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2016/04/30

2015年春 再び Centka 氏とトレーニング

JSA インフォメーション 308号からの抜粋記事)
2015年は日本で春の天気が恵まれず、フライトの練習は昨年に続きポーランド合宿がメインになりました。春の連休を利用し、世界チャンピオンのセントカ先生に再度教えを請うことにしたのです。

10日間の合宿で6日間のクロスカントリーフライトトレーニング、4日間はみっちりと座学、ブリーフィングで、今年も先生からは連日の厳しい指導をいただきました。

昨年に引き続き、平野を早く飛ぶためのOSに入れ替える(自分のフライトスタイルを変える)ための特訓を行いました。日本とは地形が異なるポーランドやハンガリーに合わせ、頭と体の新しい回路をつなぎ替える作業です。反復トレーニングを繰り返して、時間をかけて体が考えずに反応できるようにする必要があります。2014年の合宿は平野を早く飛ぶための第一回トレーニングで、少しやり方が見えてきたところでしたが、2014年の世界選手権の結果を分析してもらったところ、他のパイロットと比較してサーマル中での上がりが悪く、特にコンディションの良い日のグライドが悪いことが課題として整理できました。今年はさらなる改善を求めて先生に特訓をお願いしました。昨年度は選択肢を整理することで、考えずに体で反応できることの重要性を意識しましたが、今年は昨年度よりもさらに考えずにオートマチックに反応できることを目指しました。反復トレーニングによる刷り込みで、ラニーバッシャム(1976年モントリオールオリンピック射撃競技の金メダリスト)の「メンタルマネージメント」に書かれている「下意識」の強化を目指しました。
 
図 2 今年も熱血指導頂いたセントカ先生

・マクレディ理論 マクレディセットに対する高度(ハイトバンド)にあわせた速度と選択するするリフトの基準
1970年代に考えられたマクレディ理論は空気の上下動に合わせて速度を変化させますが、理論を追いかけすぎると、ピッチ変化に伴うエネルギーロスが大きいので逆に非効率になると言われていました。90年代に平均上昇率の半分程度のマクレディー値に速度をセットして、一定スピードで飛ぶ「ボックススピード理論」が紹介されました。キープハイを心がける飛び方(日本のようなアウトランディングしづらい環境での飛び方)ですとこの飛び方は良いのですが、現代の高翼面荷重で滑空比が大きく、空気抵抗の少ない18mクラスの機体でアウトランディング可能な平野を早く飛ぶという観点ですと最適では無いようです。
先生の飛び方は基本的にはマクレディ理論で飛んでいます。マクレディ設定値をタスクフライト中の平均上昇率、ないしは2/3程度に設定した速度で飛びます(LX9000だとタスクフライト全体の平均上昇率が表示できます)。図3のような形で高度に応じてマクレディ設定値は変えず、選択するリフトの強さと速度を変えています。高度の低いところ(600m以下)は基本使わず、600m~上昇気流の上限までの高度を 1/3 ずつのレンジに分けて、高いところではマクレディセット値以上のサーマルでないと回らない、速度もマクレディセット値以上で飛び、高度が下がってきたらマクレディセット値以下の速度で飛び、マクレディセット値以下の強さのサーマルでも回る、というものです。
頭では理解できますが、体がそのまま反応するように、すり込みます。

・前方の状況にあわせたこまめなマクレディ設定
マクレディセット値は前方の状況が変化するとそれにあわせて設定値を変更しています。状況が良くなれば設定値を大きくし、状況が悪くなるようであれば設定値を下げます。頭では分かっていても、状況の変化に対して設定速度の選択がどうしても遅れてしまうので、体が考えずに設定値の変更と、それに応じた速度セットの対応ができるようになるまで、反復トレーニングでのすり込みをしました。

・前方の状況、高度にあわせた雲、ターンの選択
私の悪い癖の一つとして、前方に雲があると高度にかかわらず回ってしまう、というのがあります。先ほどの図3から言えば、高い高度であれば、マクレディ値以上の雲でない限りは回る必要はありません。平均速度をあげるには、回っている割合を減らすことです。昨年の解析からもこの傾向が裏付けられます。前の雲だけでは無く、その先の雲、リフトの連続性を考慮して、回るのか、グライドを伸ばすのかを体で反応できるように刷り込みをします。
 
図 3 高度とマクレディ値、速度選択


・クルーズからサーマリングへの移行
フラップ機において、リフトに入った際の操作として、スティックでのズームアップが先か、フラップで減速するのか、が議論されます。先生のやり方はスティックが先です。180km/h(フラップ-2 のインターサーマルクルーズから、150km/h(フラップ-1), 125km/h(フラップ-0.50  と段階的にプルアップとフラップの両方を使っていて、リフティングしているエリアに入ったときには減速は完了しています。リフトを探って、本当にロールインする(回れるだけのリフトの強さがあると確信できる)ときは、フラップは0フラップ、ロールインする100km/hまでピッチをあげ、まずトリムをセット、ターンを試みながら、ターンを確立できる段階でフラップをリフトに応じて+2までセット、もう一度トリム、その段階でLX9000の縮尺を最大縮尺まで拡大して、サーマルアシスタントを活用します。ので、左手はトリム→フラップ→トリム→LX9000の縮尺拡大、とサーマリングの段階に応じて常に移動しています。ポイントはトリムセットが先、フラップは後、だと言うことです。トリムが合っている状態だと、スティックから感じるリフトの強さ、分布状況が分かる能力が驚くほど違います。これはフラップの無い機体でも同じで、クルーズ速度からリフティングしているエリアに入り、クライム速度に移行した際に、トリムが確立して、右腕に無駄な力がかかっていないと、操縦桿から上昇気流の感じる感覚が全く違いますので、是非試してみてください。
これも考えずに体がスムーズに動くようなプログラミングです。

