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2019/09/18

Youth Camp 2019 in Takikawa レポート(サーマル・ウェーブ・リッジでの飛び方)

2019年8月12日~16日
Soaristが主催する「Youth Camp 2019」にインストラクター、スタッフとして参加しました。

Soaristは2018WGCクルーの吉岡利典さんと吉岡名保恵さんが主催する「若いグライダーパイロットにソアリングの楽しみを伝えるために集まったチーム」で、TEAM MARUの丸山と赤石もメンバーとして活動しています。「ユースパイロットを対象としたソアリングの実践の場と魅力を伝える機会を作り、空の魅力を次の世代に伝えることが出来るココロザシのあるユースパイロットを育てる」活動の1つとしてYouth campを行っています。
今年は北海道滝川市にあるたきかわスカイパークでYouth campを行いました。

台風の接近に伴い、フライトコンディションの見通しの難しい週になりましたが、5日中5日間フライトでき、内3日はソアリングコンディション(サーマル、ウエーブ、サーマル+リッジ+コンバージェンス)になりました。これらの様子と飛び方をレポートします。
*さらにキャンプ終了後に延泊した2名のユースは台風通過後の西風ウエーブコンディションも楽しめました!

【チェックフライト】Aug.12(Mon) / Camp初日
今回はYouth5名が参加。曇り空となりましたが、まずはチェックフライトへ!
たきかわスカイパーク
ヨーロッパのグライダークラブのスタイルで作られており、遊具やベンチもあります。

