2016/05/07

2015 ハンガリー ヨーロッパ選手権 後半 パイロットレポート

 ヨーロッパ選手権後半のレポートです。(JSA インフォメーション 310号掲載予定)

Task6 7/20
415km レーシングタスク
スタート前に一人で強いリフトを見つけ、高いポジションを確保できました。
積雲予報でしたが実際はブルーコンディションになったので、ガグルと一緒のスタートをプランしていたが、結果的にはガグルを待ちすぎてしまってスタートが遅れる大失敗になりました。(レーシングタスクなので、遅いスタートは失敗。早めのスタートが必須)見えてないもう一つのガグルは私がいたガグルより8-9分前にすでにスタートしていてすでに見失っており、一緒にスタートしたガグルが最終スタートになっていました。

ガグルとスタートしたつもりが、スタートしたとたんにガグルを見失うことになりました。スタートライン直後の目の前の雲を凝視してしまい、雲が第一レグからずれていることに気がつかず、意図せずオフトラック。結果、第一レグからかなりはずれた方向に進んでしまいました。とはいえ、第一旋回点 で再度合流できたので、この時点では、まだ遅れてはいないのですが、後から思えばこの時点でペースがおかしいことを認識するべきでした。

第二レグに入り、ペースが悪くなります。ブルーコンディションが続き、 1100mの逆転層から上の層に上がれない状態が続き、弱いのをひっかけて前に進むスローペースになりました。この先は川を渡るエリアになります。川のエリアはさらにリフトが弱まるはずなので、ドナウ川を渡る前に逆転層の上に上がりきりたいのですが、強いのがヒットできない状態が続きます。ヒットできず低いままで3機ドナウ川を渡る羽目になり、ドナウを渡ってすぐに最初のピンチに。「対流層が低いので、リフト間隔は狭いはず」と信じて探して探してなんとかリカバリー。リカバリーが遅れたことで最後のガグルからも遅れてしまい、この後はブルーでの一人旅となりました。遅れてはいるものの、今回の自分の上達具合から言えば、この状態でも一人で飛べるはず、と信じて前進を続けます。
しかし、その後も逆転層を上に抜けられず、4回も低い状態になりますが、自分でリカバリーできたことに変に自信を持ちすぎたのがこのあとの失敗につながったと思います。
ようやく逆転層を抜けて、上の対流層に上がれたのは第二レグの後半。16:20。やっと逆転層は抜けたが、早くもコンディションが弱まってきているのを感じて居ました。第二旋回点 手前の飛行場を一応と思って上空からチェック。(後から思えばこの時点で思考がアウトランディングに向かっていました。「思考は現実化する」です)。第二旋回点 をクリアして、第三レグに入るも対流がさらに弱まってしまっています。600mの低空で北風、湖の縁からトリガーされる+0.1m/s のサーマルでもがいてみたものの、効率的に上がらないので、湖の風上の縁のリフトソースをトレースしながら「次を探す」ことにトライします。ですが、結果的に+0.1m/s から動いてしまったのが失敗でした、0.1m/sから次のリフトの上がってくるのを待つべきでした。高度がさらに下がってしまい、エンジンリスタートを決意(この時点で、エンジンをリスタートした地点までのアウトランディング扱いになります)。アウトランディングフィールドをチェックして、エンジン展開ボタンを押しますが、警告音が鳴り響き、背中に収納されているエンジンが所定の位置に立ち上がらないトラブル!再度試してみるが、結果は変わりません。頭を切り換えて、第二旋回点 に向かう途中にチェックしていた飛行場をGPSで確認すると、視認は出来ないが、届くことが確認できたのでダイレクトベースへ向かい、そのままオペレーションしていない飛行場に無事ランディングとなりました。地上で点検してみるとエンジンは普通に立ち上がりました。

着陸後はクルーのGaborへ電話。地図で飛行場名を確認するとそこはSzatymaz 飛行場とのこと、Gabor の知り合いの飛行場で、電話でエアリトリブの手配をしてくれました。ハンガーに歩いて行ったらすでに話が付いていてハンガーから曳航機を出そうとしているところでした。デキるクルーが居てほんと助かりました。

この日は飛行距離250km、デイリーは32位相当(デイリーでビリ)、総合も前日までの13位相当から24位相当へ急降下。この日は第二レグ以降がやることなすこと上手く行かずでした。ログを確認すると8分前にスタートした第1集団は皆1100mの逆転層の上に上がり、1200m-1800m でクルーズ、平均速度95-100km/h でフィニッシュしています。完全ブルーの日なので平均的な速度です。私のスタートした第2集団の12機は4機だけ逆転層の上に出てフィニッシュしましたが、他の8機は逆転層の下を這いずり回ることになり、アウトランディングになりました。とはいえ、350-400km 程度は飛んでおり、あと100kmは飛ぶべき(飛べるはず)でした。ブルーで一人取り残されてしまってからのリスクマネージメントに問題がありました。上手くいっているときに調子に乗ってしまういつもの失敗パターンにはいってしまいました。
まだ大会は半分残っています。エアリトリブのおかげで遅くならずに済みましたので、いつも通り、ログを比較し、失敗のポイントを洗い出し、翌日に向けて頭の中を再整理しました。

