2024年はポラリスプレシジョン合同会社 吉澤様に選手権の現地で利用するベースキャンプ用アンテナについてコンサルティングいただき、アンテナを新調しました。タスクエリアを通じて地上とのコミュニケーションが改善され、効果を発揮しました。
(2025年の状況追記)
従来の課題
- 従来のアンテナ(第一電波工業 ダイヤモンドD150)だと70kmほど離れると無線が入らなくなってしまう
- 航空無線でVHF帯で利用される周波数帯に適してないため
- 恒久的なアンテナポールを導入したい
- アンテナポールを毎年現地で水道管を購入して設置していたが、長くするのが難しいため
要件
- 周波数118.000 ~ 136.975 MHzの対応(航空無線VHFで利用されている周波数。チーム周波数に割り当てがある)
- 平野部で半径150kmくらいの範囲をカバーしたい(タスクエリア全体をカバーできる)、対地1000m~2000mくらい
- 利用地上無線機 ATR833 II LCD に対応
ポラリスプレシジョン様からの推奨
有効通達距離
- 高度h(m)のとき、見通し距離の概算である有効通達距離D(km) D = 3.8√(h)
- 相手方高度 5,000ft = 1,520m ⇒ 有効通達距離 148.3km 80NM
- 相手方高度 8,000ft = 2,440m ⇒ 有効通達距離 187.6km 101NM
- 5,000ft以上の高度があれば、無線機の送信パワーの値にかかわらず、アンテナ・同軸ケーブル・無線機が適切に整備できていれば、150km程度の距離の通信は期待できそうとのこと(高度が下がれば難しい)。
- こちらで有効通達距離を計算出来るページあり
アンテナ
- SIRIO antenne GPA 108-136
- 利用する周波数に合わせてアンテナ長を調整できる優れもの。国内製品で上記の航空無線VHF周波数帯に対応したアンテナは見あたらず、見つけていただいた製品。
- 現地で他チームのアンテナを観察したところ、確認できた14チーム中12チームが上記メーカーのアンテナを使っていました。(GPA x 5、GP x 2, SPO x5)
同軸ケーブル
- フジクラ 8D-FB 15m
- アンテナポール高さ、テントまでの取り回しでの必要長さで、かつ太くて低損失な高性能タイプ
アンテナアナライザ
- Rig Expert Stick230
- ・アンテナ長を利用周波数に適した長さに調整して、アンテナケーブル接続、利用する周波数にアナライザーを設定してSWR値を計測、SWR値を確認してアンテナの調整が適切に実施できているかを確認。
アンテナポール
- コメット株式会社 移動用アルミポール (全長8.05m) CP-80L
- 最上段パイプ径φ22mm / 最下段パイプ径φ42mm
- 最上段にφ31mmスリーブ装備 φ25~φ60の固定にも適合
- アンテナ自体が重いのと、アンテナポールの最先端部は22mm径で細いので、ポールを倒した状態でアンテナを接続するとポールがたわむので、ポールが短い状態でポールを立てたままアンテナをポールに接続し、ポールを伸ばして支線(固定ロープ)を張る必要がある
- 作業は3名必要
アンテナポール固定ロープ(支線)
- クレモナSロープ 4mm径(甲種風圧荷重を基準に検討)
- 2段3カ所で固定(結果的には3段3カ所の9本)
取付調整一式
- アンテナ、同軸ケーブル、ポールの取付用アルミマウント作成、性能試験、手順書作成
現地での利用
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| 飛行経路 |
無線到達確認範囲(2024年)
・西~西南西~南西~南~南東~東~北は問題なし西 130km
西南西 90km
南西 80km
南 80km
南東 65km
東 120km
南西~南の山脈は南西の山脈を越えて飛行することが無かったので山の影響を感じる飛行にならなかった
北側はプラハ空域の制限があり、飛行場から離れて飛行する機会が設定されなかった
・西~西北西が80km以上で無線が入らなくなった
西北西80kmに南北20kmほどの山脈 (標高 900mの山脈、アンテナ設置の飛行場標高500mからの対地高度400mくらいの山脈)の山の影側(飛行場から西側の遠い側)で以下の高度での飛行中だと3回とも通信が双方向とも届かなかった
8/10 第3レグ前半 飛行高度1100m~1500m(飛行場からの対地高度600m-1000m)
8/16 第一レグ後半~第2レグ前半 飛行高度1200m~1600m(飛行場からの対地高度700m-1100m)
・西北西80kmの山脈の手前側に戻ってくると通信が復活したので、山脈の影響だったようです。
・西130kmの山の陰で無いところだと130kmでも通信が出来た
そこから15km北に移動して上記の山の陰に入った途端に通信が出来なくなった
・飛行場の東側にも600m程度(飛行場対地高度だと100m程度)の丘陵地帯が続いているのですが、ここは標高がそこまで高くないためか、さらに東に120kmまで飛行しても通信できた
無線到達確認範囲(2025年)
- 当初のアンテナ設置場所は西側の樹木の影響があり、80km程度
- 開けた場所に移動したところ150km / 2000m まで通信可能、有効通達距離の計算式に近い
- 150kmで1000mまで高度が下がると通信不能、1000mだと130kmくらいまで。
- 2000mくらいだと160kmくらいが最大値、200kmだと通じなくなった
取付後のSWR値
・1.16~1.08(今回のチーム周波数 124.660 MHzの場合)
設置方法
設置場所から飛行する方角に、構造物、森、などが無いことを確認する。周りの開けた場所が良い。(木はアンテナの障害になるため)
①アンテナ部分を組立
③アルミパイプ内に同軸ケーブルを通してアンテナに同軸ケーブルを取付
④アンテナをアルミパイプに取付
⑤アンテナアナライザーでSWR値を確認して、アンテナ長が適切なことを確認(今回の133.990Mhzの婆、1.07~1.31)
⑥同軸ケーブルをアンテナポールに一巻きしてタイラップで固定(同軸ケーブルの重さでアンテナコネクタの緩みを防止)
⑦支線のクレモナSロープを取付(上3本、下3本)。ヨット結び
⑧アンテナを立てる。アンテナポールのサポートになるようなフェンスのような物があると良い。タイラップで固定する
⑨アンテナを伸ばしていく、伸ばしていとアンテナ本体の重さでポールがたわむので、両サイドから支線にテンションをかけながら伸ばす
3名以上必須、4名居ると良い。
まとめ
2024年度は無線が非常に良く通じるようになったので、飛行中の地上からのサポートがさらに受けられるようになりました。2025年、2026年もこれを生かしてパフォーマンスにつなげていきたいと思います。