Big Cu のどこを探すか、Big Cu small thin cumuli
日本の雲と比べて異なるのは積雲の大きさです。これは複数のセル(複数のサーマルソース)から一つの積雲が構成されているためと考えられます。日本の積雲ですと一つのセルから構成されていることが多いので、サニーサイド、風上側を選択することになりますが、複数セルで構成されている大きな積雲の場合、狙うのは雲の中央、濃いところになります。ちょっと垂れ下がったウイスプがあったり、ステップがあったりするとなお良しです。ヨーロッパの大きい雲でも、午後遅い時間になってくると、日射側が良い場合が出てきます。
また、大きな積雲があると見落としがちですが、雲の中央下部、雲のすぐ脇にもフレッシュな small thin cumuli が発生しますので、めざとくこの小さいフレッシュな雲を見つけることも大事です。
また、雲底に上がってしまうと次の積雲が分からなくなるので、低いうち 50km 先まで、地上に映る雲の影を利用して雲の連続性を見る、ターン開始時点でも一つ先(1km), 二つ先(2-3km), 三つ先(5km) の雲を見ろと言われます。

・サーチ方式 Sマニューバー、マニューバー45
大きな積雲ですと雲の直径が2-3km なんてこともあり、上記のように「濃いところ」といっても結構あるわけです。その際は積雲の下の濃いところを結構丹念に探します。S字ターンをしたり、45度ぐらいまでロールインしてから切り返したり。時には積雲の下をサーチするために90度近くオフトラックもします。タスクが決まっていて、レグが決まっていると、雲の下とはいえ、レグに対して90度ターンは無駄な気がしてしまい、スムーズなカーブを描きながら通り過ぎる感じで雲の下を探していた私には「こんなに丹念に探すの?」と思うくらい、Sターンしながら探し回るイメージです。切り返しは結構アグレッシブに切り返します。(積雲下では全体的には空気はあがっているので、アグレッシブに切り返してもロスは少なく、本当に良いところ(アベレージ3m/s以上) は限られているので、本当に良いところに行くため、探すためにアグレッシブに場所をサーチするイメージです。)

・スタートまでのチェックリスト
とくに低いうちは無駄に動き回らず、まずはとにかくリフトの上限まで上がりります。幅10kmのスタートライン上を移動して、スタートラインから先のエリアを観察し、時には第一レグをしばらく進んでみて、スタートラインのどこからスタートするのが第一レグで最も良いラインを飛べるのかを決定し、想定するラインを飛べるように対地目標を設定して、想定通りのコースを飛べるようにします。レグのリフトの状況がスタートラインのどちらからスタートするのでも良いと判断されるのであれば、風上側のスタートラインからスタートします。その日のコンディションから予想される平均速度とタスクの距離からタスクのエンルート時間を想定し、想定フィニッシュ時間からエンルート時間を差し引いて最も遅いスタートタイムを計算しておき、スタートスロットウインドウを決定します。先生は基本アーリースタートを勧めます。
スタートは競技においては最も重要なタイミングで、考えるポイントがいくつもあります。スタートは最も機体が密集し、空中衝突が起きやすいタイミングなので、安全第一で、積雲コンディションでは他機を見えない状況にしないようにします。

AAT(エリアタスク)でのルート選択
第一エリアはコンディションが悪くない限りはなるべく奥まで飛行します。エリアのターンは鋭角に回り、レグで蛇行しないようにすることで距離が有効に伸ばせます。レーシングタスク(フィックスタスク)に比べると、エリアタスクの方が良いエリアを選択できるので、平均速度が速くなりそうですが、経験的にはレーシングタスクの方が平均速度は速いそうです。(選択肢が多いと迷ってしまう人間の特性でしょうか)。

always plan, revise plan !
常に次にやることのプランを持て!とはいえ、空は常に変化し続けるので、決めたプランに固執せず、常にプランをリバイスし続けます。プラン無しに次のクルーズを始めることだけはしないようにします。

90 degree right, 90 degree, left, up , and down !.
私の良くない癖として、行き先の目標(例えば次の大きな雲)を決めてしまうと、そこだけを見てしまう癖があります。視野が20度くらいに狭まってしまい、すぐ横に新しい積雲がポップしているのに気がつかずに通り過ぎてしまったり。。LX9000フライトコンピューターには、一定間隔毎に画面上に警告を出すタイマー機能があります。10分ごとに「右90度、左90度、上下!」と自分の注意喚起をする機能を設定して、一点集中してしまっている自分への気づきをさせて、視野を広げることを心がけています。

・ロールイン時に息を止めない Relax !
集中しすぎて力を入れてしまうと、人は息を止めてしまいます。顕著なのは「このサーマルで絶対に上がらないと!」といった低くなって追い込まれた状況でのリフトへのロールイン時です。息を止めることで、筋肉が緊張し、気流のアップダウンを感じづらくなり、酸素が脳に行かなくなり、正常な判断ができなくなります。ロールイン時に歌を歌いながら(なにかをしゃべりながら)ロールインすることで息を止めてしまうことを防いで、さらに上記のLX9000 のタイマー機能で自分自身が緊張していることを気づかせています。
緊張して、ストレスのかかった状態になると、交感神経が働き、筋肉が緊張します。これを緩めるには、副交感神経を働かせることです。ゆっくりとした腹式呼吸での深呼吸が有効です。聞いた話ではフィギュアスケートでもジャンプの時に息を止めているとジャンプを失敗するそうです。