この日はずいぶん多くの方に facebook の応援メッセージを頂きました、ありがとうございました。


Task7 07/21
441km レーシングタスク
積雲コンディション。前日の反省を生かして、ガグルに引っ張られてのレイトスタートにならないよう、自分の判断でアーリースタートして、途中でガグルに飲み込まれてフィニッシュする作戦に。
スタート体制に入ったところで、ガグルを待たずに単独スタート。積雲コンディションのレーシングタスクなので、飛ぶルートは限られます。あとから別のガグルが必ず同じコースを来ると信じてのスタートです。が、後ろからグライダーがなかなかやって来ません。この時、後続のガグルは10分後にスタートしていました。追いつかれないと言うことは自分の平均速度がそれなりに出ているということと信じます。
この日から地上クルーからの無線で得られる情報が増えるようになっていました。クルーはSPOT(衛星回線を利用した位置情報サービス)で私のポジションを確認し、他機のFlarmから得られるポジション情報をOGNで確認して、後続スタート機のルート取り、先行機のルート取りをレポートするようになっていたのです(クルーも日々進化しています)。
第二レグ で川を渡った後で想定通り後続のガグルにキャッチされました。このガグルとともに 第二旋回点 へ。第二レグ後半はストリートを上手く使えて良い感じで飛べました。
第三レグ 雲が少なくなり始めます。ここでガグルはオンコースより南側を選択しました。前方の状態からはオンコースを飛ぶので良いのではと思いましたが、ガグルをフォローして南を選択。弱いところで下げてしまい平均速度が落ちてしまいました。後続のガグルはオンコース上をうまく飛んできて、ここで追い抜かれます。そのまま抜かれたガグルを追いかけてフィニッシュ。

123.26km/h 803点 デイリー23位相当 得点率80.3% 総合は24位変わらず。順位は低いが得点率的には悪くない結果です。前日の失敗からこの日は保守的に飛んだので明日はもうちょっとチャレンジをすることにしました。


Task8 7/22
558km レーシングタスク
今日も長いタスク。前日と同じくアーリースタート作戦をプラン。昨日と異なるのは第一 第二レグがブルーで難しいコンディションの中での一人旅になりそうなこと。
ロングタスクなので、リフトの十分でない早い時間の曳航になり、離脱後300mまで下げてしまうのをなんとか耐えて、上げ直しました。スタートラインオープンと供にスタート。折り返しの第二レグ の途中でレイトスタート組のガグルを発見、自分より30分以上レイトスタートしている模様です。絶対アーリースタートが上手く行くはずと信じて前進します。第二レグ で川を渡ったところでようやく積雲発生しました。ここで7分後にスタートのハンガリーのペアにキャッチされました。こんな日は地元勢が強いはず。ここからはハンガリーを追いかけて飛ぶことにしました。
第二レグ後半は積雲エリアがオンコースからかなりずれていますが、雲を求めてオフトラックして進みます。
第三レグは積雲がなくなりほぼブルーでたまに積雲。熱射型積雲なので、本当に強いリフトの結果のみ雲になるので、雲は限られ、雲から雲への距離が長く、グライドが長くなり、雲底は高くなります。この日は3m/sで2200m雲底まで上がって60kmグライドして次の雲、再び3m/sで2500m雲底まで上昇、70kmのグライド、と長いグライドになりました。しかもタイミングが合わないと上昇気流が強いときの雲の下に入れません。先生との練習でのマクレディ高度別速度選択を思い出しながら進みます。
第四レグもブルー、たまに積雲。積雲の下に到着するタイミングと、積雲発達のタイミングが合わなくなってきて、雲の下に到着するのになかなか強いのが拾えません。1000m以下に下げてからは慎重にグライド、600mまで落としてようやく 1.2m/s であがれました。こんなときでもチャンピオンKawa様は常に2m/s以上をキープしています。32分後にスタートしているにもかかわらず、ファイナルグライドのためのラストサーマルで上昇中に追い抜かれました。
111.3km/h デイリー13位相当 805点。総合は21位まで回復。レイトスタート組はKawa様を含めて30分以上遅くスタートしましたが軒並みフィニッシュが遅れ、アウトランディングでスコアを下げた人が多かったため、今日の私はスコアの割にはデイリーポジションが良くなりました。(Kawa 様の4機のガグル(PL,F2,LU)だけがぶっちぎりで早かった)。あとから見直してみると私の平均上昇率 1.8m/s に対して Kawa 様は 2.1m/s、大きな差があります。いつもなら大会前半からトップを独走するKawa様、この日でついに総合トップになりました。



