2013/09/08

グライダーと食事① 〜 まるの機内食を突撃取材 〜

欧州選手権の競技直前。空を見上げ、作戦を練りながら昼食を採る丸山。

 さて今回は機内食の話です。機内食って言ってもフライトアテンダントが運んできてくれるものじゃないですよ。時には5時間6時間も飛び続けるようなグライダーパイロットの栄養補給の話です。

 具体的には7月の欧州選手権でまるが機内に持ち込んでいた食料をベースにインタビューしてあります。前回の「フライト中の水分補給と熱中症」と併せて読んでいただけると嬉しいです。

 ちなみに、グライダーの大会では気象条件のいいタイミングに競技を行うので1日の流れにある程度ルーチンがあります。欧州選手権の時の流れを食事時間を中心にご紹介しますと

 06時         :起床
 07時           :朝食
 08時          :滑空場へ出発
 10時45分頃     :パイロット昼食
 11時             :曳航開始
 13時半           :地上班昼食
 17時〜18時頃 :競技終了・撤収・宿泊所へ
 20時頃           :夕食
 22時頃           :パイロット就寝

こんな感じです。そして今回お話するのは競技開始直前の昼食とフライト中の栄養補給に関することです。さあ、まるはどんな食事でスタミナを維持しているのでしょう?(河村)

①フライト直前編

ーーーお昼ご飯は必ずおにぎりだね。何かこだわりがあるの?

うん。サンドイッチも試したけど、腹持ちの良さからおにぎりにしてる。カーボ・ローディングだよ。飛行中にエネルギー切れを起こしてはいけないからね。最近、海外を転戦するスポーツ選手で炊飯器持参の人が多いよね。テニスの伊達公子さんや杉山愛さんしかり、ゴルフの宮里美香さんもそうだよね。

ーーーカーボ・ローディングって何?

あ、ごめんごめん。スポーツ好きの人なら聞いたことあると思うんだけど、直訳すると「炭水化物を体に詰め込む」って意味だよ。具体的にはコチラのサイトを読んでもらったほうが早いかな。要はフライト中に必要なグリコーゲンを採ってるわけなんだけど。

ーーー素朴な疑問だけど、そんなに体力を消耗するの?

そうだね! でもどちらかと言えばフィジカルで体力を消耗すると言うよりは、判断をし続けるので、脳を使い続けているって言うことかな。グライダーは刻々と変わる天気の中で、常に体のセンサーをフルに活用させつつ、その時々で最良の判断をひとりで下し続けなければいけないんだ。一度飛び立ったら、降りるまで常に、エブリタイム判断力を試され続けるって言っても過言じゃあないんだ。まあサッカーでもそうだとは思うけど…。グライダーの場合それが3〜5時間休憩なしに続くんだ。飛び上がってからスタートをコールするまで2時間くらい粘ることもあるので、下手をすると6、7時間飛び続けることだってある。

グライダーは究極的には頭脳戦。でも実際には精神面に大きく左右される競技なんだ。だから、それを支える「体」がベストの状態に維持されていなきゃいけない。それに、頭を使ったらお腹が減るってホントだよ!


ーーーなるほど。じゃあ、そのお米の調達はどうしていたの?

米は日本から持ち込みだよ。海外のものは炊いた直後はいいんだけど、おにぎりにして時間が経った後のおいしさでは日本のお米にかなわない(笑)。お米は佐渡の米。ただ、全てのお米を持って行くのは重いので現地での夕食用にはショートライスを探すけどね。ポーランドは TESCO のスーパーマーケットで sushi rice が売っていたよ。初めての場所に到着したときはまずスーパーで short rice を探してる。

ーーーどのくらい炊くの?

グランドクルーのざっきー(福崎さん)とふたりだけで過ごしていた前半は朝昼分として2.5合炊いてたよ。そのうち僕がフライト前におにぎりとして食べていたのは1.2合くらいかな。レギュラーサイズの三角おにぎりを3つ。必ず海苔を巻いて食べてた。

ーーー炊飯ジャーじゃなく、お鍋で炊いているよね?

うん。炊飯ジャーを日本から持って行くのは重いし。それに慣れちゃえばお鍋で炊くのは簡単。(昔は日本の炊飯器+220V変換トランスを持って行っていました)ただし電気コンロよりもガスコンロの方が温度調節が簡単。焦がさず上手に炊けるよ。ちなみに、しゃもじとサランラップは日本から持ち込み。海外のサランラップは品質が悪いからね。旭化成さん、海外で売ったら絶対売れますよ!
なので必ず宿もキッチン付きのところを探してます。

ーーーへええ。旭化成の人は知ってるのかなぁ。
   でも実際炊いてくれたご飯美味しかったよ。コツ教えて!

1. 10分でも良いので、必ず水につける。30分つけると美味しくなる。
2. 水は手のひらよりちょっと高いくらいの水位まで。ミネラルウオーターで。
3. 最初は強火、強すぎると焦げる。沸騰したら最弱火まで弱めて12分、iphone のタイマーが活躍(以前はそのためにキッチンタイマーを持って行っていました)。
4. 12分経ったらガスを消してさらに12分蒸らす。
電気コンロの場合は強火->弱火 のところですぐに温度が下がらないので焦がしてしまう。ちょっと早めに弱める。蒸らすときも切った後にコンロの上に置いておくと余熱で焦げるので、コンロからどかす。

ーーーなるほどー。ありがとう。でもやっぱりニッポンのお米で作るおにぎりは偉大だね!


 というわけで、今回はフライト直前の昼食についてまとめてみました。次回はフライト中の栄養補給と、避けては通れない「トイレ」の話です。お楽しみに!(河村)

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