・重心位置
重心位置については多くの皆さんは出発前の確認で「許容範囲に入っていればよし、前方付近だと速度がつきやすく~」といった程度しか気にしていないと思います。重心位置は上昇気流内の上昇のしやすさ、サーマル旋回での速度コントロールに大きな影響があります。たとえばArcusでは許容重心範囲100mm - 290mmの範囲に対し、220mm-240mmの重心位置が最適とフライトマニュアルに記載があります。まずは推奨範囲に入れてみるだけで普段のハンドリングとは全く変わってきます。どの機体も最適な重心位置があるので、皆さんも是非試してみてください。

・直感に聞け、直感を育てろ
以前の私は「直感」 とは 「センス」だと思っていたので、運動センスの無い自分には直感のようなものはあまりないんだろう、と思っていました。(自分は運動センスがあまりなく、「ハンドアイコーディネーション(目で見たものをそのまま動作する)」能力が低いので、新しい動きの習得には時間がかかります。ですが最近思っているのは、このレポートでも伝えている、「根拠を持って、脳と体の回路を新しくつなぐ」ことをすることで、直感が、考えること無く自然に見えてくるようなものなのではと考えるようになってきました。
将棋の羽生善治さんの本(直感力)にも「直感は、本当に何もないところから湧き出てくるわけではない。考えて考えて、あれこれ模索した経験を前提として蓄積させておかねばならない。また、経験から直感を導き出す訓練を、日常生活の中でも行う必要がある。」とあり、この考え方に近いものを感じています。

トレーニング最終日はフライトで学んだことを実践してみよう、ということで「今日はしゃべらないからおまえの判断で飛べ」と先生から指示が出されました。5時間のフライトの間、先生は上空でメモ用紙3枚に、ほぼ10分おきにびっしりと指摘事項をメモしていました(例 15:09 1600mあるのに回る必要なし、など)。私が良い判断をしたときは後席から”Goood ! Takeshi “ と褒めてもらえるときもすこしだけありました。大部分は「No! Takeshi, no, no, this is your flight, fly with your decision !(いやいや、これはおまえのフライトだ、おまえの判断で飛べ!)」ですが、、指摘事項はその場では指摘せず、自分の判断で飛ぶことを私にさせていました(プロフェッショナルコーチとして、「やらせる」ということを徹底しています。)タスクフライトを終了し、着陸後はseeyouでフライトログを見直しながら3時間以上のデブリーフィングを実施。自分の判断と、先生の視点から見て何が違ったかをディスカッションして、この10日間で身につけられた部分、まだ判断の改善が必要な部分の整理で終了しました。

帰国後はデブリーフィングのメモを再整理し、昨年作成したフライト判断チェックリストを再度ブラッシュアップして、先生とのフライトをビデオで見直しながら空の判断基準とチェックリストを体にしみこませる作業を夜な夜な行いました。


2016/04/23

プレヨーロッパ選手権大会兼チェコ国内選手権大会

2018年にチェコで行われる予定のグライダー世界選手権大会に向けて準備を始めました。開催地はチェコの西部にある Pribram (プシーブラム)で、首都のプラハから車で1時間くらい南西に行ったところの町です。
チェコは1999年のドイツでの世界選手権大会で大会空域の一部として設定されたので、飛んだことはあります。もう17年も前で、当時はビザが必要で国境がありました、不時着もしたことがあります。

今回はチェコの空と国の視察を兼ねて、同じチェコ国内の別の滑空場(Moravska Trebova モラブスカ トジェボバー)で5月に行われるチェコ国内選手権大会に参加してきます。2017年にヨーロッパ選手権も行われる予定でそのプレ大会を兼ねています。この大会の結果を踏まえて、2018年のチャレンジを検討したいと考えています。


機体は前回と同じくハンガリーの友人のRichard, Gabor の ASG29E を借用して、Budapest から陸送予定です。今回はGabor が仕事で忙しく、クルーをお願い出来ないので、お手伝いは妻(リーダー)が来てくれます。

5/15(日) 出発、ハンガリーで機体を借り、陸送して現地での事前練習。競技会は 5/22(日) から 6/4(土)までの予定です。

早速地図を買いそろえてみました。左の VFR map が最も等高線が見やすく、中央の ICAO map は森は見やすいですが、等高線はイマイチでした。
中央上部の冊子はチェコの飛行場一覧の冊子です


かなりちゃんとしたライブカメラがあり、飛行場の状況が一覧で確認出来ます。

現地のフライトに必要な情報は大体ローカルのクラブのホームページにリンクがありました。










2016/04/17

2016 IGC meeting



2016/2/26-27 にルクセンブルクで行われた IGC meeting に滑空協会甲賀さんと参加してきました。世界の航空スポーツを統括するFAIのグライダースポーツ組織としてのIGCがあり、IGC meeting は年に一回開催される世界のグライダースポーツの各国代表委員が集まる総会です。例年2月終わりから3月はじめのヨーロッパのグライダーシーズンが始まる前に開催されます。専門委員会からの報告と、グライダースポーツのルール変更(競技会ルール、バッジフライト、記録飛行のルール)、競技会開催地についてが話し合われる場です。