図 4 ブルーで飛ぶベルギーのASG29 (Photo by Sebastian Kawa)


Task9 7/23
3:00  エリアタスク
ここまで競技成立7日中5日レーシングタスクが課されたので、残りの二日間はおそらくAAT の日になるはずです。(ルール上エリアタスクとレーシングタスクが 50% づつになるようにされています)。今日も早めのスタートを心がけるつもりでしたが エリアタスクだとコースの選択肢が増え、フライトするエリアが分かれやすくなり、ガグルが分散します。ガグルを利用して早く飛ぶためにも、今日はガグルスタートを心がける事にプラン変更しました。
この日もスタート前はリフトが弱く、上がりづらく、高度がなかなかとれない日でした。高気圧が毎日続くと逆転層が強くなりますので、弱いリフトは途中の逆転層に引っかかって、上の層までリフトがつながりません。この日は1500mに逆転層があり、何機かは上の層に上がっているのが見えるので、上がれるリフトがあるはずなのですが、なかなか突き抜けられる強さのリフトが見つけられません。強いリフトのマーカーになる積雲も少なく、タイミングが合いません。少ないチャンスをものにした機体は一機、また一機と1800mくらいまで上げはじめました。あそこまで上がらないことにはスタートできません。まだスタートまでは時間があるので、焦らず、なんども、いくつもの積雲の下を試して、ようやく上まで抜ける強い積雲をキャッチして1900mまで上昇できました。丁度、上に一機、同高度にイタリアの2機で4機のガグルが形成されました。イタリアの2機が上がりきったところでスタートラインに向かうのに合わせてスタートラインへ私も移動します。その前方には先ほど上に居た機体ともう一機が先行スタートしているのがみえます。上がりづらいコンディションの中、うまくガグルでスタートできました。先行機はイギリスのペアでした。
この日のタスクは第一 エリアは川の東を北上するエリア、2nd エリアは南東、3rd エリアはさらに東へ、と設定されました。風は南から南東寄りなので、南北のクラウドストリートを使うことと、川の風上の東側は悪くないはずと予想できたので、まずはスタート後、ドナウ川を渡って、川の東を北上することをプランしましたが、ガグルもプラン通りのルートを行くようです。



図 5 Task9 7/23
AATは図5のように旋回点(エリア)が広く設定されるので、エリアのリフトの分布を判断して、どの旋回点(エリア)をどこまで飛ぶのか、あるいは奥まで行かずに早めにターンするのか、といった判断が重要になるタスクです。

ちょうど第一エリアは目論見通り風と平行に南北のストリートが発達しました。コンディション良好なため、第一エリアを北側一杯までストリートを北上してからターンします。
第二レグは同じストリートを南下します。北上したときよりストリートは弱ってきていて、ちょうど良いスタートタイミングでストリートが使えたようです。
第二エリアに入りましたが、先はブルーエリアです。ガグルをフォローしながら「第二エリアをどこまで南下するのか」判断基準を考えていたところ、ガグルは思ったより早いところで第三エリアに向けてターンを始めました。次に行く第三エリアが設定されている東を観察すると、南下しすぎると第三レグ がブルーエリアになってしまうので、積雲が残っている早めのタイミングでの進路変更をガグルは決めたと思われ、「なるほどね~」と思いながらガグルをフォローして第三エリア へ。ターンした直後の積雲で上がるところで遅れがでてしまい、イギリス、イタリアに先を行かれ、ここからは一人旅になりました。第三エリアはブルーなので、フライトコンピューターのtDelta(設定された3時間のタスクタイムに対して、フィニッシュするまでの差分)が +7分になるところまで飛んだところでエリアをターンして最終旋回点に向かいます。
最終レグは条件が思ったよりも強すぎました。マクレディーセット値を+2.5 まであげて、残り80kmを2400mから、200km/h L/D=30でファイナルグライドに入れます。3時間のエリアタスクを 3時間43秒 で+43秒でフィニッシュ。128.2km/h 14位相当、85.7%
教科書に書いてあるとおり、ファイナルエリアをターンするのは設定タイムの+10分にしないと、コンディションが良いと今回の様に速度が出すぎて設定タイムを割り込むアンダータイムになってしまうので、もうちょっと余裕を持たせたエリア選択が必要なことが改めて実感できました。

Kawa様は25分後のスタート。25分後にフィニッシュした時は最終レグの対流が強すぎてシャワーになっていたようです(図6)。138.0km/h で昨日に続いてデイリートップ。