朝の準備風景。ハンガー(格納庫)からグライダーを出し、車で牽引して滑走路まで運びます。作業は省力化して、フライトを考えることに集中できる環境です

グライダーのチェック中

Maruはインストラクターとして参加です

①【サーマルコンディションで飛ぶ】 Aug.13(Tue) / Camp2日目 
8/13 晴れています
単座のシート慣熟をするユース。フライトコンピューター利用方法、重心位置などをアドバイスするMaru。
キャンプ二日目はサーマルコンディションになりました。010から5m/s位の風です。10:30過ぎに積雲は町の上でスタートしたものの、雲の下を試してみてもイマイチぱっとせず、リフトとしてまとまっているのは滑空場横の川の合流点の手前、暖められた町の空気が北寄りの風で土手と線路の交点からトリガーされているところのみでした。上がりきって別の場所を試してみるものの、トップが2,500-30,00ftで次のリフトに届かず、周りのリフトもあまりよくないことから同じ場所で上げ直す状況が続きました。とはいえ、リフトさえあれば何度でも同じリフトに入り直してクライムすることで以下のような練習は可能です。
サーマリングをする上で大事なことは、前提知識に基づいて、上昇気流のイメージを作り、上昇気流のイメージの中のどこに自分がポジション出来ているかを意識することから始まります。
  • 前提知識
  • リフトソースの理解
    • リフトの発生を理解するには日射、風、トリガーの3つのポイントを常に意識します。リフトに当たったらそのリフトは何から発生しているのか、上記3点のポイントを意識して整理します。整理できていると次回同じ条件にあたったとき、別の滑空場で遭遇してもリフト要素を整理してトライすることが出来、上昇の再現性を高めることにつながります。
    • この日の上昇の場合、町で温められた空気が北寄りの風に流されて、空知川の土手と鉄道(根室本線 滝川から富良野へ向かっている)の土手の交点からトリガーされて上昇しています。同様の状況は板倉の周辺でいえば渡良瀬川の土手と東北自動車道(土盛りされて高くなっている)の橋の交点から発生するリフトがあります。
    • 例えば板倉でフライトするときであれば、南風コンディションであれば藤岡の町で暖められた空気が三本橋の土手でトリガーされている、三毳山のどこの谷に空気が当たってどこの尾根から空気が離れてきているか、太平山ではどうか。東風コンディションであれば佐野の町で温められた空気が秋山川の土手をトリガーにあがってくる、などがあります。
    • 平野に見えても微妙な地面の高低があります。昔からお百姓さんが住んでいる集落は水害を避けて土地が高いところを選択していますのでリフトソースになる確率が高まります。逆に新興住宅地は田んぼを埋めて作っているので、実は湿っていたりします。お寺、神社、お城があったところは土地が高いところが多いです。xx塚、のような地名も土地の高さを表します。
    • スポーツは感覚的なものです。グライダーもスポーツなので感覚が大事なことはその通りです。とはいえ、感覚のみに依存していると感覚がずれたときに良いプレーを再現できません。再現性を高めることはスポーツの上達のコツの一つになり、その手段が言語化です。グライダーに当てはめて考えた場合、どのように再現性をたかめられるか、現象の要因を理解できるが鍵になります。再現性を高める一つのポイントが根拠です。根拠を持った言語化で練習生の再現性を高めさせるための気づきを与えられることはインストラクターの喜びです。
  • リフトの形の理解
    • サーマルのモデルについて、円筒形に書かれたモデルがありますが、実際の形は円筒とは異なります。下層では狭く、上層では広がります。また、コアは一カ所では無く、広い「リフトエリア」の中に「複数のコア(強弱がある)」が存在している状況です。その中でも本当に良いコア(下層から上層まで連続的につながっている)は限られています(相対的に強いコアが上層までつながる良いコアになります。弱いコアは途中の逆転層で止まってしまってトップまで上がりきれない場合があります)。低層での狭い複数のコアは高度があがると一つの安定したリフトにまとまります(たこ足)。
    • また、逆転層は思っている以上の頻度で存在しており、逆転層の存在はコアのセンターを細かくシフトさせます。下から上までまっすぐ続いている上昇気流はほとんどありません。
    • リフト周辺には湧き上がった空気が下がっている沈下帯が存在することを理解していること。また、その境目は上下方向のシア(周辺の下降流とリフトの上昇流)による乱流が存在していることを理解していること。
    • リフトのあたりをつけて目指して接近している手前で沈下に入り、さらに直前になると乱流域を通過してリフトエリアに入ることを理解すること。この二つを感じられるようになるとリフトに自信をもって接近できるようになります。
    • 人間が感じられるのは加速度です(速度の微分値)、等速度運動に入ると変化していないので人間は感じられません。周辺の沈下からコアの手前までは沈下状態であっても上方の加速度が続きますのでこの段階では感覚だけで無くリフトの絶対値として計器の確認は必要です。コアに入ると等速度運動になります。
    • よくある失敗
    • 当たったらすぐにまわる(周辺のガストで回ってしまう、継続的なリフトになっていない)
    • 持ち上げられたのを認識できていない(緊張状態で加速度を感じる感覚が鈍っている)
    • 回り始めてリフトが続いていないのにターンを続けてしまう(ロールイン時にエネルギーの継続を意識できてない、まわることに意識が行き過ぎている)
    • まだ加速度の段階なのに回り始めてしまう(早すぎてしまい半周しかリフトに入らない)
    • リフトの中でさらにブローが来たことに対応できない(センタリングが一度確立すると安心して気を抜いてしまう)
  • 旋回のサイズ、バンクと沈下率
    • どの速度、バンクで回るとどれくらいの旋回直径になるか?
      • 90km/hバンク20度、30度、45度、60度の旋回の直径はどれくらい違うか?
      • 20度 371m
      • 30度 234m
      • 45度 135m
      • 60度 78m
      • 20度バンクと45度バンクでは倍以上違う!
    • バンク20度、30度、45度、60度旋回時の旋回半径と沈下率はどの程度の違いがあるか?
      • バンク60度旋回が本当にサーマリングで有効か?
      • バンク45度 沈下率1.0m/s
      • バンク60度 沈下率2.0m/s
      • 沈下率が倍も違う!
    • バンク30度~45度を用いるのが有効。緩バンクではリフトにとどまれない。深すぎるバンクはそれだけ強いセンターが無い限りは有効で無い
  • リフトを感じながらのロールイン、ロールアウト
    • リフト周辺の沈下帯を過ぎて、「リフトエリア」に入ったら「サーチ、トライ」です。いきなり回れることはあまりありません。
    • グライダーの旋回の目的は「方向を変えること」だけではありません。ソアリングの際にロールインする際のエネルギーを感じることがグライダーの旋回の目的の一つです。
    • ロールイン時に継続的な空気の上方へのエネルギーを感じているか?感じられているか?感じようとしているか?
    • 旋回確立後のセンタリングの話は多々書かれていますが、私が大事に思っているのはロールイン開始時に継続的にリフトを感じてそのままリフト旋回を継続するか否かを決定することです(継続的な上方向エネルギーがあり上方向エネルギー変化加速度が一定になったときにターン開始、)、ロールインしながらなおも継続的な上方向のエネルギーがあるか?ある場合はターン継続、無かった場合はロールアウトして近辺をサーチします。
    • リフトエリアに入ってから、持ち上げられると思われる方向に寄せていき、継続的に持ち上げられる感じがあったときにその方向にターンをトライします、さらに継続的に押し戻されるくらいに持ち上げられる感じがしたら、持ち上げられる空気に押し負けないようにさらに加速度的に舵を使ってバンクを入れてターンしていきます。仮にターンし始めたときにターン方向に落ちていく感じ(空気が継続的に持ち上がっていかない感じ)がしたらロールアウトします。ロールアウト時も逆方向から持ち上げられるエネルギーがあるかどうかを感じながらロールアウトします(サーチしている段階では近傍にコアが存在しているケースが多いですのでトライしてみて、逆方向にあることは良くあることです)。いずれにせよリフトエリアに入れていれば近くにはコアはあるはずなので同様に周辺をサーチします。
    • いい感じで継続的に持ち上げられる感じがしたらさらにそのままターン継続。機械バリオでリフトの強さをチェック。その中でさらにブローが来たらさらに絞り込みます。
    • ロールイン時のエネルギーを感じるのに大事なことはロールイン時に滑っていないことです。
    • 加速度的にエルロンを動かすことで空気の流れ(流体)がなめらかに変化していき、舵は効いていきます)。グライダーが思ったように動くように舵を使えるようなることが大事です。
    • 良くある失敗
    • 滑っている状態だとグライダーに人工的なGを作り出している状態になり、空気が上方向に押す力を正しく感じることが出来なくなります。(内滑り→外側にGがかかる。外滑り→旋回内側に落ちていく感じ)
    • ロールイン時に滑らさない操作をできている人、気にしている人は多くありません。これはおそらくロールインの際に「ソアリングのための空気のエネルギーを感じる」ということへの意識が低いためと思われます。(まわろうとして焦って舵を急に動かしてしまい、空気の流れの中に立て板を立てるようにエルロンを動かしてしまうと、乱流が発生するだけで舵は効きません。
    • ロールイン時にエネルギーを感じている人も多くありません。グライダーの挙動を見ているとロールインはしようとしているのですが、リフトに押し返されて、バンクが入っていって無いにもかかわらず、ストロークの半分くらいしか家事を使っていなくて、それ以上舵を使えるのに使わず(使えずに)に待ってしまっている人が多いです。この場合は押し返しに負けないようにさらにエルロンとラダーで押し込んでバンクしていきます。
    • ロールインでフルストローク使い切れないのは何故でしょうか?おそらく、練習初期の段階で「小さな舵を使う」ことをすり込まれすぎているために、舵をフルストローク使ってグライダーを自由自在に動かすことへのメンタルバリアになっていると思われます(思い込み、固定概念、心の壁)。
    • フルストローク使えないメンタルバリアを打ち破るためのトレーニングとして私が練習生に実施させているトレーニングは、バンク45度180度蛇行をフルストローク使って、蛇行の切り返しの際に止まらずにそのまま逆側に連続的に切り返してロールインしていくトレーニングを実施させています。ポイントは以下です
    • 最初に正しいデモを見せることはとても大事です。見て、真似る、のはとても大事なことです。デモの際にどこにポイントを置くかを補足説明します。これによりどこに注意点を置けば良いか、何が正しい操縦かを理解してもらいます。
    • 間違ったデモを見せると間違ったインプットになります。間違ったインプットは修正するのに時間がかかります。デモを見せることで、どこまでのストロークで舵を使えば良いのかを理解させることも大事なことです(メンタルバリアで暗黙的にここまでしか舵を使うべきで無いと思っている気持ちを超えさせる)
    • 速度は95-100k/h程度で行うのが楽です。
    • 切り替えしの停止方向は最初はそれほど意識しなくて良いです。それよりもスムーズにノーズが流れていくことに意識させます。
    • ノーズの流れ方に意識を置きます。通常ターン開始はエルロンから入っていき、エルロン抵抗でノーズが逆方向に流れて行くのを打ち消すためにラダーを踏んでいき、バンクがついて仮想Gが増えてノーズが下がっていくのを打ち消すためにエレベーターとトップラダーでノーズを釣っていきます。この動きを理解して、スムーズに流れるように各舵を使います。
    • 切り返しのロールアウトの際は上記の逆になります。トップラダーとエレベーターで釣ったままのノーズは釣ったままロールアウトすると速度抜けになるのでプッシュしていきます。エルロンを逆方向に切りながら、ラダーを踏み込んでいきます。ラダーの踏み込みが足りないと切り返し時にノーズがついていかず、逆方向に流れます。ノーズをスムーズに流して行くには加速度的なラダーの踏み込みとエルロン操作が必要です。
    • 最初からフルストロークは難しいと思います。また、フルストローク使うことが目的ではありません。切り返しのレートを早くしていき、結果的にフルストロークまで使えるようになります。ですが、多くの人はここで先ほどのメンタルバリアが働いてハーフストロークで待ってしまいます。待っている状況があるようでしたらインストラクターはフルストロークまで使うサポートをして見せます。練習生はいかに舵を使い切れていないかを理解できると思います。
    • 上記を実施しながらアイポイントに意識を置いてみてください。初期はまずは正面を見て、滑らさないロールイン、ロールアウトが出来ているかに重点を置いてください。滑っていないことが前を見ていなくても体感で分かるようになってきた(滑っている横Gを感じられる、ピッチ変化を音から理解できる)ら、旋回のやや内側にアイポイントを置いて、旋回外側下方の周辺視野で計器板をみられるようになると、ルックアウトしながらの切り返しができるようになります。滑らないロールインロールアウトが体感で理解しながら出来ていない段階でルックアウトに気を遣いすぎると滑ったままのロールインロールアウト操作になってしまいます。まず初期段階では滑らせないロールインロールアウトを意識するようにしましょう(ルックアウトを軽視するという訳ではありません。練習の段階ごとにフォーカスポイントを変えましょうという意味です)
  • リフト内の定常旋回
    • 定常旋回に入ったらトリムをあわせて、右手はスティックを握りしめず、指を添えているだけにして、あおられるエネルギーをエルロンから感じるようにし、あおられるエネルギーが来たときにバンクを戻されないようにエルロンで支え、さらに強いブローが来て絞り込む必要が感じられたときは絞っていきましょう。左手は常にトリムに置いて、ピッチを変更した際にはすぐにトリムを合わせて右手に力をかけずにグライダーの姿勢が安定できているいるようにトリムをこまめに使いましょう。焦ってくる、緊張してくると、体は強ばり、縮こまりますので、スティックを引いてしまい、速度が抜けていきます。この状態に入っていることに気がついたら右手の力を抜いて、トリムに任せてピッチを最初のピッチに戻しましょう。トリムが合っていれば最適なピッチに自動的に戻ります。ピッチを引きすぎてしまったことに気がついたときに、「ピッチを引きすぎた、戻さなきゃ!」とプッシュすると逆に速度がつきすぎて、旋回半径が大きくなり、リフトからはみ出てしまいます。
    • トリムさせておくことで、無駄な握りしめがなくなり、握りしめがなくなると、右腕の筋肉が弛緩状態になりますので、全身の皮膚感覚での平衡感覚がより敏感になります。また、上空での探り舵(貧乏揺すり、エルロンカタカタ)が無くなります。上空での貧乏揺すりはグライダーの挙動にも現れ、ガグルで一緒にまわっているとエルロンがパタパタして見え、無駄な乱流を生み出すことで上昇率が悪くなり、ガグルで置いて行かれます。ガグルで置いて行かれると余計に心理ストレスがかかり、疑心暗鬼になり、さらにパフォーマンスが下がります。
    • シュンプヒルトの機体のような、トリムがコックピット左側面にボール型のレバーがある場合、左手の手のひら(腹)でトリム先端の緑のボールを動かすと、左手に力をかけずにトリムが動かせます(左手指先で動かそうとすると力が左手にかかってしまいます)。
    • デジタルアベレージャーは自分の上昇率を客観的に理解するための有効なツールです。デジタルアベレージャーでコンスタントな上昇率をキープできているか、先ほどより上昇率が悪くなっている(例1.6m/sが1.3msになった)として、サーマルトップまでまだ高度があるとしたら、それはセンターがシフトしたことに対応できていない(ないしは自分が流された、バンクを緩めてセンターをはずしてしまった)ケースが多いです。再度センタリングを試みましょう。
    • XCSoar の平均上昇率はあまり実際の値にあってない印象があります。動圧連動のフライトコンピューターでないと細かい表示は内蔵GPSからだけでの計算だけだと不十分なのかもしれません)
    • 同様にオーディオバリオはルックアウトの割合を増やすための必須ツールです。
  • リフト旋回時の最適な速度レンジ。
    • グライダーによっても異なりますし、リフトのコンディション(狭い、強い)によっても異なりますし、翼面荷重によっても異なりますし、重心位置によっても異なります。一般論として言えることは、現代のスタンダードクラスのグライダーでは速度を抜きすぎると、失速はしていませんが、剥離は始まっているので、揚力を発生せず、リフトの中で上昇していかなくなります。「サーマルの中で最小沈下速度でまわる」、はクラッシックな翼厚なグライダーでは良かったかもしれませんが、スタンダードクラスでは最小沈下速度ではすでに剥離が始まっている感じがすることと、マニューバブルでないためサーマルの中でのこまめなセンタリングに対応できなくなります。
    • 「夏のサーマルは緩いバンクで」といった一般論も、コアがきちんとしてればきちんと絞った方が良く、絞るには速度を抜きすぎているとマニューバブルでないので操作が追いついてこないことになります。クラブクラスとスタンダードクラスのポーラーカーブを比較してみるとサーマリングに使う速度域での違い(沈下率、カーブの曲がり方)に気がつく点があるので並べて観察してみると良いと思います。
    • まわっているとどうも速度がついていく感じがする、引っ張っていないとノーズが下がっていく気がする、ようであれば重心位置を見直してみましょう。機首ごとに最適な位置があります。
  • センタリング
    • バンクを緩めるのか、バンクを入れるのか、答えはどちらの場合もあります。大事なことは強く感じる方向に寄せることです。上述の通り、寄せるときの操作で強さを感じるので、旋回中、ロールインロールアウト時に強さを感じるのがポイントになります。
    • バンクを緩めたときにどれくらい実際に軌跡が移動しているのかは、GPSログから確認してみるとよく分かります。
  • リフトセンターの移動
    • リフトコアのセンターの移動は主にウインドシアによって発生します。ウインドシアは思っている以上に多くの高度で多段階のシアがあります。センタリングは一度完了したら終わり、ではありません。常に継続し続ける必要があります。
    • アベレージが悪くなってきたと認識したら、まずは少しだけバンクを緩めて大きめにまわってみます。おそらく今までと異なる方向に強さを感じる方向があると思うのでそちらに寄せてみましょう、再び良い上昇率で上昇できるはずです
  • リフトサイクルの理解
    • リフト発生には一日を通じたサイクルがあります。常にまとまったリフトが発生しているわけではありません。サイクルを理解して、サイクルに対応した探し方が必要になります
    • 一日を通じたサイクル
    • 午前中のサーマルできはじめのタイム
      • 熱が溜まるまで時間がかかる
    • 午後はじめの、コンディションがまだ良くなっていく(気温が上がっていく途中)で、いきなり弱くなるタイム。
      • 得てしてトップが上がるときに、逆転層が上がることで対流層が少し深くなり、一時的にサーマルを発生させるための地面を温めるエネルギーが足りなくなり、日射は十分にあるのに少しだけ温度が下がる時間帯があります。このタイミングでリフトは発生しづらくなりますので、さっきまで安定して発生したリフトに急に当たらなくなって、まだ時間帯が早いのに降りてしまう、なんて場合があります。
    • 午後中盤、サーマルが安定するタイム。一定のサイクルでサーマルが発生します。
    • 午後遅く、日射が減ってくるが、地上に溜まっている熱が放射されるタイム。サイクルは長くなります。
    • パッチ状の上層雲の影響で日射が出ていたのが弱まり、再度日射が出てくるケース。
    • 一度中層雲に覆われてしまったと思われても中層雲により日射が減ったことで中層雲が雲散し、日射が復活、復活した日射によりまた中層雲が発達して、日射を遮ることを繰り返すケース。
    • いくつか要因はありますが、リフトが弱まったタイミングでは弱まったリフトに合わせた行動指針が必要です。同じ選択基準でリフトを選んでしまうとリフトをつかめず止み間に降りてしまう場合があります。リフトが弱まったタイミングではむやみに動かず0以上をキープできるのであれば待つことも時に必要です
    • そろそろ本流のリフトが出てくる前のボコボコした状況であることを理解してゼロメインテインで待つ。イラストですとよくツクシが生えてきたようなイメージで地面から細いリフトが何本が出てきていますが、全周回れるようなサイズで無い場合、でもなんとか全周で0をキープできるような場合です。リフトの始まりの時間帯、低減率の悪い(上層が冷えていない)高気圧に覆われて風が弱い(トリガーが無い)熱射型のリフトの場合、なかなか地面から空気が離れてこないのですがその始まりのような細いリフトが何本が出ている場合があります。こういった場合はそこでキープして5分~10分待つことで本流のリフトが出てくる場合があります。(日中のまだ空気のアクティブな時間帯にもかかわらず低く下げてしまい、地面から空気が離れてくるのを待っているケースがあります)
    • 地面の乾き具合。上記のサイクルに影響を及ぼします。雨上がりすぐなのか、ここのところ雨が続いて全体的に湿っているのか。空から地面の色をみて、黒茶っぽいのか、乾いた茶色なのかを観察します