日本では滑空協会からIGC委員が推薦されており、私は昨年までは副代表をさせて頂いておりましたが本年から代表委員を務めさせて頂くことになりました。日本からは毎年委員を派遣しています(費用は航空協会から補助がでています)。

このミーティングに参加することで世界のグライダー界の潮流を理解し、日本のグライダースポーツはどの方向に向かうべきかといった点にキャッチアップし、日本の皆さんにお伝え出来ればと思います。我々は島国で、文化的にグライダー先進国から離れたところにおり、自分たちが飛ぶことだけを考えたら世界のグライダーのことを知る必要があるのか疑問に思われる方もいるかもしれません。ですが、携帯電話の世界を見ても分かるとおり、ガラパゴス化すると、新しい考え方が入らなくなり、最終的にはその世界は衰退します。日本のグライダーがそうならないよう、世界の流れにキャッチアップしていきたいと考えています。直接的に皆さんに関係あることとしては国際滑空記章ルールの変更や、OLC(オンラインコンテスト)の運用があります。

私は昨年に続いて2回目の参加となりました。知り合いも増えましたし、物事を決める国際会議の流れが少しだけですが分かるようになってきたことで、コミュニケーションもスムーズに進められるようになりました。

日程 
              2016/2/26-27 9:00 – 17:30

開催地
              ルクセンブルク Hotel Sofitel 会議室

決定事項サマリー、議事録
              http://www.fai.org/downloads/igc/IGC_2016_Plenary_Decisions

FAIニュースリリース

参加国 
アルゼンチン オーストリア オーストラリア ベルギー カナダ チリ 中国 チェコ デンマーク フィンランド フランス ドイツ ギリシャ ハンガリー イタリア 日本 リトアニア ルクセンブルク オランダ ニュージーランド ノルウエー ポーランド ロシア スロバキア 南アフリカ スペイン スエーデン スイス トルコ イギリス アメリカ
代理 アイルランド〔イギリス〕 スロベニア〔イタリア〕 ルーマニア〔ポーランド〕
35ヶ国
トルコ、中国は昨年不参加。中国はグライダー協会の代表と言うよりは航空スポーツ全般の代表の方のようでした(日本で言えば航空協会のような組織の方)。中国は規制が厳しく、新しい機体の承認がなかなか降りないそうです
女性が代表を務める国も4ヶ国あります。(イタリア、オランダ、ロシア、トルコ)
参加55


レポートサマリー
1. FAI の方向性、SGP (Sailplane Grand Prix)
2. 13.5m クラスの方向性
3. 国際会議での議論の進め方、提案の仕方

その他
4. 決議事項
              4.a         大会開催地
              4.b         SC3A (競技会ルール関連)、SC3(バッジフライト、記録飛行関連)、SC3D(ランキングリスト関連)
5. IGC の予算決算
6. 各委員会レポート
7. 次回日程、開催地
8. 日本からの情報発信(おまけ)


1. FAI の方向性、SGP (Sailplane Grand Prix)

FAI 会長 John Grubbström さんから FAI の活動報告がありました。。(スエーデンの気球パイロット 2010年から会長。 佐賀の大会に来たことがあるそうで、日本には頻繁にいらしているそうです。)
大枠の内容は昨年の総会でプレゼンテーション頂いたFAI事務局長Susan さんのプレゼンテーションと同じ路線です。

FAI Mission
FAI the global organization for the promotion of air sports and recreational flying
FAI Vision
A world where safe participation in air sports and recreational flying is available to everyone at reasonable cost

昨年と絵は違いますが、High Profile event(注目を浴びるイベント) Spectator interest(観客の興味)、Media Coverage(メディアへのカバー)、Sponsorship(スポンサー) virtuous circle in event marketing (イベントマーケティングでの好循環)は今年も同じメッセージが出されていました。


1 イベントマーケティングの好循環

昨年は無かった新しいメッセージとしては FAIスポーツブランディングの話がありました。

2 FAI ブランディング戦略


World Air Games in Dubai

201512月に中東のドバイで行われたWord Air Game の報告もありました。開会式、大会の様子といった定性的な報告に限られ、定量的な報告がほしいと思いました(イベント参加数、決算、SNSのリーチの割合など)。場所が場所なので、なかなか定量的に報告する内容が少なく、定性的な内容になってしまうのだろうとは思いましたが。。
WAGでのグライダーについては担当理事の Roland Stuck 氏から報告がありました。上昇気流の内場所でのレースでしたので、グライダー・マッチ・レース(2機のグライダーで決められたコースを飛行するパイロンレース)といったイベントが行われました。参加パイロットはランキング上位のパイロットが招待され、6名のパイロットが参加しました。機体はフランス滑空協会が2機のDiscus2を提供しました。安全上の理由から海沿いの飛行場では無く、少し内陸に入った砂漠の中の飛行場で行われました。機体重量、重心位置がそろえられた2機のグライダーで、南北 8km ほどの限定された空域の中で高度 1000mから仮想的に定められたパイロンを通過する20kmほどのコースでの速度を競う競技が行われSebastian Kawa が優勝しました。現地での観客は関係者のみだったようです。また、ドバイの高層ビル群を海風でリッジソアリングしたArcusMのフライトの紹介がありました。


SGP(Saiplane Grand Prix)

昨年のIGCミーティング報告の中でもSGPが重点施策となっていることを紹介させて頂きましたが、その方向性は継続されています。SGP の目的は「我々グライダースポーツが広い視聴者へのショーケースとなること」と定義しています。