競技中はサンダーストームの影響は出ませんでしたが、夜のパーティの最中にものすごい雨で近隣エリアは停電になりました。


図 6 東からファイナルグライド 川の向こうに滑走路 前方のシャワーを超える必要あり photo by Sebastian Kawa

Task10 7/24
最終日 2:30  エリアタスク
北へいって、南下して、東に行く、昨日と同じようなエリアのタスク。昨日との違いは昨夜のサンダーストームの雨がドナウ川の西側エリアに多いとのことで、西側エリアはリフトが弱いことが予想されてます。ドナウ川の東側はほとんど雨が降っていないとのことで、昨日同様の強いコンディションが期待されます。20m, open クラスは東へのタスクでしたが、18mだけ最初のレグで川の西側を飛ぶタスク。空を観察すると明らかに対流は弱そうに見え、苦労しそうな日です。

前日のサンダーストームの影響で地面が湿っているのと、風が東寄りで滑空場周辺は川の風下になり、なかなか気温が上がらず、曳航開始はさらに遅れました。14:00に曳航スタート。20m , open は競技時間を短く変更しましたが、18m クラスは2時間30分のまま変更なしです。
曳航は開始したものの、リフトは弱く、あがりません。特にスタートポイント付近が全く上がりません。セクサールドの街でひたすら弱いリフトで大ガグル大会でスタート待ちです。2:30 AAT なので、17:00にラストクライムしてのフィニッシュを考えると、15:00 にはスタートしたいところです。が、他の機体は弱い中でも上がっていきますが、その高度まで全然上がりきれない状態が続きます。セオリーは上がりきってのスタートですが、上がりきることに固執すると、ガグルに置いていかれて一人でラストスタートになってしまいそうです。弱いコンディションなので、リスクマネージメントの観点から、ガグルと飛ぶ事は必須です。タスクをガグルと飛ぶために、スタートの作戦を変更しました。低いまま先にスタートラインを通過しておき、第一レグ上で上昇して、次のガグルがスタートして来たところで合流して飛ぶ作戦です。これだけコンディションが弱ければそれほど速度レースにならないはずなので、ガグルと飛ぶことで確実にフィニッシュできる作戦に変更したのです。

図 7 スタート前のガグル さて何機いるでしょう Photo by Sebastian Kawa

これが見事に成功しました。スタート高度950m でとりあえず単独スタート、高いところをスタートしていくグライダーが5機ほど見えますが、深追いせず、自分のペースでもう一度上げ直そう、とスイッチを切り替えたところ、街の上でラッキーな1.2m/sで1300mまで上昇できました。さらなるラッキーは30kmグライドしたところで先ほど高いところを先行スタートしていったガグルの上に追いつく展開になりました。(先行したガグルはまったく強いリフトが拾えてないと言うことです)。ガグルリーダーは総合2位のAndy様です!このままコンディションの弱い第一, 第二レグはガグルと飛び、コンディションの良くなってきた第三レグ でガグルと分かれて最終エリアへ。この日は tDelta 5分でターンしてみましたが、昨日と同じくラスト 70km のところで2.5m/s がつかめ、最終レグは予想よりコンディションが強すぎて、2時間29分20秒と40秒のアンダータイムでのフィニッシュとなりました。

前半が遅かったので良いフライトではなかったと思いましたが、結果は思ったより良くデイリー10位相当、得点率75.7%。2nd エリアから3rd エリアへのコースチェンジを鋭角にできたのが、速度を(距離を)伸ばせた要因だったようです。

デイリーを取ったチェコは勝負をかけてきました。さらにレイトスタートで平均速度を上げ、Andy様を追い抜き、総合2位に逆転。Kawa様はトップ維持のためそこまで飛ばさず手堅いフライトで優勝を決めました。


全体まとめ

・総合は20位相当、得点率81.2% になりました。
・中盤まで総合15位が見えていましたが、task6 の失敗で大きく後退しました。とはいえ、15位が見えるようになってきたのは大きな前進でした。
・春の先生との合宿効果は絶大で、「平野を早く飛ぶOSに入れ替える」といった目標は一つ前進が見られたと思います。クライム、ルート選択は良くなってきたと思います。
・グライドはまだ改善が必要です。グライドをどうやって伸ばすか、ここはまだ改善方法が見えていません。
・世界チャンピオン10回のSebastian Kawa様について。2013年のポーランドでのヨーロッパ選手権に引き続き、今回2回目の同じ競技会・同じクラスで飛ぶことができ、間近でフライトを観察することができました。いつもならレース開始時点からトップを独走するKawa様ですが、今大会前半は視程が悪く、遠くが見えづらいコンディションで一人だとかっ飛ばせないと前半はぼやいていました。2週目に入ってからはエンジン全開で、Task8で総合首位になり、Task9 で引き離し、Task10 はトップを維持する盤石のフライトでした。2位と 3% 差で2013年大会と同様に圧倒的な強さを見せました。

図 8 18mクラス 優勝 Sebastian Kawa (ポーランド)2位 Roman Mracek(チェコ) 3位 Andrew Davis(イギリス)

2016/05/02

The Soaring Engine 日本語版 発刊!