  • クライムの最適化(まとめ)
    • リフトをいかに感じて最適な位置にポジションさせるか
    • リフトを感じるためには(トリムの積極活用で添えているだけの状態に、全身の筋肉のリラックスで全身でG変化を感じる、重心位置)
    • アイポジションの使い方(旋回のやや内側を見ている状態で姿勢を理解する)
    • コアの中でのさらなるブローの活用(コアに入ったと思ってもさらに次の強いコア、ブローが来る場合があります。ブローが来たときに絞り込んでさらに良いクライムを使います。リッジサーマルでまわっているときにこの現象はしばしば発生します。)
    • よくある失敗
    • 握りしめ(筋肉の強ばりからリフトのG変化が感じづらくなる)
    • センタリングに熱中しすぎると自然と体が縮こまり、舵を引いてしまい、最適な速度から速度が抜けすぎてしまう
    • 外を見る割合が多過ぎて逆に姿勢が乱れる(まだ外を見る時間を増やせるレベルでないので、まずは前を見て正しい姿勢で飛ばせているかをチェック。前を見ずに正しい姿勢で飛ばせるようになってから外を見る割合を増やしていく)
  • ツールの利用 moving map タイプのフライトコンピューターの活用
    • 旋回中に流されている方向が確認できる(どれくらい流されているか、を実感する、バンクを入れて流されることを修正することの重要性に気がつく)
    • 上がりきってロールアウトする際にまずは流されてきた方向にロールアウトします。綺麗に流されてきたところをトレースすると再びリフトに遭遇できる率は確実にあがります。流されて来た方にまっすぐロールアウトすることの習慣づけに使える
    • 上昇中に流されている方向が変わってきたことに気がつける、ウインドシアの可能性があります
    • デジタルアベレージャー、オーディオバリオの利用
    • SeeYouでの振り返り
    • 旋回は小さく一定で回れているか?(バンク30度以上)
    • 上昇率は一定か?
    • 使っているリフトの下限、上限はおなじか?
      • 下げすぎる前に見つけられているか?
      • 上がり切れているか?
      • トップの変化を意識できているか?
    • リフトから離れる判断が出来ているか?
      • バログラフの上がとがっているか?上昇率が悪くなったのにいつまでもしがみついていないか
  • ガグルへのエントリー、ガグルでのポジショニング
    • 先行機の旋回の円筒をイメージ
    • 円筒に遠くから巻き付いていくイメージ
    • エントリー前は増速、円筒に巻き付くイメージでエントリー時に減速しながら先行機のポジションを180度にとれるように速度を調整
    • よくある失敗
    • 円筒をイメージできないと先行機を点で捉えてしまうため、点(先行機)にフォーカスしてしまい、先行機にぶつかるようなコース取りになってしまいます(意識しすぎるとそこに向かってしまう)
    • 等速でエントリーしていくため、180度のポジションが取れずに接近してしまう
  • 重心位置
    • クライムには最適な重心位置があります
  • 正しいイメージ
    • 全体を通じて言えることですが、正しいイメージは正しい前提知識と正しいデモにより正しいイメージがインプットされます。間違ったイメージを一度インプットするとそのイメージを上書きするのには労力がかかることをインストラクターマニュアルでも説明しています。
  • 様々なリフトで練習する
    • 平地のサーマル
    • リッジ
    • コンバージェンス、前線
    • ウエーブ、ローター
    • 様々なリフトを経験して、最適なクライムを追求することで、様々な上昇気流を理解し、対応できるようになります。皆さんが経験しているリフトはごく一部のタイプのリフトです。