今回はSGP シリーズ6 (2014-2015) 最終戦 イタリア バレーゼでの グランプリファイナルの紹介がありました。
プレゼンテーションを行ったMargherita Acquaderni さん(女性)は地元のAero Club Adele Orsiのプレジデントで、自身も競技会に出場している熱心なパイロットです。60歳を超えていると思いますが遠目で見ると40歳くらいに見えるのではと思われるほどの年齢を感じさせないすてきな女性です。


3 バレーゼの大会委員長Margherita AcquaderniさんとSGP担当のブライアン氏

Varesse は北イタリア 湖水地方(ミラノの北)に位置する綺麗な飛行場で、グランプリ最終戦をクラブの50周年イベントとして実施しました。実施にあたり、20143月には IGC総会を誘致し、IGCの役員への理解を深めています。20145月はグランプリの予選第2戦を試行大会として実施して、万全の準備で大会開催へ臨みました。
大会は地元の町の協力を得て盛り上がった開催になったようでした。今回一つ参考になったのが、決算報告が開示されており、事業予算は約17万ユーロ(2200万円)で収支はほぼとんとんでした。内訳は大きな項目だけですが下記のとおりです。
収入(単位ユーロ)
            スポンサー                                          9.3
            Public Administration(地元政府?)     6.1
支出
            Reimbursement(?意味不明)             6.1
            トラッキング、ストリーミングシステム      4.0
            ハンガー、表彰台整備                          2.1
            広告(街中)                                         2.1

資金的にも大規模なイベントですが、お金集めには結構苦労している話がありました。

続いてSGP担当副会長 Brian Spreckley氏からSGP 全体についての紹介がありました。
インターネット、ソーシャルメディアでのリーチ状況は全体で昨年対比で倍増しており、継続して盛り上がっている様子がうかがえます。


4グランプリ関連 SNSのページビュー

昨年対比で比較(年間)
                                    2014                 2015       伸び率
SGP portal ユーザ数                                 53,000
SGP portal view                                        400,000
FB イイネ                    3200                      4700           x 1.5
Twitterフォロー             300                        437                           x 1.4
Youtube 購読              560                        1000           x 2.0
Youtube View              117,000                 230,000      x 2.0



5グランプリ最終戦中のSNS利用者数

シリーズ6 最終戦(20159月) 中の web 利用状況
                                   
SGP ポータルページ view       5,000 view /
FB                                          20,000            outreach ?/day
                                               30,000            ?/day
                                               130,000     ?
Youtube 生中継視聴者            3,600 /
Youtbue 録画視聴者               6,300 /

 2016-2017年はシリーズ第7戦が開催されます。予選9戦が予定され、 最終戦は2016/11に南アフリカで開催されます。すでに232人がエントリーしており、 最終戦は予選から勝ち残った20人で開催される予定です。
現時点ではトラッキングシステムはうまく活用できているようですが、まだ、一般メディア向の、より広いカバレージに向けたメディア配信としてはさらなる向上が必要と考えているとのことでした。

また、現時点重要課題としては下記を上げていました。
・マネージメントチームの育成
・ナショナルイベントでのローカルへの手助けの促進
・ファンディングとパートナー

「マニアがジャンルを潰す」といった言葉があります。戦後日本の最大の娯楽であったプロレスは一時期衰退しましたが、最近復活しつつあります。この言葉はプロレスの復活を仕掛けた新日本プロレスの社長に就任された高木さんの言葉です。コアなユーザーはライトユーザーを拒絶する傾向があるため、新規参入を拒絶しがちになります。もちろん、マニアがマーケットを支えている面もあります。とはいえ、新規参入が入ってこないとマーケットとしては尻すぼみです。

世界的にグライダーはまさに似た状況にあります。FAIIGCもこれに気づいているので、マニア向けのコンテンツである世界選手権のようなクロスカントリーレースと別にメディアに映える、グランプリレースのような形態をプロモーションしています。(ワールドエアゲームもその一環だったと思いますが、残念ながらまだ試行錯誤段階です)

昨年3月に初めてサッカー日本代表戦を埼玉スタジアムまで見に行きました。サッカーにはそれほど興味がなさそうな女性二人組(でもあきらかに平日の仕事帰りにサッカー観戦に来ている)や、競技の観戦よりも応援の声を張り上げていることに一生懸命な男女集団も観戦に来ていました。スポーツの裾野を広げる、といった観点で考えた場合、こういったライトユーザーにまでサッカー人口が広がっていることを実感しました。さらに年末12月にFCバルセロナの試合を見に行きましたが、こちらを観戦している人は日本代表戦のようなライトユーザーでは無く、ひとたび試合が始まるとみな息を止めてプレーの一つ一つに見入っているコアユーザーでした。日本代表戦は3000円から5000円の座席設定でしたが、FCバルセロナ戦では一席3万円の設定になっており、こちらはコアユーザーが対象なのでこの価格設定でも5万人が満席になります。

グライダーも裾野を広げるためには「飛ぶ」コアユーザーだけで無く、「見る」「感じる」のライトユーザーへの広がりを考えた施策の必要性を思いました。
(このあとの 13.5mクラスの改変もグライダースポーツの広がりを考えていると思います)