G Daleさんの The Soaring Engine が滝川の日口さんにより翻訳され、日本語で発刊されました!
Amazon の電子書籍(キンドル) での発売です。
購入はこちらのリンクから。
1,080円です。

電子書籍リーダーのKindle をお持ちの方はそちらでも読めますが、図がカラーですので、スマートフォンやタブレット(iPad , Android)の kindleアプリで読むのがオススメです。PC/Mac でも Kindle アプリは動きますので、パソコン上で読むことも出来ます。
翻訳は滝川の日口さんが行われました。日本語監修で TEAM MARU 広報担当の河村さんも一部協力させて頂いています。

G さんはイギリス人、南半球の夏シーズンはニュージーランド オマラマでのインストラクターをしているので、お会いしたことのある方も多いのではと思います。北半球の夏シーズンはイギリスでインストラクターをしています。イギリス代表としてグライダー世界選手権クラブクラスでも4位に入ったパイロットです。

英語版を以前私のブログの推薦図書のページでも紹介して推薦していましたが、イラストが非常にシンプルにまとめられています。Volume1 ではリッジソアリングとサーマルソアリングについて書かれています。今後 volume2, volume3 が予定されているとのことでこれまた楽しみです。

ソアリングにおいて大事なことは空気の流線のイメージを自分の中に持てることです。このためには空気の流線のイラストのイメージを自分の中に持ち、遭遇したリフトと常に比較してみることです。この本ではサーマルソアリングの前にリッジソアリングについて書かれています。本の中でも言及されていますが、サーマルソアリングに比べると、リッジソアリングは流線をイメージしやすいので、空気の流れを勉強するのに適していると書いていますが、私もそう思います。
平野のみで飛んでいるパイロットは丘からのリフトを観察すると、より空気の流れがわかりやすくなると思います。

サーマルソアリングの際も、もっともっと、空気の流れをイメージしてみましょう。限られたエリアでいつも同じところを飛んでいると、リフトの発生ポイントがパターン化され、リフトをスポットとして捉えすぎることで、空気の観察をすることなくソアリングが出来てしまうことで、本来の空を観察するインセンティブが働かなくなります。
目標設定を変える(より広いエリアを飛ぶ、より空を観察することが必要な目標設定)にすることで、この状況を変えることが出来るはずです。
この本はその手助けとなると思います。


少しだけ内容を紹介します。
目次

目次



サーマルに入ったときの感覚。私もこれと同じ考え方です。

サーマル周辺のウインドシア

電車の中でもつねに本を読み、空気の流れをイメージし続けてみましょう。

2016/04/30

2015年春 再び Centka 氏とトレーニング

(JSA インフォメーション 308号からの抜粋記事)
2015年は日本で春の天気が恵まれず、フライトの練習は昨年に続きポーランド合宿がメインになりました。春の連休を利用し、世界チャンピオンのセントカ先生に再度教えを請うことにしたのです。

10日間の合宿で6日間のクロスカントリーフライトトレーニング、4日間はみっちりと座学、ブリーフィングで、今年も先生からは連日の厳しい指導をいただきました。

昨年に引き続き、平野を早く飛ぶためのOSに入れ替える(自分のフライトスタイルを変える)ための特訓を行いました。日本とは地形が異なるポーランドやハンガリーに合わせ、頭と体の新しい回路をつなぎ替える作業です。反復トレーニングを繰り返して、時間をかけて体が考えずに反応できるようにする必要があります。2014年の合宿は平野を早く飛ぶための第一回トレーニングで、少しやり方が見えてきたところでしたが、2014年の世界選手権の結果を分析してもらったところ、他のパイロットと比較してサーマル中での上がりが悪く、特にコンディションの良い日のグライドが悪いことが課題として整理できました。今年はさらなる改善を求めて先生に特訓をお願いしました。昨年度は選択肢を整理することで、考えずに体で反応できることの重要性を意識しましたが、今年は昨年度よりもさらに考えずにオートマチックに反応できることを目指しました。反復トレーニングによる刷り込みで、ラニーバッシャム(1976年モントリオールオリンピック射撃競技の金メダリスト)の「メンタルマネージメント」に書かれている「下意識」の強化を目指しました。
 