②【ウェーブコンディションで飛ぶ】 Aug.14(Wed) / Camp3日目 


複座でクロスカントリーのトレーニングへ。同乗者はWGC2018クルーの市岡さん
Waveに入りました!



3日目は台風の接近で1,500m付近(850hpa)の南西風が強まるが3,000m(700hpa)では風速が逆に弱まる予報でピンネシリのブレーキングwaveになる予報になりました。午前中は湿度が多すぎてピンネシリのウエーブウインドウが閉じているため、ウインドウが開くまで待ちの時間に地上でwaveの座学を実施しました。13:00過ぎに日口さんから行けるタイミングになったとのアドバイス、たしかにちょっとウインドウが開いたように地上から見えなくもないですが、、、、ローカルパイロットのアドバイスを信じて離陸。離陸するとピンネシリにウインドウが開いている状態がわかります。慣れた曳航パイロットHさんの曳航で雲をよけながら狭いスポットに入れてもらいました。

13:30に離陸した一発目は上昇風がしっかりしているエリアがなく、メインテインがやっとで1時間ほどのフライトでした。2発目は上昇風がしっかりしてきて、バンドは4000-4800ftの狭い範囲ですが1+40ほどのフライトが出来ました。

  • ブレーキングwaveとは?
    • 通常waveは上空へ行くにつれ、風速が強まるほどwaveとしての強さは良くなります。上空で風速が減少している場合、海の波のような状態でwaveの波頭が崩れる状態が発生します。このエリアに達するとそれまでのwaveの上昇は急に悪くなり(上昇が止まり)、層流で静かに上がっていたのが急にローターエリアのようなあれた状況になります。
  • 湿度が多いwaveの注意点
    • ウエーブウインド(上昇帯)があっという間に雲で閉じてしまうことがよくあります
    • 常にエスケープルートを確保しておくこと。1ターンごとにどのルートでエスケープするか、どうなったら(どこまでウインドウが閉じたら)エスケープするかを決めておく。ピンネシリのwaveで言えば、西側を向いて上昇していて、東向き(石狩川側)にターンしたらウインドウが閉じていた、なんて場合も考えられる
    • 最悪ウインドウが閉じてしまった場合の対処を決めておく
    • 雲の前面で上昇しているつもりが実際は雲と一緒に流されていて、風上側に雲が沸いてくる。直前の雲だけ見ていると雲に飲み込まれてしまうので、2手、3手先の雲をみて、上昇帯のラインを意識していると沸いてくる雲に目が行きやすくなる。沸いてきたらすぐに風上側にラインを変更する
waveの雲の前面を試していると、さらにその前面に雲が出来て雲に覆われそうになります。
複座3機でお互いを視認しながら、良いところを選んでの上昇となりました。
次第にウインドウが狭くなってきて、1機が離脱、残り2機で15度バンクで旋回がやっとくらいの状況までさらにウインドウが閉じていき、残りの2機もエリアを離脱して滝川に戻りました。


【同期と飛ぶ】Aug.15(Thu)/ Camp4日目
TEAM MARUのFacebook投稿をみて、十勝から航空部同期の友人が応援に来てくれました。卒業以来飛んでいない、という友人との同期フライトが出来ました!お互いなんともいえない感動がありました。こういうつながりはうれしいものです。
同期フライト 

差し入れにいただいた「お酒に合うガトーショコラ」美味しくいただきました。

③【リッジコンディションで飛ぶ】Aug.16(Fri) / Camp最終日
北海道に近づいている台風の影響で、湿度高く上空の風が強い予報。午後から雨になるかも、ということで今日は早めのスタート。
雲が厚く、湿度も高い。が、上がる場所はあるはず!