2. 13.5m クラスの方向性

13.5mクラスは日本ではまだ導入されていないので、直接の関係はありませんが、クラスの方向性の変更提案がありましたので紹介したいと思います。

2011年の IGC 総会にて、盛り上がりに欠けたワールドクラス(PW5)の代替として13.5mクラスの導入が決定されました。翼幅13.5m、翼面荷重35kg/m, 最大離陸重量 300kg、水バラスト搭載可能なグライダーのクラスです。2015年夏にリトアニアで第一回世界選手権大会が開かれました。7ヶ国12パイロット、5機種が参加しましたが、どの機体もエクスペリメンタル、プロトタイプの段階で、優勝したのは15mクラスのDiana2 の翼端を切り取ったミニDiana でした。(ホームビルト機として飛行許可を取って飛ばしたそうです)

おそらく当初はもう少し盛り上がると想定してきたのだと思いますが、思っていたほどの盛り上がりには欠けている状況のようです。オープンクラスや18mクラスのグライダーパイロットが13.5mクラスに移ってくるとは思えない、新しいマーケットを獲得する必要がある、といった言い方をしていました。このままだとワールドクラスの二の舞になる可能性があり、IGCの中に13.5mクラスの今後を検討するワーキンググループを組織して今後のプランを検討、そのプランが発表されました。

今後は 13.5mクラスを電動セルフランチクラスにして、競技会の際に天気が優れない日は電動動力も使って飛ぶことにして、メディアに映える形での競技会を行いたいというプランです。グライダーの競技会の欠点は天候に左右されがち、という点があり、天気が悪い日は例えば全機天候の良いところまで移動して競技会を開催、ないしは電動動力も使って飛ぶ、こういったことを可能にすることで、メディアにスケジュール通りに配信できるようなクラスを目指す、という背景があります。

通常であればクラス変更には4年前に変更するルールがあるそうなので、あくまで、競技会ルール(Sporting Code Section 3 Annex A)を変更するのでは無く、開催地細則のような形で機体を制限する、とのことで、次回2019年の第313.5mクラス世界選手権を13.5mクラスを推進しているイタリアで開催する際の特別なルールとして試行してみたいとのことでした。(第213.5mクラス世界選手権は2017年にポーランドで予定されていましたが、ポーランドから立候補取り下げがあり、現在開催地を募集しているところで、ハンガリーが手を上げています)

すでに役員会(IGC Bureau で事前承認されている内容で、大枠は賛同されました。ワールドクラスの二の舞になる前に、何か新しいチャレンジをしようという姿勢には前向きに賛成したいところです。


3. 国際会議での議論の進め方、提案の仕方、標準化

参加2回目となり、議論の進め方について少し余裕を持って見ることが出来るようになりましたので思ったところを。
IGC会議はいわゆるIF(International Federation 国際連盟)に相当し、各国のNF(National Federation 国内連盟)の代表委員から総会が形成されています。組織としては役員会(会長、6名の副会長)、15の常設委員会が組織されています。委員会はANDS(Airspace and Navigation Display System)、競技会管理、記録管理、グライダー振興、GFAC(GNSS Flightrecorder Approval)、グランプリ振興、ハンディキャップ、歴史、安全、スコアリングソフト、SC3A(競技ルール)、SC3B(フライトレコーダー)、SC3D(ランキング)、SC3(バッジフライト、記録飛行)、表彰管理、と15の委員会があり、各委員会が1-5名の委員から形成されています。委員はIGC委員の人が兼務している場合もありますが、各国のIGC委員ではない方もいます(過去IGC委員だったり、その分野において功績のある方です)。残念ながら日本からはどの委員にも就任できていません。
前項で説明したような 13.5mクラスの今後」、のような委員会が追加で作られる場合もあります。

ルールの変更や新しい取組の提案は各国から直接行うことは出来ますが、見ているとまずは委員会で検討され、意見書が纏められ、提案されてきたものがスムーズに可決されています。例えば上記で紹介した 13.5mクラスのルール変更などが顕著な例です。

現在日本は直接世界のグライダー界に提案していけるような事案を持っておりませんが、今後仮に日本から提案したいようなことが出てきた場合、委員会への参加、役員への就任が提案を上手く進めるための必要条件となってきます。他のスポーツの例では20年以上前になりますが、スキージャンプの道具のルールが体格の小さな日本人に不利な変更がなされたことや、最近で言えば卓球のラケットラバーの反発係数を高める補助剤の不正使用への検査機器導入提案が日本からされたが否決されたことなどは、各競技団体のIF(International Federation 国際連盟)の役員会、理事会にどれだけ食い込み、ポジションを築き、発言力を高める必要があることのあらわれと思われます。逆に、オリンピックや、サッカーのワールドカップを日本へ招致できたことは、IFの中でのポジションを獲得できている結果と思います。

議論の進め方も感心させられます。この提案は何のために提案しているのか、提案のポイント、ディスカッションしたいポイントはどこなのか、議論がぶれがちななかでも適切に整理していきます。対案の提案の仕方も上手です。
例を挙げると、今回20mクラスの最大離陸重量が750kgから800kgに引き上げられました。これは当初20mクラスが出てきたころはDuoDiscusが主流で、DuoDiscusの最大離陸重量が750kgだったのと、EASAの規格で滑空機が750kgまでだったことによると思います。ですが、20mクラスも次第にエンジン付きが主流になり、DuoDisucsXLT, ArcusT/Mでは800kgASD32Mi では850kgまで増大していて、機体重量自体が増えたことで、最大離陸重量を750kgに制限して飛ぶことが難しくなってきたことで、今回の提案が出てきています。EASAもグライダーの最大離陸重量を750kgから上げることを検討しており、今回800kgへの提案が可決することになりましたが、会議の中の追加提案で850kgまで増やすことの提案がされました。ですが、現在850kgに対応している20mクラスグライダーはASG32Mi だけで、ArcusT/Mしか用意できない国は不利になります。すかさずここで「スポーツの観点からは800kgのほうが。。(以下英語をイマイチ理解できてない)」で800kgに議論をまとめました。
課題・論点の整理、対案のもっていきかた、着眼点の変更、歴史背景(過去のIGC総会での議論)に基づいた提案、賛同を得るための空気作り。理事(Bureau) のメンバー内での事前に意見調整を元に、時に強引に見えるがそれをうまくマスクしながら公平性を確保して議事を進めています。なかでも上手いのはイギリスです。歴史と年齢の経験がなせる技でしょうか。代表が若い国はここまでの深みのある提案ができず、賛同が広げられません。