図 2 今年も熱血指導頂いたセントカ先生

・マクレディ理論 マクレディセットに対する高度(ハイトバンド)にあわせた速度と選択するするリフトの基準
1970年代に考えられたマクレディ理論は空気の上下動に合わせて速度を変化させますが、理論を追いかけすぎると、ピッチ変化に伴うエネルギーロスが大きいので逆に非効率になると言われていました。90年代に平均上昇率の半分程度のマクレディー値に速度をセットして、一定スピードで飛ぶ「ボックススピード理論」が紹介されました。キープハイを心がける飛び方(日本のようなアウトランディングしづらい環境での飛び方)ですとこの飛び方は良いのですが、現代の高翼面荷重で滑空比が大きく、空気抵抗の少ない18mクラスの機体でアウトランディング可能な平野を早く飛ぶという観点ですと最適では無いようです。
先生の飛び方は基本的にはマクレディ理論で飛んでいます。マクレディ設定値をタスクフライト中の平均上昇率、ないしは2/3程度に設定した速度で飛びます(LX9000だとタスクフライト全体の平均上昇率が表示できます)。図3のような形で高度に応じてマクレディ設定値は変えず、選択するリフトの強さと速度を変えています。高度の低いところ(600m以下)は基本使わず、600m~上昇気流の上限までの高度を 1/3 ずつのレンジに分けて、高いところではマクレディセット値以上のサーマルでないと回らない、速度もマクレディセット値以上で飛び、高度が下がってきたらマクレディセット値以下の速度で飛び、マクレディセット値以下の強さのサーマルでも回る、というものです。
頭では理解できますが、体がそのまま反応するように、すり込みます。

・前方の状況にあわせたこまめなマクレディ設定
マクレディセット値は前方の状況が変化するとそれにあわせて設定値を変更しています。状況が良くなれば設定値を大きくし、状況が悪くなるようであれば設定値を下げます。頭では分かっていても、状況の変化に対して設定速度の選択がどうしても遅れてしまうので、体が考えずに設定値の変更と、それに応じた速度セットの対応ができるようになるまで、反復トレーニングでのすり込みをしました。

・前方の状況、高度にあわせた雲、ターンの選択
私の悪い癖の一つとして、前方に雲があると高度にかかわらず回ってしまう、というのがあります。先ほどの図3から言えば、高い高度であれば、マクレディ値以上の雲でない限りは回る必要はありません。平均速度をあげるには、回っている割合を減らすことです。昨年の解析からもこの傾向が裏付けられます。前の雲だけでは無く、その先の雲、リフトの連続性を考慮して、回るのか、グライドを伸ばすのかを体で反応できるように刷り込みをします。
 
図 3 高度とマクレディ値、速度選択


・クルーズからサーマリングへの移行
フラップ機において、リフトに入った際の操作として、スティックでのズームアップが先か、フラップで減速するのか、が議論されます。先生のやり方はスティックが先です。180km/h(フラップ-2) のインターサーマルクルーズから、150km/h(フラップ-1), 125km/h(フラップ-0.5~0)  と段階的にプルアップとフラップの両方を使っていて、リフティングしているエリアに入ったときには減速は完了しています。リフトを探って、本当にロールインする(回れるだけのリフトの強さがあると確信できる)ときは、フラップは0フラップ、ロールインする100km/hまでピッチをあげ、まずトリムをセット、ターンを試みながら、ターンを確立できる段階でフラップをリフトに応じて+2までセット、もう一度トリム、その段階でLX9000の縮尺を最大縮尺まで拡大して、サーマルアシスタントを活用します。ので、左手はトリム→フラップ→トリム→LX9000の縮尺拡大、とサーマリングの段階に応じて常に移動しています。ポイントはトリムセットが先、フラップは後、だと言うことです。トリムが合っている状態だと、スティックから感じるリフトの強さ、分布状況が分かる能力が驚くほど違います。これはフラップの無い機体でも同じで、クルーズ速度からリフティングしているエリアに入り、クライム速度に移行した際に、トリムが確立して、右腕に無駄な力がかかっていないと、操縦桿から上昇気流の感じる感覚が全く違いますので、是非試してみてください。
これも考えずに体がスムーズに動くようなプログラミングです。

・Big Cu のどこを探すか、Big Cu と small thin cumuli
日本の雲と比べて異なるのは積雲の大きさです。これは複数のセル(複数のサーマルソース)から一つの積雲が構成されているためと考えられます。日本の積雲ですと一つのセルから構成されていることが多いので、サニーサイド、風上側を選択することになりますが、複数セルで構成されている大きな積雲の場合、狙うのは雲の中央、濃いところになります。ちょっと垂れ下がったウイスプがあったり、ステップがあったりするとなお良しです。ヨーロッパの大きい雲でも、午後遅い時間になってくると、日射側が良い場合が出てきます。
また、大きな積雲があると見落としがちですが、雲の中央下部、雲のすぐ脇にもフレッシュな small thin cumuli が発生しますので、めざとくこの小さいフレッシュな雲を見つけることも大事です。
また、雲底に上がってしまうと次の積雲が分からなくなるので、低いうちに 50km 先まで、地上に映る雲の影を利用して雲の連続性を見る、ターン開始時点でも一つ先(1km), 二つ先(2-3km), 三つ先(5km) の雲を見ろと言われます。