ピンネシリにぶつかる斜面上昇風を使ったリッジソアリング


次のパイロットに情報をつたえます。再度リッジソアリングにチャレンジ。

上空はさらなる台風の接近で150度の南東風が2,000ft-5,000ftで30-40ktになりましたが、地上は10kt以下。美唄山系の陰になって滝川の地上はあまり風が吹いていません。SkySight の予報では美唄山系から南東風でのwaveの予報と、2,000ftから樺戸山系(ピンネシリのエリア)の南東斜面には斜面風と思われる上昇帯を示しており、美唄山系から樺戸山系の間の谷(石狩川上空)にも上昇帯が予報されていました。

曳航パイロットの方からの美唄山系からの南東風ウエーブでのローターが砂川SA付近に発生しているとのレポートから10:30にスタート。砂川SA付近を試してみるものの先ほどのローターが無くなってしまい、石狩川を渡ってピンネシリ山系のリッジを試してみることに。skysightの予報通り川の上も沈下が少なくピンネシリ山系に渡れました。2,300-2,500ft付近でなんとかメインテイン出来るリッジ(150度の風にほぼ直交するリッジ)が見つかり高度維持しながら様子を見ることに。地面を見ると貯水池の波は立っていないので、地面付近は風の陰に入りウインドカーム、尾根線の木々はうねっているので、上空だけで働いているリッジのようです。安定してあがるときと、安定して上がらなくなる時のサイクルがあり、弱い時をなんとか乗り切って強いときに高度をなるべく稼いでのメインテインが続きました。

  • 偏流の取り方(必ず斜面から風上側をキープ。風下に流されるとリーサイドの沈下に入る)
  • 旋回は必ず風上側にターン
  • 速度抜きすぎない(マニューバブルな速度を維持)
  • 斜面との距離の取り方(近すぎても上昇率が良くない)、高度が上がるほど上昇帯は斜面より前側に傾いている
  • 木々の揺れ方を観察(波打つ位に揺れていればよい風が吹いている)
  • 尾根の形を観察(尾根の形がベンチュリーになっている場所があればそこは風が吹き抜ける場所で、強い風が吹いています。実際そのような尾根のところは風向にそって木々が倒れていました。リッジリフトも強くなります)
  • 斜面の下の地面を観察(貯水池などあれば波打っていたりしているか)。
  • 下から続いている斜面風は斜面が長いと加速される距離が増えるので斜面風がしっかりしていることが多いです。また、斜面の地面から日射のエネルギーが供給され続けます(今回は使うケース無し)

メインテインが難しくなり、滑走路に戻そうとしたところで尾根から降りた平野で強い1.5m/sで3500ftまで稼げました(このリフトの発生理由は不明、日射は全くない状態)
これで上空のコンバージェンスに乗り移れたようで、ピンネシリ山系を南下して、南斜面に出ればさらにリッジで上げられそうなもくろみで南下してみましたが、空気が動いている感じがしないので諦めて戻りました。
再度先ほどのラッキーな平野のリフトを拾えたところで1m/sであげなおし。やっとリフトが安定してきたのでここで前席に交代してもう一つ別のリッジを試してもらい、ここで先ほどのデモンストレーションを前席にもトライしてもらえました。

2時間ほど飛んだところで前席を交代。普段から山飛びをしているパイロットなので、最初にレベルを確認してみましたが、地形観察が不十分なことが分かったので、テイクオーバーして最初に風の観察、斜面の観察のデモ(上記一人目で実施したポイント)を行った後に交代して前席に試してもらいました。
4,000ftまでとれたので、コンバージェンスも試してもらい、どの順番でトライするのか(近い順、しっかりしている順、高度を有効に生かしてなるべく全部試せる順)を試してもらいました。
そのうち、対流が強くなって雨域が広がってしまい、リッジの上にも雨域の沈下がかぶってしまってリッジがワークしなくなってしまいました。(リッジの吹き上げる風と、雨域の沈下の沈下の風の上下方向シアが発生)。1+10ほどで2発目のフライトは終了となりました。もうちょっと時間をまとめてトレーニングしたかったところです。。

Youth camp 2019 in Takikawa 無事に終了。台風の影響で難しい気象条件が続きましたが、事故なく毎日飛ぶことができました。うち3日間はサーマル、ウェーブ、リッジと違うタイプのコンディションとなり空の可能性を感じられたキャンプとなりました。

Youthの皆さん、また一緒に飛びましょう!「楽しんで」ね。


2018/02/18

滑空スポーツ講習会 札幌にてセミナーします 


3月10日午後に札幌で日本滑空協会主催の滑空スポーツ講習会のセミナー講師を担当します。
テーマは「ソアリングそしてクロスカントリー ステップアップを自ら考えるパイロットになるためには?」です
グライダーって正直上達が結構難しいスポーツだと思います。そんな中、どうやって楽しく自ら上達ことができるかを考えたいと思います。
当日は北海道航空協会の総会後にセミナーを行う予定になっています。

お申し込みはこちらからお願いします。

http://www.japan-soaring.or.jp/2017-3-10/

申込フォーム内で当日のセミナーのQAも募集しています。普段疑問に思っていること、悩んでいること、記載いただけましたらセミナーの内容に使わせていただきたいと思います。

北海道の皆さんとお話しできるの楽しみにしています!


2018/02/01

操縦教育のイノベーション その2

前回「操縦教育のイノベーション その1」からの続きです



2. イメージ 現在の自分が持っているイメージ 正しいイメージ ギャップは?

フライトを始めるにあたり「今までグライダーの操縦にどのようなイメージを持たれていましたか?」フライトが終わった後に「今のフライトでどのようにそのイメージが変わりましたか?」と問いかけをしました。「もっとすぱっと動くと思っていたが、思っていた以上にゆっくり(タイムラグがあって)動くことが分かりました」「また、思っていたより、小さな操作で動くことが分かりました(もっと大きな操作が必要だと思っていました)」とのこと。

とても良い点に気がついていると思います。人間は自分が持っているイメージで判断をします。イメージが間違えてインプットされていると、間違った判断をします。また、出来上がってしまったイメージの作り直しはとても工数がかかります。間違ったイメージが固定化(長期記憶化)する前に、イメージのギャップを言語化してもらうことで、練習生の思っていること、実際とのギャップを練習生に理解してもらい、イメージに誤りがあると思われるときは正しい方向にイメージを修正(再インストール)していきます。

武井壮さんも語っていましたが、スポーツを上達するためには自分の身体をイメージ通りに動かす練習が必要、と言っています。逆に言えば、多くの人がイメージ通りに体を動かせてない(イメージが間違えている)ということです。

・練習はブリーフィング→デモ→実践→デブリーフィングで行います。また、答えをすぐに与えずに、どう思ったかを問いかけます。問いかけをして、練習生の感じて居ること、考えていることを引き出します。

・理解を押しつけない。(分かった?みたいな聞き方)
 「分かった?」「はい」は、多くの場合分かっていません。
 
 「どう思った?」「どう理解した?説明してみて」「イメージとどうだった?思っていたことと違う部分あった?」と、理解度を説明(言語化)してもらうことで、練習生の理解度がわかります。


3. 十分な正しいデモ→実践→何に気がついたか?気づきを与える問いかけ

初期段階として、まずはピッチを変えた際の見え方の変化(「地平線」ではなく「空と地面の大体の割合」)、それに伴う「風切り音の変化」を認識してもらい、最後に確認として「計器の変化」をみてもらいました。

「私の操縦に手を添えて、足を添えて、インストラクターがどのくらい動かしているかを感じてください」

「空と地面の割合はどれくらいですか?」
「このときの風切り音を覚えてください」
「これが 95km/h の時の見え方と風切り音です」

「ではピッチを下げてみますね。110km/h まで増速します」
「このときの空と地面の見え方の割合はどれくらいですか?どれくらい変化しましたか?風切り音はどう変わりましたか?」

「では次は 80km/h までピッチを上げます」
「このときの空と地面の見え方の割合はどれくらいですか?どれくらい変化しましたか?風切り音はどう変わりましたか?」

「では95kmh/ に戻します」
「左手でトリムを合わせてみましょう。右手をスティックから離して、、空と地面の景色の見え方の変化はどうなりましたか?風切り音はどう変わりましたか?」
「地面が増えて、風切り音が大きくなっていますね。ではもう一度私の方でピッチを95km/hに戻します。このピッチでもう一度トリム設定してみましょう」
「トリムが合いましたか?では右手を離してみて。。ピッチはどうですか?地面と空の見え方は一定になりましたか?安定して居ますか?風切り音はどうですか?」
「よいですね、これがトリムセットです」
「トリムが合っていれば、ピッチに困ったときに右手を脱力すれば95km/hのピッチに戻ります」
「ピッチが一定するまで少し時間がかかります。待つのがポイントです」