世界を相手に標準化を行い、そこにうまく自分たちの臨む方向性を盛り込んで行っています。西洋人は標準化に熱心な印象です。地続きでそれぞれの国自体はそこまで大きくないので、すぐに隣の国と交わる必要があり、長い歴史の中で法の支配の文化が創られてきたのだと思います。それに対し、日本は海で外との文化から話されており、村社会文化が根底にあり、それぞれの村で、村ごとのルールが存在する社会になります。標準化が得意ではない文化ですので、文化的な違いを理解して、西洋の標準化の文化を取り入れて行ければと思っています。



以下は詳細の決議事項となりますので、ご興味のある方以外は読み飛ばしてしまってもかまいません。

4. 決議事項、審議事項について

決議事項
a          大陸大会、世界選手権大会開催地投票
            2017 南北アメリカ大陸選手権 15mクラス、クラブクラス アルゼンチン。ASW20とヤンターのみで開催するそうです。
            2019 ヨーロッパ選手権 オープン、20m18m ポーランド スタロバボラ
            2019 ヨーロッパ選手権 スタンダード、15m、クラブクラス スロバキア プリエヴィドザ
            2019 ジュニア世界選手権 ハンガリー セゲド
            2019 女子世界選手権 オーストラリア レイクキーピット
            2019 13.5mクラス世界選手権 イタリア 電動セルフランチのみ
今回はどの大会も立候補が一カ所しかなく、信任投票のみでした。

b          SC3A (競技会ルール関連)、SC3(バッジフライト、記録飛行関連)、SC3D(ランキングリスト関連)の改訂提案

審議事項
8.1.1コンテストナンバーの右翼下面への記載義務の削除 可決

8.1.2 20mクラスの最大離陸重量を 800kg 変更 可決

8.1.3 チームカップ算出式の変更 現在はクラス毎の平均をさらに平均しているが、パイロット全員の平均に 可決

8.1.4 距離点のみの日のスコア計算式の変更 提案の中でタスク成立の最低距離が100kmから50kmになっており、計算式についての議論が白熱し、提案取り下げ、来年へ持ち越しとなりました。提案の段階では最低距離の話は明確になっていなかったが、スエーデンの委員が計算式をグラフ化して説明したことで逆に課題が明確になり、再検討となりました

8.1.5 グランプリのスコアの世界ランキングの重み付けの変更(現在はグランプリのスコアは他の競技会に比べて重み付けが低いスコアになる)
5年前にランキング計算式を決めたときはグランプリよりも通常の競技会の重要度を上げたかった背景があり、現在の計算式になっているそうです。賛同得られそうに無く、提案者のフランスが提案取り下げになりました。

8.1.6 世界ランキングの計算式をもっと直近の大会の結果を反映しやすくしたい。
どのスポーツにも世界ランキングの仕組みがあり、ランキング計算式は各スポーツによってコンセプトが異なります。グライダーではランキングのコンセプトとしては、世界選手権、大陸選手権は重み付けを大きくしています。また、ランキングを維持するには年2回ナショナルレベルの大会に、2年以上継続して出場する必要があります。これによって、ランキング200位くらいまでは国際大会出場パイロットのみになっています。3年以上大会出場が無いと、ランキングが下がるような仕組みです。             否決

8.1.7グループ一斉スタート方式の導入(スタートタイムをいくつか決めた時間10分間隔でのスタート)
ホースレーススタート、レガッタスタートという言い方をするようです。現在のタクティカルレイトスタート(戦略的に遅くスタートする)を防止するための方法として提案されました。私自身はスタートの選択はレースの面白さの一つと思いますので、反対を表明しましたが、可決となりました。
201610月のSporting Code から導入されるため、2017年夏のヨーロッパ選手権でテスト運用してみるそうです。(2017年オーストラリアWGCでは使わない)

8.2.1    13.5mクラスにおいて、耐空証明無しでの飛行を許可する
            可決

8.2.2    機体搭載パラシュートの利用
            可決

8.2.3    13.5mクラスをセルフランチクラスにする
            可決(上記の通り)

8.2.5    危険飛行のペナルティの判断に機体搭載ビデオを用いない
            否決

8.2.6    20mクラスのパイロットのランキングへの反映方法。後席のランキングの低いパイロットへの加点が大きい

8.2.7    前回世界チャンピオンの次回大会への参加権の削除。
前回世界大会のチャンピオンは次回大会に優先的に出場枠が確保されます。これにより、優勝者の居る国は通常クラスあたり2名の参加枠のところ、3名が参加できることになり、チームフライトにおいて当該国に有利に働いているとの指摘があり今回の提案がされました。チャンピオンのワイルドカードでの参加は多くの競技で見られますし、チャンピオンを排出できるような国から新たな人材が世界選手権に出場する枠が増えることでさらに活性化すると思いますので、私自身はこのままのルールで良いと思いましたが、可決となりました。