・サーチ方式 Sマニューバー、マニューバー45
大きな積雲ですと雲の直径が2-3km なんてこともあり、上記のように「濃いところ」といっても結構あるわけです。その際は積雲の下の濃いところを結構丹念に探します。S字ターンをしたり、45度ぐらいまでロールインしてから切り返したり。時には積雲の下をサーチするために90度近くオフトラックもします。タスクが決まっていて、レグが決まっていると、雲の下とはいえ、レグに対して90度ターンは無駄な気がしてしまい、スムーズなカーブを描きながら通り過ぎる感じで雲の下を探していた私には「こんなに丹念に探すの?」と思うくらい、Sターンしながら探し回るイメージです。切り返しは結構アグレッシブに切り返します。(積雲下では全体的には空気はあがっているので、アグレッシブに切り返してもロスは少なく、本当に良いところ(アベレージ3m/s以上) は限られているので、本当に良いところに行くため、探すためにアグレッシブに場所をサーチするイメージです。)

・スタートまでのチェックリスト
とくに低いうちは無駄に動き回らず、まずはとにかくリフトの上限まで上がりきります。幅10kmのスタートライン上を移動して、スタートラインから先のエリアを観察し、時には第一レグをしばらく進んでみて、スタートラインのどこからスタートするのが第一レグで最も良いラインを飛べるのかを決定し、想定するラインを飛べるように対地目標を設定して、想定通りのコースを飛べるようにします。レグのリフトの状況がスタートラインのどちらからスタートするのでも良いと判断されるのであれば、風上側のスタートラインからスタートします。その日のコンディションから予想される平均速度とタスクの距離からタスクのエンルート時間を想定し、想定フィニッシュ時間からエンルート時間を差し引いて最も遅いスタートタイムを計算しておき、スタートスロットウインドウを決定します。先生は基本アーリースタートを勧めます。
スタートは競技においては最も重要なタイミングで、考えるポイントがいくつもあります。スタートは最も機体が密集し、空中衝突が起きやすいタイミングなので、安全第一で、積雲コンディションでは他機を見えない状況にしないようにします。

・AAT(エリアタスク)でのルート選択
第一エリアはコンディションが悪くない限りはなるべく奥まで飛行します。エリアのターンは鋭角に回り、レグで蛇行しないようにすることで距離が有効に伸ばせます。レーシングタスク(フィックスタスク)に比べると、エリアタスクの方が良いエリアを選択できるので、平均速度が速くなりそうですが、経験的にはレーシングタスクの方が平均速度は速いそうです。(選択肢が多いと迷ってしまう人間の特性でしょうか)。

・always plan, revise plan !
常に次にやることのプランを持て!とはいえ、空は常に変化し続けるので、決めたプランに固執せず、常にプランをリバイスし続けます。プラン無しに次のクルーズを始めることだけはしないようにします。

・90 degree right, 90 degree, left, up , and down !.
私の良くない癖として、行き先の目標(例えば次の大きな雲)を決めてしまうと、そこだけを見てしまう癖があります。視野が20度くらいに狭まってしまい、すぐ横に新しい積雲がポップしているのに気がつかずに通り過ぎてしまったり。。LX9000フライトコンピューターには、一定間隔毎に画面上に警告を出すタイマー機能があります。10分ごとに「右90度、左90度、上下!」と自分の注意喚起をする機能を設定して、一点集中してしまっている自分への気づきをさせて、視野を広げることを心がけています。

・ロールイン時に息を止めない Relax !
集中しすぎて力を入れてしまうと、人は息を止めてしまいます。顕著なのは「このサーマルで絶対に上がらないと!」といった低くなって追い込まれた状況でのリフトへのロールイン時です。息を止めることで、筋肉が緊張し、気流のアップダウンを感じづらくなり、酸素が脳に行かなくなり、正常な判断ができなくなります。ロールイン時に歌を歌いながら(なにかをしゃべりながら)ロールインすることで息を止めてしまうことを防いで、さらに上記のLX9000 のタイマー機能で自分自身が緊張していることを気づかせています。
緊張して、ストレスのかかった状態になると、交感神経が働き、筋肉が緊張します。これを緩めるには、副交感神経を働かせることです。ゆっくりとした腹式呼吸での深呼吸が有効です。聞いた話ではフィギュアスケートでもジャンプの時に息を止めているとジャンプを失敗するそうです。

