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2014/05/24

2014年5月ポーランド合宿総括

 2014/5/1 - 5/7 で世界選手権開催地のポーランド・レシュノで合宿をしてきました。一般のスポーツでしたらコーチがいて、選手がともにトレーニングするのが主流かと思います。が、マイナースポーツのグライダーにおいては、競技レベルを教えられるコーチを国内で探すのは難しい面があり、今までは個人練習をせざるを得ませんでした。今回、より大きなステップアップを目指してポーランド人コーチの方に同乗して頂いての練習をアレンジしました。

 ヨーロッパの冬のシーズンに最も気象条件が良い場所は最近はナミビアが流行っています。ナミビアのグライディングセンターにおいて、Flying with the Champion という「世界チャンピオンと同乗フライトトレーニング」が昨年から実施されています。「こんなところで一緒に練習してみたいなあ」と思っていて、ダメ元で「2014年5月のポーランド選手権の前後でレシュノでコーチしてもらえませんか?」とメールしてみたところ、スケジュールを調整すれば ok との返事を頂け、今回のトレーニング実施となりました。

 コーチをお願いさせて頂いた方は Janusz Centka 氏。元ポーランド航空のパイロットで過去3回世界チャンピオンになっています(1991年US、1993年スエーデン、2006年スエーデン)。64歳になりますが、グライダー最強国のポーランド国内ランキング一桁を常に維持。今年の世界選手権ポーランド代表で20mクラス、openクラスの2クラスでポーランド代表として競技に出場するエネルギッシュなパイロットです。Cetnka氏のフライトを初めて間近に見たのは2008年ドイツでの世界選手権でのフライトでした。同じ15mクラスに出場していた私はガグルの内側からゴボウ抜きでぶち抜いていく彼を見て思ったことは「摩訶不思議」。いったいどうやったらそんなことが安全にできるのか、いつかお手本にしてみたいと思っていたパイロットでした。2回目にフライトを見れたのは2012年のポーランドでのオープンクラスナショナル大会。2008年に見た彼の摩訶不思議を解明すべく、必死に追いかけてみて、少し秘密がわかったものの、これを毎日5-6時間維持し続けるのはとても難しいと思ったことを覚えています。

 今回はCentka氏のシンジケートで所有している ArcusM をお借りして同乗練習しました。春のヨーロッパはまだ天気は変わりやすく、7日間の練習期間を設定しましたがクロスカントリートレーニングができたのは3日間で、天候のイマイチな時は座学、ブリーフィングと目一杯時間を使ってのトレーニングができました。

コーチからの指摘事項
  • 空をみていない、見ている範囲がとても狭い。左右180度を見る
  • 雲をもっと観察する。spread out した雲の下にできている新しい積雲をおいかける。spread out しかけている雲は沈下になるのにspread out をおいかけている
    • spread out = 日本語にすると拡散 でしょうか、湿度の高い高度で積雲が崩れて横に広がってしまうケースを意味します。日本だと一度spread out が始まってしまうとそのままリフトコンディションは終わり、が多いと思いますが、ヨーロッパではさらに新しい積雲が発生するので、その新しい積雲を探すのがキーになります
    • spread out の中でもストリートを探している
  • 積雲の下の良い部分の兆候をもっと追いかける(雲の下のひげ、濃い部分、雲頂のしっかりしたところ)
  • インターサーマルの速度が遅い。ミニマム125km/hは下回らない。リフトの兆候を感じたら145km/h まで減速、その後さらにリフトの兆候を感じるようであれば125km/hまで減速
  • 1st ターンはもっと急バンクで、緩バンクではリフトを突き抜けてしまう
  • 風下へのレグは速度を出しすぎない(速度を出さなくても伸びる)
  • 雲の狙い方
    • 日中太陽の高い時間 雲の中心 濃いところ
    • 午後遅く、太陽が傾いて来た時間 地面の雲の陰のエッジのトリガーの上
    • 雲底近くにいるときは吸い上げをもっと狙う、ウイスプ、中心
    • 雲底から離れているときはサニーサイドを狙ってみる
  • 対地 600m以下にしない
  • グライドスピードについてはマクレディーとSpeed Commander を使う、マクレディーを高く設定しすぎない。フィニッシュは1.5までセットしている
  • 旋回中に傾いてる
  • ヨーストリングをまっすぐに(滑らせない)
  • LX9000(フライトコンピューター)をもっと使いこなす
    • Thermal Assistantを用いたセンタリング
    • リフトに入ったら縮尺の拡大
    • Track up モード、Course Steering を使ってオフトラックの度合いを確認
    • xtrk (経路からのずれの距離)でオフトラックの度合いを確認(あまりオフトラックしない)

私の気づき
  • 不要な手汗をかかなくなった(ストレスによる緊張が減った)
  • 足の突っ張りも減った(緊張すると両足が突っ張るのは通常のこと、ラダーが踏みづらくなる)
  • 平野のナビゲーションでどちらに向かって飛んでいるのかが分からなくなるときが減ってきた(LX9000 の steer to course をもっと活用する)
  • 2013年の課題は選択肢が多すぎる(積雲の多いコンディション)だと迷ってしまってどっちつかずのフライトになることが多く、迷わないことを課題にしていたが、今回は逆に決めてしまったら自分で選択肢を狭める(情報を入ってこないように遮断して迷いを絶つ)ことをしている。バランスが必要
  • これと決めるとそこしか見てない、オフトラックが苦手(迷っている内に選択肢を通り過ぎてしまう、年齢のためか、柔軟性が下がってきている)。不安になるとそこにすがってしまう。
  • 緊張して呼吸を止めてしまい、十分な判断ができず、ありえないような間違った判断におちいり、自己嫌悪に陥る。深呼吸をフライト中も取り入れ、自律神経を調整する
  • 疲れてきて、先の状況が悪いと、明らかにプランニングを忘れて、直前の物しか見なくなる、つねに2,3手先を深呼吸して考え直す
  • spread out は今まで全く逆に間違えて理解してた。過去失敗に陥ったケースは思い返してみれば多くがこのパターン。

コーチに指導頂くのは実に7年ぶりです。元々私はセンスは低く、出来の悪い、成長の遅い訓練生なので、コーチを失望させてしまうことも多々あったと思います。一人で練習していると、なかなか負荷をかけた練習はできませんし、気がつけないことがたくさんありましたが、多くの不足点への気づきを得られることができた一週間でした。完全に習得するまでは至りませんでしたが、この気づきを来週のポーランド選手権に生かしてみたいとおもっています。
コーチの Centka氏と



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