上記をデモで手添えで行い、問いかけをして練習生の認識したことを聴くことで景色の見え方の変化、音の変化、そのときの舵の使い方、ピッチが安定するまで待つこと、トリムの使い方の認識、を行います。デモ実施後は練習生に操縦してもらいます。

「何の変化で感じるのが早いですか?(景色の見え方が早く気がつけます)」
「音はどうですか?(音はその次の感じです)」など。

外を見ることを意識を向けてもらい、速度計は確認程度にします。後席からみて頭が下がっていないか、前方遠方にアイポイントが置かれているか、をチェックします。

今回はピッチコントロール、トリムセットを理解し実践できたところで、2回目のフライトは旋回練習を行いました。
インストラクターマニュアルに習い、以下のプロシージャーで実施します

・バンクはしっかりと30度つける(緩バンクはスピンへのリスクが高まる。)

・最初は持続旋回から行います。バンクが付いているためピッチダウンが起きます。ピッチダウンが起きることを明示的にすることで理解をしてもらい、ピッチを保持する(支える)操作をしてもらいます。この時操縦桿を握りしめてしまっていると「支える」意識が生まれません。握りしめていないと「支える」イメージを持つことが出来ます。

・リフトがある時はリフトにあおられて変化するバンク、ピッチを修正も練習します。バンクが深まるとさらにピッチダウンするので、これを維持させることも良い練習になります。
 「どうなってきた?バンク深くなったね。何が変わった?地面が大きく見える、いいね。音が変わったのに気がついた?気がついたのいいね。まずは直し方のデモをやろう。最初にピッチを支えて、次にバンクを戻してみて、手足一致で動かして、どうなった?」
「じゃあ自分でやってみよう!」

・バンクが深くなってくると、視野がどう変わっているかを問いかけて、狭くなっていることを認識したら、コントロールできるバンクに戻してもらいます。

・練習に集中しすぎると、練習生の上体が前屈みになっていく傾向があります。これは練習生の視野が狭くなっていることを示していますので、声かけをします。
  「リラックス、肩を開いて、背中をシートに着けて、遠くを見て、深呼吸」

・バンク変化に気がつけなくなってきたときも同様です。練習をそのまま続けることはせず、適時リラックスのタイミングを入れます。インストラクターがテイクオーバーして、正しい状態に戻してから練習する、一呼吸深呼吸を入れてみる、など。1フライト10分では練習として短かすぎますが、1時間以上は長すぎて集中力が持続できなくなるため、30分から1時間の間で同じ事の反復練習を行います。(集中力の持続と反復練習のバランスをとる) 

・悪い状態(オーバースピード、オーバーバンク)が継続すると良いイメージは残りません。大きくずれてしまうようであればすぐにインストラクターがテイクオーバーし、正しい状態に戻してから練習生にハンズオーバーした後に練習を再開しましょう。悪いイメージは脳に良くない影響を与えます。また、ネガティブなイメージほど脳に強く記憶されると言います。そのためにも練習生に良いイメージを残すことを心がけます。

・ 着陸後、インストラクターの舵の使い方がどうだったか、今まで自分が持っていたイメージはどうだったか、をデブリーフィングします。 練習生はおそらく、「大きなグライダーなのでもっと大きな舵を使うと思っていました」と答えるでしょう。
    「練習生の持っていたイメージ」と「正しい操縦時のイメージ」の違い認識してもらい「正しいイメージはなにか」を練習生にインストールすることが大事なポイントです。(この例だと舵はそんなに大きく使わない、とか、)

・持続旋回の維持が出来るようになったら停止操作を練習します。
 エルロンとラダーを調和させて停止することを意識してもらいます。またピッチを引っ張りっぱなしのままだと速度抜けになりますので、停止操作とあわせてピッチを戻す(引っ張っていた手を緩めてトリムされている位置にピッチを戻す)ようにします。
 この段階では停止方向はそれほど意識させず、スムーズな停止操作を意識してもらいます。(停止方向にこだわると無理矢理な停止操作となり、手足不一致になります。前を見て、手足一致でコーディネーションが取れた練習を心がけます)

・停止が出来るようになったら初動練習に入ります。(この順番もインストラクターマニュアルの通りです)

・初動練習の開始前に「旋回はエルロンでしますか?ラダーでしますか?」と質問し、練習生の理解を確認します。「ラダーから」と間違って認識している場合はイメージを訂正します。

・ターンはエルロンから入っていくとエルロン抵抗が発生します。そのためエルロン抵抗を打ち消すようにラダーを使うこと、をイメージしてもらいます。このやり方の場合、最初ノーズが旋回逆方向に一度動いてからノーズが回っていきます。そのため慣れてきたら、ノーズが旋回のバンク開始と同じレートで回っていくようにラダーを使っていく、イメージを持つ練習をしていきます。

・地上でブリーフィングした、「右ラダーを踏んだら、左ラダーを戻す」(左を踏みっぱなしにしてたらいくら右を踏んでもラダーが効かない)を認識してもらい、ラダーを操作の練習を行います。

・旋回のアウトサイドウオッチが気になりすぎると、前を見ずにターンして滑った旋回になってしまうので、機首方向を見るように注意を促して滑りの無い操作を心がけてもらいます。(将来的なスピン対策としても重要)

2回目のフライトでここまで出来るようになりました。3000ft離脱、弱い上昇気流があり持続旋回練習で高度が下がらずに練習できたため、2発とも30分づつの練習が出来ました。(板倉滑空場ではまとめての練習を推奨するため、練習生には3000ft以上での練習を推奨しています)

進捗のテンポがとても良かったので、3回目のフライトを誘ってみました。Wさんも手応えを感じていただいていたのか、3回目のフライトを行うことになりました。

3回目は曳航途中から操作を練習生にハンズオーバーしました。インストラクターマニュアルでは航空機曳航は最も最後に練習させる課目(上空課目が出来るようになってから)となっています。ちょっと早いかと思いましたが、上空の進捗が良かったので練習生に実践してもらうことにしました。
曳航機があると、どうしても視野が曳航機だけに集中しがちです。
「絵のようにみて」と声かけすると、練習生は視野が狭まっていったことを感じることが出来、狭まった視野→視野を広げる、の練習ができました(前屈みの体が後ろに戻ったことで視野が広がったことが確認出来ました)。上空操作ができてきたこともあり、視野が広がった後は曳航も安定していました。

 このことから、視野の変化で如何に操縦が出来なくなるかを理解してもらうことできました。

上空では180度切り返し課目を行いました。コーディネーションを高めるために切り返し課目を行い、旋回のコーディネーション力を高めました。また、コーディネーションが良くなってきたので、さらに停止方向も意識するようにしてもらいました。

2018/01/26

操縦教育のイノベーション その1


MARUの野望の一つは操縦教育にイノベーションを起こすことです。年間200人近い大学生がグライダースポーツを始めているのに、継続率は高くありません。傾向として、グライダースポーツを楽しむ、というよりは、団体生活を楽しむことに比重が置かれているので、グライダースポーツ自体を楽しんでいるわけでは無いことは理解しています。とはいえ、もうちょっと早い段階でグライダースポーツを楽しむ・楽しめるようになれれば、もっとグライダーフライト自体を続けてくれる若い人が増えてくれるのではと考えています。他のスポーツでも、楽しくなるまでに時間がかかると辞めてしまう割合が高いと言われ「楽しめるように早く上達させること」を課題に挙げているスポーツ(ゴルフ)もあります。