8.2.8    記録飛行での単位系の統一。ANDS委員会にて継続検討

8.2.9    銀賞距離飛行でのスタートを離脱のみ、に昨年改訂したが、リモートスタートポイントを再度設定する。

昨年銀賞距離飛行のスタート方式が改訂されました。従来はリモートスタート(スタートポイント)が認められていましたが、銀賞距離飛行のコンセプトとして「初めてのクロスカントリー飛行を行う」(ホームの滑空場が見えないところまで行く)を実現するためにはリモートスタートはよろしくない(25km先でスタートして、25km逆方向に行って、50km飛行とは認められない)とのことで、スタートの規定が改定されました。昨年の会議ではコンセプトの説明がされ、IGC委員の間ではそれで良いだろうと言うことで規定の改定が承認されました。各国委員とも会議後に国内で報告をしているはずなのですが、実際に10月に改定された規定が公開されたところから「うちの滑空場からでは直線50km飛ばせないよ!」「規定の解釈が一律じゃない」「25km航空機曳航してリリースしたら同じじゃないか」という意見が多数見られました。

日本も初級者のクロスカントリーには場所が限られておりますので、昨年はコンセプトとしてそうであれば仕方ないと思い改訂に賛同しましたが、やはり実情として難しいと言うことでリモートスタートが再設定されるのであれば賛同したいところでした。

イギリスからこの提案は出されましたが、Late proposal(期限を過ぎた提案提出)だったため、審議のため2/3以上の賛同が必要となりましたが、2/3以上の賛成が得られず、残念ながら審議対象となりませんでした。来年の再提案に期待したいと思います。

8.2.10  銀賞、金賞時間での Loss of Height の記載の削除
            可決。

5. IGC の予算決算

今回は予算・決算の話を聞くことが出来ました(配付資料無し)。年間予算は約45,000 euro 52,000 euro で、収入の大部分は大会認定料、ランキングシステムからの収入になります。

収入
            45,000 51,000 ユーロ
            1st category event (WGC, EGC)からの 認定料(sanction fee) 選手一人あたり約90ユーロがIGC に上納
                        15,000 21,000 ユーロ  
            IGCランキングサイトへの登録料(大会結果をランキングシステムに登録する際の登録料
                        15000 euro
支出
            52,000 77,000 ユーロ
            ここ数年は 5,00010,000 euro の赤字。積立金の食いつぶし
            Meeting費用   12,000 ユーロ
            大会関連          25,000 30,000 ユーロ          オフィシャルの派遣費用

非常に小さな予算規模です。現在の事業予算だとこれ以上は大きくなりません。最低限の交通費は負担しているようですが、かなりの部分が手弁当で行われている会であることが分かります。



6  Operating Balance of Funds (昨年からの繰り越し)、Total Income 全収入



7 Chanpionship Income 競技会からの収入の内訳。WGC と大陸大会(EGC)、ランキングシステム利用料が大部分



8 Total Expense総支出


9ミーテイング費用と大会費用


10 大会費用の内訳



11 その他支出


12総収入、総支出、差額(赤字)


13 2017年度予算



14 2017予算


6. 各委員会レポート

ANDS(Airspace and Navigation Display System)
FLARM の競技会での利用について、ガイドラインであってルールではない。オフにすることも出来てしまうのが原状。安全面から利用を推奨している。
FLARM の通信プロトコルはクローズなプロトコルを用いており、仕様がオープンにされていないが、現在は競合するだけのベンダーも無く、当面クローズドな仕様で進むとおもわれます。
           
GFAC(GNSS Flightrecorder Approcal)
今年は承認されたデバイスが3デバイス増えてトータル53デバイスに、製造者は2社増えて20社となった

ハンディキャップ
現在のハンディキャップ係数制度だと40年前のシーラス、ヤンターがメインになり、25年前のDiscusは使えなくなっています。Discusをクラブクラスで使えるようなハンディキャップ制度を考えていきたいとのことでした。

OLC(オンラインコンテスト)
15,000 ユーザー 117,000 フライト 32000 kmクロスカントリー 1.1 億回ウエブページのクリック回数。ユーザー数はほぼ横ばいになっており、当面は市場に浸透し尽くした感があります。

この一年間の日本からのユーザー増加のためのプロモーション(ページの日本語化、寄付ユーザーの促進)も認識頂いており、日本からのユーザー増加への協力ありがとう!とのコメントも頂きました。

CIMP
事故の際のガイドラインが紹介された


7. 次回日程、開催地

2017/3/3, 4 @ Budapest, Hungary
ハンガリー滑空協会が立候補して次回の開催地を招致してくださいました。

8. 日本からの情報発信(おまけ)

前述の通り、日本は会議に参加するのみで、委員会に参加するような積極的な参加が出来てない状況です。グライダースポーツに対して、日本からなにか世界に発信したいと考え、今回は世界初のグライダー漫画「ブルーサーマル」を25部ほど持ち込み、各国委員の方にお土産として配布してみました。「Manga」で通じる人も結構いて、日本のソフトパワーの強さを実感出来ました。スエーデンの委員の方はずいぶんと気に入って頂いて、絵だけでほぼストーリーを理解し、「グライダーパイロットに女性が半分もいるのはとてもよい、私の国でもこうありたい」とコメント頂いたりしています。英語版がほしいとコメントくださった委員の方もいらっしゃいました。


15 イタリアの代表委員のMariaさんと