しい時の上昇効率が悪くなる、というデメリットも生まれます。

どちらがいいか、よく考えた末の選択ですがこの方法はアウェイで機体を借りねばならぬ小さなチームには合っていると思います。


グライダーの競技は長く、借りる期間はもっと長い


世界選手権の競技は正味2週間です。

ただその前の公式練習やベルギーからの運搬日を含めると、私たちは機体を約3週間お借りせねばなりません。その予算と移動にまつわる費用は為替レートにもよりますが80万円前後と予想されています。私たちはその額面を今回クラウドファンディングとして皆さんからのご支援を仰ぐことにいたしました(※100万円のうち17%はクラウドファンディングの手数料。そして 8% の消費税)。

ASG29 (出展:http://www.alexander-schleicher.de/)


挑戦するからには勝てる機体で、そしてチームが安心して運用できる機体で臨みたい!
そしてこの成功を次の世代に! さらにはグライダーの認知促進を!

それが TEAM MARU のスタンスです。

もしこの趣旨にご賛同いただけるようであれば、
ぜひごご支援、ご声援よろしくお願い申し上げます。

クラウドファンディングの詳細はこちらをご覧ください↓


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