グライダーも同じタイプのスポーツだと考えており、より早く上達できることでグライダーをもっと楽しめるようになるための教え方を模索しています。これまでも試行錯誤を繰り返し、グライダーインストラクターマニュアルからインスパイアされた内容とコーチング、メンタルトレーニングの考え方の中でトライしたい教え方をあたためていたのですが、今回それを実践する機会に恵まれました。

対象となった練習生はWさん。最近クラブに入会された20代男性で、グライダーはまったくの未経験の方です。学生時代はずっとラグビーをされていたとのことなので、スポーツに対する考え方や捉え方はしっかりされています。気合いと根性だけでスポーツをやっていたわけでなく、自分なりの上達した経験や上達しなかったときの経験を持っています。



今回、以下のポイントを踏まえてWさんとのトレーニングを行ってみました。
  1. 初期教育の重要性(初頭性の法則)
  2. イメージ 現在の自分が持っているイメージ 正しいイメージ ギャップは? 
  3. 十分な正しいデモ→実践→何に気がついたか?気づきを与える問いかけ
  4. 言語化
  5. フェーズにあわせた適切な練習内容(できるまえにやらせてはいけないこと、早い段階からやるべきこと、)
  6. まとめての集中、反復トレーニング
  7. 褒める、自信を持たせる、小さな成功を繰り返す、問いかけて考えさせる、トライさせる
1. 初期教育の重要性

Wさんはまだクラブに入会して1ヶ月、3日目の参加で、飛行経験は航空機曳航で4回です。内1回は一時間ほどの同乗ソアリングをしています。
まだほとんど自分のやり方は無い状態ですので、真っ白なキャンパスに描くように教えることができます。ので、教えたことを素直にそのまま実施されます。自己流になっていない段階であるため、最初に基本を教えると忠実に実施してくれます。
インストラクターマニュアルにも初頭効果の話しが書かれています。最初に正しいことをインプットすること、間違ったイメージをインプットすると正しいイメージを再インストールするのに時間がかかる、と書かれています。

まずは以下の点を説明するプリブリーフィングを実施しました。

a. 視点の持ち方
 櫻井玲子さんの提唱されている「絵を見るようなイメージ」で全体を見ることをイメージしてもらいました。

「xxに注意する」という言い方になると、「xx」に注意がいってしまいます。結果、「点」で物をみるようになってしまうので、点でみるのでは無く、全体を絵で見るように心がけます。また、「xxするな」といった教え方、いわゆるネガティブワード(否定形)での指導は適切でないと言われます。目標設定においても同様で、「xxできるようにする」「xxをするようにする」といったポジティブワードで目標設定します。


櫻井さん資料より引用



ある一部分を指摘しすぎる(例えば速度)と、そこばかりみてしまうので、全体的に捉えさせること、
全体的に捉えているところから、狭いところに意識が集中してしまった場合の差を理解させる、意識させる、というところでしょうか。


b. スティックの持ち方
 「上の方を添えるようなイメージで握ること」を伝えました。
何も言わないと、多くの人がスティックを緊張状態から握りしめてしまいます。ラケットスポーツをしている人であれば、ラケットをどのように持っていたか、ゴルフクラブをどのように持っていたときに上手く打てたか、を伝えます。何故添える程度なのか(舵から伝わる気流の力を感じる為)、握りしめると何故ダメなのか(舵から伝わる気流が感じられなくなる、腕の筋肉の緊張状態から全身の筋肉の緊張状態となり、G変化が感じられなくなる)を理解してもらいいます。スポーツのバックグラウンドがある人だとこのあたりが伝わりやすくなると思います。

c. 舵の動かし方
 スティックの動かし方について、説明しないと右肘を中心の円運動をしてしまうので、結果的に右旋回時にエレベーターを下げる動きが伴いピッチダウン、左旋回時にエレベーターを上げる動きが伴い、ピッチアップします。右肩を中心に動かすイメージで、舵を左右にまっすぐ動かす運動であることを意識してもらいます。

 ラダーの動かし方について、足は手に比べると感覚が相当鈍いので、足を使うスポーツの方が手を動かすスポーツより難しいと言われます。初めて自動車教習所に行った頃に、クラッチ、アクセルが上手く動かせなかったことを思い出してもらいました。また、右を踏んだら、同じだけ左を戻す、股関節で動かすことをイメージしてもらいました。

d. リラックスすること
 最初のフライトで緊張状態になるな、というほうが難しいのですが、緊張状態になるとなにがおきるかを説明しました。
 ・視野が狭まる。緊張状態になると情報を遮断することで処理能力を高める人間の脳の自然な動きであることを理解する。逆に言えば、視野が狭まっている = 緊張状態
 ・筋肉がこわばる = G変化を感じられなくなる

スポーツの素養があると、緊張がグライダーにどのような影響があるか?の説明がしやすくなります。上手く行くとき、上手く行かないときの自分のパターンを知っているからです。
 例 問 ラグビーでゴールキックに失敗するときはどんなときでした?
 答 結果に追われて緊張していて。。 これを決めれば、と思いすぎて。。
 そうですね、人間は緊張状態に入ると、視野が狭くなります。視野が狭くなると、傾きの変化に気がつくのが遅れます。


 自分の経験と、結びつけさせて理解してもらいました。

 舵を握りしめない、とかも、スポーツをやっていると当たり前に受け取ってもらえます


e. 見張り
 アウトサイドウオッチは初期段階から教えています。
 お仕事柄、目の構造には「盲点」見えない場所がある、「中心視」せまい、「中心視野」、「周辺視野」動きを認識できる、は理解されていました。これらの知識を踏まえた上で、なぜスキャンニングが必要か?(盲点、周辺視野をつかって、動いている物体を認識、その後中心視野で認識)を理解してもらいます。スキャンニングを教えるにあたり、目の構造を理解することで、練習生にスキャンニングの重要性を正しく効果的に理解してもらえることと、練習初期から実施することで、「習慣化」させます。

2016/04/02

BGA グライダーインストラクターマニュアル 翻訳完成!



BGA Instructor Manual (イギリス滑空協会のグライダーインストラクターマニュアル)の翻訳が終了し、ついにリリースする運びになりました。2012年から20名のチームで分担して翻訳を開始し、英文ページ数で 167ページ、日本語訳後 29万字、258ページの大作になりました。チームの皆さんに翻訳頂いた後に、レビュー、再レビュー、再々レビューと数回のレビューを繰り返し、ようやくリリースにこぎ着けました! 昨年10月からは毎週末かかりきりで、言い回しの難しい英語にも大分手こずりましたが、ようやく完成です!

経緯については下記記事を参照ください。

JSA インフォメーション 299号 インストラクターマニュアルプロジェクト
JSA インフォメーション 303号 インストラクターマニュアルプロジェクト 続報


ただし、この翻訳版マニュアルは誰彼問わず配布できる、という性質のものではありません。 British Gliding Association からは「将来的に日本版グライダーインストラクターマニュアルを作成する際の参考版として利用することに限っての利用」だけが認められているのです。

したがって、配布については滑空協会から各クラブの代表者を経由して各クラブのインストラクターに限定して利用して頂くよう配布の案内をさせて頂いています。そのため、配布させて頂くインストラクターの方のお名前を頂戴しております。

またこういった事情から、配布、利用についてはインストラクターに限定しており、再配布は遠慮していただくようお願いしています。インストラクターの方でまだ配布の案内を頂いていない方がいらっしゃいましたら是非ご自身のクラブの代表インストラクターの方に相談してみてください。(もしも滑空協会からの連絡が届いていない場合は滑空協会宛にご連絡頂けますと幸いです)

というわけで今回のブログでは、このマニュアル翻訳版や、つづく日本版インストラクターマニュアルの作成を通して、私がやりたいと思っていることをつれづれと書いてみることにしました。