・重心位置
重心位置については多くの皆さんは出発前の確認で「許容範囲に入っていればよし、前方付近だと速度がつきやすく~」といった程度しか気にしていないと思います。重心位置は上昇気流内の上昇のしやすさ、サーマル旋回での速度コントロールに大きな影響があります。たとえばArcusでは許容重心範囲100mm - 290mmの範囲に対し、220mm-240mmの重心位置が最適とフライトマニュアルに記載があります。まずは推奨範囲に入れてみるだけで普段のハンドリングとは全く変わってきます。どの機体も最適な重心位置があるので、皆さんも是非試してみてください。

・直感に聞け、直感を育てろ
以前の私は「直感」 とは 「センス」だと思っていたので、運動センスの無い自分には直感のようなものはあまりないんだろう、と思っていました。(自分は運動センスがあまりなく、「ハンドアイコーディネーション(目で見たものをそのまま動作する)」能力が低いので、新しい動きの習得には時間がかかります。ですが最近思っているのは、このレポートでも伝えている、「根拠を持って、脳と体の回路を新しくつなぐ」ことをすることで、直感が、考えること無く自然に見えてくるようなものなのではと考えるようになってきました。
将棋の羽生善治さんの本(直感力)にも「直感は、本当に何もないところから湧き出てくるわけではない。考えて考えて、あれこれ模索した経験を前提として蓄積させておかねばならない。また、経験から直感を導き出す訓練を、日常生活の中でも行う必要がある。」とあり、この考え方に近いものを感じています。

トレーニング最終日はフライトで学んだことを実践してみよう、ということで「今日はしゃべらないからおまえの判断で飛べ」と先生から指示が出されました。5時間のフライトの間、先生は上空でメモ用紙3枚に、ほぼ10分おきにびっしりと指摘事項をメモしていました(例 15:09 1600mあるのに回る必要なし、など)。私が良い判断をしたときは後席から”Goood ! Takeshi “ と褒めてもらえるときもすこしだけありました。大部分は「No! Takeshi, no, no, this is your flight, fly with your decision !(いやいや、これはおまえのフライトだ、おまえの判断で飛べ!)」ですが、、指摘事項はその場では指摘せず、自分の判断で飛ぶことを私にさせていました(プロフェッショナルコーチとして、「やらせる」ということを徹底しています。)タスクフライトを終了し、着陸後はseeyouでフライトログを見直しながら3時間以上のデブリーフィングを実施。自分の判断と、先生の視点から見て何が違ったかをディスカッションして、この10日間で身につけられた部分、まだ判断の改善が必要な部分の整理で終了しました。

帰国後はデブリーフィングのメモを再整理し、昨年作成したフライト判断チェックリストを再度ブラッシュアップして、先生とのフライトをビデオで見直しながら空の判断基準とチェックリストを体にしみこませる作業を夜な夜な行いました。


2016/04/23

プレヨーロッパ選手権大会兼チェコ国内選手権大会

2018年にチェコで行われる予定のグライダー世界選手権大会に向けて準備を始めました。開催地はチェコの西部にある Pribram (プシーブラム)で、首都のプラハから車で1時間くらい南西に行ったところの町です。
チェコは1999年のドイツでの世界選手権大会で大会空域の一部として設定されたので、飛んだことはあります。もう17年も前で、当時はビザが必要で国境がありました、不時着もしたことがあります。

今回はチェコの空と国の視察を兼ねて、同じチェコ国内の別の滑空場(Moravska Trebova モラブスカ トジェボバー)で5月に行われるチェコ国内選手権大会に参加してきます。2017年にヨーロッパ選手権も行われる予定でそのプレ大会を兼ねています。この大会の結果を踏まえて、2018年のチャレンジを検討したいと考えています。


機体は前回と同じくハンガリーの友人のRichard, Gabor の ASG29E を借用して、Budapest から陸送予定です。今回はGabor が仕事で忙しく、クルーをお願い出来ないので、お手伝いは妻(リーダー)が来てくれます。

5/15(日) 出発、ハンガリーで機体を借り、陸送して現地での事前練習。競技会は 5/22(日) から 6/4(土)までの予定です。

早速地図を買いそろえてみました。左の VFR map が最も等高線が見やすく、中央の ICAO map は森は見やすいですが、等高線はイマイチでした。
中央上部の冊子はチェコの飛行場一覧の冊子です


かなりちゃんとしたライブカメラがあり、飛行場の状況が一覧で確認出来ます。

現地のフライトに必要な情報は大体ローカルのクラブのホームページにリンクがありました。