私は、皆さんがもっとグライダーを、ソアリングを楽しめるようになってほしいと常々思っています。そしてそのためにグライダーの技量をもっと効率的に向上させる方法を確立させたいと考えています。

それが私の考える「操縦教育のイノベーション」です。

私はグライダーを始めて25年が過ぎ、飛行時間は3000時間を超えました。
こんなに飛んでいるのに、飽きもせず、最近はグライダーでのソアリングが楽しくて仕方ありません。 この状態になったのは 飛行時間1800時間を超えた頃、2008年に世界選手権に出た後くらいからでしょうか。あきらかに壁を一つ越えて楽しくなりました。
それ以前の1000時間 - 1600時間くらいのころは6000フィートくらい上がる空でないと楽しくないと思っていました。思うにこのころはまだ大切なものが見えてなかったのだと思います。

でも、これでは時間がかかり過ぎです。多くの人はここに至る前に空へのモチベーションを失ってしまうのではないでしょうか。もっと効率的に上達することができれば、もっともっとグライダーを楽しめるようになるはずです。

ここまで時間をかけず、効率的に本質が学べる、教えられるプログラムを開発できれば、本当にグライダーを楽しむ人が増え、楽しめる人が増えればこの世界はもっと発展するはずです。コストが、時間が、空域が、といった制約要因は様々にありますが、人間は本当にやりたいとおもうことであれば制約要因を乗り越えてやるようになりますので、いかに「本当にやりたいか」と思うようにさせることが大事と思います。

これは多くの人が経験することですが、ソアリング、グライダー操縦の上達の途中で壁に当たってしまい、成長が止まってしまい、楽しくなくなってしまう時期があります。人によってはそれが早い人もいますし、遅い人もいます。どんなレベルであれ、成長が感じられている間は楽しいのですが、成長が感じられなくなると楽しくなくなります。楽しくなくなると(成長しなくなると)モチベーションが感じられなくなり、このスポーツから離れていきます。

私は、継続的に成長を感じさせられることがこのスポーツを継続できる秘訣だと思っています。(どんなスポーツにせよそうだと思います。ゴルフでは2年でスコア100を切れるとおもしろさを感じて続けるそうで、2年で100を切れるような教育プログラムを考えているとの記事をどこかで読みました。)

では、この現状をどうやって変えていったらいいのでしょう?
私は、①技術論として、「正しい話を教えること」 と、②方法論として、「自発的に考えて学ぶ姿勢を開発すること」 の2つを考えています。

成長を加速させるためには、「正しいイメージを早期に形成すること」、そして「正しい手順を伝えること」が必要と思います。

多くの人は「自分で出来ることはこれくらい、これ以上は無理」と自分で自分の限界を決めてしまう「自己イメージ」を持っておりますが、この「自己イメージを作り替える」ことで限界を超えることができるようになります。

また、「失敗を指摘する方法」では無く、「良いイメージを残す方法」が必要です。細かく指摘する方法では無く、「自発的に考えさせる方法」が必要と思います。

このイギリスのテキストではおそらく当然のこととして記載が無いのですが、ヨーロッパではグライダースポーツは本質的に 個人のスポーツ として教育されます。ところが日本では現在、グライダー教育は 集団のスポーツ(学校体育)が前提になっています。

実はここに、大きな落とし穴があります。集団で管理されたローカルフライトに慣れ切ってしまうと、個人の責任のもとにより広い世界へ飛んで行く技術、つまりクロスカントリーフライト への移行が自発的に、かつスムーズに行われなくなってしまう可能性が高いのです。そこから先の世界にこそ、グライダースポーツの本当の楽しみが待ち受けているにも関わらず…です。
(操縦教育の早期からの考え方自体を変えるべきかもしれません)

上記を実現するために、新しい教え方の標準化が必要と思っています。そのために必要なのはテキストと、講習会(実地、学科)を通じた伝搬です。とくに指導者層となる人に伝えていくことが必要と思います。新しい教え方ができる人が少しずつ増えていくことで一歩ずつ変えていけるようになると思います。

このためには指導者がつねに学び続ける意識を持ち続けること、学び続ける意識を持ち続けるにはつねに自分を高めたい意識を持ち続けることが必要と思います。

「学ぶことをやめたら、教えることをやめなくてはならない」 「コーチである以上、ずっと学びつづけて欲しい」2002年のサッカーフランス代表チーム監督のロジェ・ルメールさんの言葉です。日本サッカー協会の公認コーチ研修ではかならずこの言葉が紹介されているようです。

というわけで、まずは BGA Instructor Manualの 参考になる部分を使っていき、足りないと考えられる部分は自分たちで書いて、伝えていくことが必要と思っています。

この翻訳プロジェクトがその第一歩となることを期待しています。



このマニュアルの章立て

8つのセクション(章)に分かれており、それぞれのチャプター(節)の流れは下記のようになっています。

1  操縦教育手法について
2  地上作業についての座学
3  ログブック取り扱い要領
4  チェックリスト
5  ルックアウト(見張り)
6  エアマンシップ

7  舵の効果
8  トリムの利用方法
9  直線滑空
10 旋回
11 エアブレーキとスポイラー
12 アプローチ
13 着陸

14 場周飛行1. ブリーフィングとデモンストレーション
15 場周飛行2. 練習生の飛行

16 ウインチ曳航
17 航空機曳航

18 ストール
19 スピンとスパイラルダイブ

20 ファーストソロ
21 フラップ
22 機種移行
23 ソロ飛行の監視
24 サーマリング サーマルへの進入とセンタリング技術

25 ナビゲーション
26 無線交信要領
27 気象と教え方
28 曲技飛行のトレーニング

29 トライアル練習の実施
30 インストラクターのしゃべり方
31 組立・分解と飛行前点検


我々は練習生を相手にすると 体験搭乗 → 単舵操作 → 直線滑空 とフライトを進めていますが(上記の7節以降から始めているケースがほとんど)、この本ではその前の1〜6節で 空を飛ぶ上で最低限必要なこと を記しています。

大学航空部出身の私の教わり方(教え方)では少なくとも 5 Lookout や 6 Airmanship の部分の教育が欠けていることに気がつきました。私が大学生で航空部入部時はまだ『風を聴け』が無く、『グライダー操縦の基礎』がベーシックのマニュアルでした。練習生の操作は直線滑空や単舵操作から始まっており、このインストラクターマニュアルの Section 1の部分の教育が改めて欠けていたなと改めて感じました。
「風を聴け」は、2、4は含まれているものの、1、3、5、6は漏れていますので、改善が必要と感じました。

人は、新しいものを見るとどうしても How の話に目が行ってしまいがちですが、皆さんがこのテキストを読み込む際には、まず、 What, Why を考えてみてください。このテキストが何を目的にパイロットを育てようとしているのか?

私は、このテキストは 「一人の独立したクロスカントリーパイロットを育てる」ことを目的としていると思います。

もちろんこの本には、皆さんがにわかには受け入れられないものもあるでしょう。でも、まずはその背景としてどういった考えが根底にあるのか、一人の独立したクロスカントリーパイロットを育てる、という観点で、現在日本で主流の教え方と、比較してみることを期待しています。そのためにはインストラクター自身がクロスカントリーパイロットとは何かを考える必要があります。

配布と同時にアンケートも配布させて頂いています。無記名で回答できますので、お気づきの点がありましたらお気軽にアンケートでお知らせください。

あわせて日本版インストラクターマニュアル作成チームも立ち上がりつつあります。こちらのプロジェクトについても興味がございましたらアンケートでご連絡を頂けますと幸いです。

丸山 毅